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アテキュラ【喘息治療薬】

喘息 アレルギー 呼吸器内科
アテキュラの薬効


アテキュラは2つの成分を配合した吸入薬で喘息の患者さんに使用される治療薬です。このページでは呼吸器