レルベア【喘息・COPD治療薬】

レルベアは2つの成分を配合した吸入薬で、主に喘息の患者さんに使用される治療薬です。このページでは呼吸器内科専門医がレルベアとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。
レルベアはどんな薬?
レルベアは「吸入ステロイド(ICS)」「長時間作用型β2刺激薬(LABA)」の2つの成分を含む吸入薬です。レルベアは「エリプタ」という吸入剤型の1つで「1日1回」「吸入手技が簡単」という特徴があります。また「エリプタ」は今回ご紹介する「ICS/LABA(レルベア)」以外に「ICS(アニュイティ)」「ICS/LABA/LAMA(テリルジー)」「LAMA(エンクラッセ)」「LABA/LAMA(アノーロ)」と様々な薬効によるラインナップが充実しており、同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能であるというメリットもあります。まずレルベアに含まれる2つの薬効について確認していきましょう。
吸入ステロイド(ICS):フルチカゾンフランカルボン酸エステル
吸入ステロイドはアレルギー性の炎症を抑えます。
長時間作用型β2刺激薬(LABA):ビランテロールトリフェニル酢酸塩
気管支拡張効果があり狭くなった気管支を広げます。
レルベアの適応症
レルベアに含まれるステロイド量により50と100と200のラインナップがあります。小児喘息に対しては5~12歳未満がレルベア50, 12歳以上がレルベア100, 成人喘息がレルベア100と200, COPDに対してはレルベア100の適応があります。
「小児喘息」
・5~12歳未満:レルベア50が適応
・12歳以上:レルベア100が適応
「喘息」
レルベア100, 200が適応
「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」
レルベア100のみ適応
レルベア投与に注意を要する方
有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者さん
肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)
レルベアに含まれる吸入ステロイドにより病状が悪化する可能性があります。どちらも呼吸器内科で見る疾患ですので、喘息やCOPDと肺非結核性抗酸菌症を罹患している患者さんは治療すべきか呼吸器内科の主治医と相談しましょう。
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん
牛乳アレルギー(慎重投与)
本剤の添加物である乳糖には夾雑物として乳蛋白が含まれます。微量の牛乳の摂取でも症状が出現する牛乳アレルギー患者さんにおいて、症状が発現することがありますので、牛乳アレルギーのある患者さんへの投与に際しては、十分ご注意ください。(GSK HPより)
レルベアの副作用
よくみられる副作用としては、吸入ステロイドによる「声がれ(嗄声)」「口腔内カンジダ」「口内炎」「舌炎」、LABA(長時間作用型β2刺激薬)による「動悸」「手の震え」「筋肉の攣り(有痛性筋痙攣)」などがあります。いずれも重篤になることはありません。当院では「声がれ(嗄声)」や「口腔内カンジダ」など、吸入ステロイドによる副作用が起こった場合は同種同効薬である「アテキュラ」「シムビコート(ブデホル)」へ変更するか、ガスタイプの吸入薬「フルティフォーム」への変更を検討します。また「動悸」「手の震え」「筋肉の攣り」が起こった場合は、同種同効薬でも同様の副作用が起こる可能性が高く、LABAを含まない吸入の組み合わせ(ICS+LAMA)を検討します。
参考)副作用について(レルベア添付文書より引用)
レルベアの薬価
1か月毎日吸入した場合の薬価(3割負担)は、レルベア100で1449円、レルベア200で1566円となります。
・レルベア50(14吸入)2367.4円 3割負担:710円
・レルベア50(30吸入)4846.8円 3割負担:1454円
・レルベア100(14吸入)2422.9円 3割負担:727円
・レルベア100(30吸入)4829.9円 3割負担:1449円
・レルベア200(14吸入)2495.5円 3割負担:749円
・レルベア200(30吸入)5220.8円 3割負担:1566円
レルベア(エリプタ)の使い方
レルベア(エリプタ)の使い方は難しくありません。下記6ステップにて吸入することが出来ます。詳しく知りたい方は下記の吸入指導箋(GSK)をご覧ください。
①カチッとするまでふたをあける
②吸気口をくわえる
③しっかり吸い込む
④息を止める
⑤ゆっくり吐く
⑥ふたを閉める
喘息に対するレルベア
レルベアはどのような喘息患者さんに対し投与すべきなのでしょうか。ここでは喘息と初めて診断された「初診」と既に喘息の治療を開始されている「再診」に分けて考えていきます。またレルベアにはステロイドの含有量によって「レルベア100」と「レルベア200」の2規格があります。ステロイドの量をどうするかについても考えていきたいと思います。
レルベアが適する喘息(初診)とは
プライマリケア医師向け「喘息診療実践ガイドライン(1)」では初めて喘息であることが疑われたり、喘息と診断された場合にまず推奨される治療は「ICS/LABA」(吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬)」とされています。また専門医向け「喘息予防・管理ガイドライン(2)」でも喘息初診の患者さんのうち「症状が毎日ある」「発作止めを毎日必要とする」「週1回以上、日常生活や睡眠が妨げられる」「夜間症状が週1っ回以上」「日常生活は可能だが多くが制限される」などの重症感がある方を除き、まずは「ICS/LABA」での治療開始が望ましいと考えられます。レルベアは「ICS/LABA」製剤ですので、喘息と診断されそこまで喘息の重症感がない患者さんであればまず試すべき治療薬と言えます。
レルベアが適する喘息(再診)とは
近年ではテリルジーの様なICS/LABA/LAMA3剤配合剤吸入が使用出来るようにはなりましたが、喘息患者さんの多くはICS/LABA(レルベア、フルティフォーム、シムビコート、ブデホル)で治療を開始され継続されていると思います。ICS/LABAと3剤配合剤ICS/LABA/LAMA、あるいはICSとの使い分けはどのようにしたら良いでしょうか。「コントロール不良」「咳や痰が残存」の2つに分けて考えてみたいと思います。
ICS/LABAで十分なコントロールを得られる割合
ICS/LABAで治療が行われた喘息患者さんのコントロール状況を評価した臨床試験(3)を確認しましょう。臨床試験組み入れ前6か月間に①ICS未使用②低用量ICS使用③中用量ICSの3つに分け喘息のコントールを確認しています。「日中の症状」「発作止めの使用」「夜間覚醒」「喘息増悪」「救急受診」がなく、朝のPEF値が予測値の80%以上をTotal Controlとしています。ICS/LABAでTotal Controlを得られた患者さんはそれぞれ①50%、②44%、③28%でした。ガイドラインではICS/LABAで初期治療開始とするべきとされていますが、ICS/LABAのみで十分なコントロールが得られる喘息患者さんは多くて半数という結果であり、コントロールが十分でない喘息患者さんも相当数いると考えられます。
既存治療を行ってもコントロールが悪い喘息
既に治療を開始されている喘息患者さんでは、ICS/LABA(レルベア)で治療しているにも関わらず喘息コントロールが不良である場合はICS/LABA/LAMA3剤配合剤(テリルジー)への変更が検討されるでしょう。ICS/LABAでもコントロール不良な喘息患者さんは治療アドヒアランス(服薬順守の状況)に関わらず3-4割程度いるとされ決して少なくありません(4)。そのような患者さんに対しテリルジーを投与すると「肺機能(1秒量)」「喘息コントロール」「生活の質(QOL)」が改善することが報告されています(5)。逆に、ICS/LABA/LAMA(テリルジーなど)で治療を開始しコントロールが良好であればICS/LABA(レルベアなど)へ減量が可能と考えられます。またICS/LABA(レルベア)でコントロールが良好となった場合はICS(アニュイティ)への減量も可能と考えられます。
既存治療を行っても咳や痰が残存する喘息
既に治療が開始された喘息患者さんのうち、最後まで残存していた症状は昼夜を問わない「咳や痰」であったとの報告もあります(6)。ICS/LABA(レルベア)による喘息治療を行っていても咳や痰が残存している場合には「LAMA」を含むテリルジーへの変更が検討されるでしょう。
レルベアは「100」or「200」のどちらが良いのか?
レルベア100とレルベア200の違いは含有される「吸入ステロイド」の違いです。それではステロイド量はどのように設定すればよいのでしょうか?まずレルベア100でも喘息増悪を起こす場合にはレルベア200を検討すべきと考えられます。また喘息のアレルギーの原因である2型炎症が強い場合、ステロイド量が多い方が喘息の増悪が少ないということが分かっています(7)。また喘息の原因そのものである「気道過敏性」が強く残存している場合も同様にステロイド量が多い方がよいと考えられます。逆にレルベア100が検討されるのはステロイド量を積極的に減らしたい場合です。例えばレルベア200で症状が長期安定している場合、骨粗しょう症や糖尿病など合併症に対する影響が懸念される場合、声がれ(嗄声)などステロイドによる副作用がある場合、肺炎など感染を繰り返す場合、そして最近増えつつある「肺非結核性抗酸菌症」を併存している場合などです。もしレルベア200を使用しているが、ステロイドを減量したい理由がある時に、喘息コントロールに懸念がある場合はステロイドを減量しつつLAMAを追加する、レルベア200→テリルジー100への変更も1つの方法と考えられます。
レルベア200が検討される喘息とは
①レルベア100でも増悪する喘息
②2型炎症が強い喘息
・治療後の呼気NO検査が高値(>50ppb)
・末梢血好酸球数が高値(>300/μL)
③気道過敏性が強い喘息
・治療後もピークフローによる日内変動が20%以上
・治療後も外的要因により喘息増悪が頻回に起こる
レルベア100が検討される喘息とは
①レルベア200で長期安定している喘息
②合併症に対する影響が懸念される場合
・骨粗しょう症、糖尿病
③感染(肺炎)を繰り返す場合
④肺非結核性抗酸菌症を合併している
レルベア200が望ましいがステロイドを減量したい場合
「ステロイド」を減量し「LAMA」を追加
(レルベア200→テリルジー100)
COPDに対するレルベア
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は主に長期的な喫煙を原因とする呼吸器疾患です。気管支が狭くなる「末梢気道病変」と肺胞が破壊される「肺気腫」が混在し、進行すると息切れや咳・痰の悪化を来します。COPDに対する治療の基本は「気管支拡張効果」と「咳や痰の改善効果」を期待し「LAMA」もしくは「LABA/LAMA」で行うことになります。一方、COPDという病気も喘息と同様に感冒などを契機に咳や痰や息切れが悪化したり、喘鳴(ゼーゼー)を起こすことがありこれを「COPD増悪」といいます。COPD増悪は心血管病リスクを増加させ、呼吸機能を低下、生命予後を悪化させるなど予防すべき状態です。「外来治療を必要とする中等度COPD増悪を年2回以上」「入院を必要とする重度COPD増悪を年1回以上」起こした場合はCOPD増悪を予防する目的で吸入ステロイド(ICS)を含む3剤配合剤吸入が推奨されます(8)。またCOPDと喘息が合併している場合を「喘息・COPDオーバーラップ」といい、吸入ステロイドを含む3剤配合剤吸入が推奨されます。さらにCOPDの世界のガイドラインであるGOLDではCOPD治療として吸入ステロイド(ICS)を加えるかどうかの目安として「末梢血好酸球300/μL以上」を提唱しています(9)。一方で「LAMA」が使用できない患者さんがいらっしゃいます。例えば「尿閉を伴う高度の前立腺肥大症」「閉塞隅角緑内障」を併存している場合です。そのような場合には吸入ステロイドを含む「ICS/LABA(レルベア100)」を検討することになるでしょう。
エリプタ製剤(レルベア)を選ぶメリット
ICS/LABA配合剤であるレルベア(エリプタ製剤)には、同種同効薬として「アテキュラ(ブリーズヘラー製剤)」「シムビコート(タービュヘイラー)」「フルティフォーム(pMDI製剤)」などがあります。ここではレルベアの剤型である「エリプタ」を選ぶメリットについてご紹介します。
1日1回吸入である
エリプタ製剤は1日1回1吸入で完結します。1日2回(2吸入)吸う必要がある他剤と比べ、利便性が高い吸入薬と言えるでしょう。
吸入手技が簡単である
「ふたを開ける」→「吸う」→「閉じる」のたった3ステップで吸入が完結します。数ある吸入薬の中で、使い化が最もシンプルで簡単な吸入薬と言って良いでしょう。
吸入残数が分かりやすい
吸入薬の残数カウンターがついており、一目で何回残っているかが分かります。カウンターの大きさも大きいため高齢の方や視力が悪い方でも見やすいでしょう。
吸えているかどうかを確認できる
エリプタ製剤には「エリプタトレーナー」という吸入練習器具があります。この練習器具はきちんと吸えていれば音がなる仕組みとなっているため、ご自身が吸入出来ているかどうかの確認をすることが出来るのです。
製剤ラインナップが豊富である
「ICS(アニュイティ)」「ICS/LABA(レルベア)」「LAMA(エンクラッセ)」「LABA/LAMA(アノーロ)」「ICS/LABA/LAMA(テリルジー)」と薬効の組み合わせによる様々なラインナップが充実しており、同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能です。
エリプタ製剤(テリルジー)を選ぶデメリット
吸う力が弱い方には不向き
レルベア(エリプタ)の様に粉が出るタイプの吸入を「ドライパウダー製剤(DPI)」といいます。DPIは自分の力で吸い上げる必要があり、吸う力が弱い「小児」や「高齢な方」ではうまく吸えないことがあります。エリプタ製剤を初めて使用する際は「エリプタトレーナー」を用いて吸入が出来るかどうかを確認すると良いでしょう。
声がかれることがある(嗄声)
レルベアに含まれる吸入ステロイドは比較的粒子が大きいため、のど~気管支の太いところを中心に沈着します。そのため副作用として声がかれる(嗄声)ことが一定の割合でみられます。
むせることがある
粉(ドライパウダー)製剤は吸ってムセやすい方がいます。
おわりに
レルベアは喘息やCOPDの症状をコントロールするために有効な吸入薬です。2つの有効成分を1日1回で吸入できる利便性、吸入手技の簡便さは、多くの患者さんにとって大きなメリットとなります。またレルベアにはステロイド量の異なる「100」「200」の2種類があります。効果が不十分な場合、自己判断で中断したりせず、必ず医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。当院では、吸入薬の使い方指導や症状の経過観察はもちろん、呼気NO検査やスパイロメトリー(肺機能検査)などによる客観的な評価も行っております。「いまの吸入薬で本当にコントロールできているか不安」「レルベアを使うべきか悩んでいる」という方は、お気軽にご相談ください。
引用文献
(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)Bateman ED et al: Am J Respir Crit Care Med 2004; 170(8), 836-844
(4)Gon Y, et al: Respir Investig 2021 (doi.org/10.1016/j.resinv.2021.02.003) [Epub online ahead]
(5)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2021;9(1),69-84
(6)Adachi M, et al. J Asthma. 2019 Sep;56(9):1016-1025
(7)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2020; S2213-2600(20), 30389-1[Epub ahead of print]
(8)COPD診断と治療のためのガイドライン
(9)COPD GOLD report
参考記事
・気管支喘息(治療)
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・気道過敏症とは何か?【喘息】【咳喘息】
・ピークフローメーター【喘息の診断・管理】
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・テリルジー【喘息・COPD治療薬】
・アニュイティ【喘息・COPD治療薬】

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック
院長 横山 裕
医院紹介

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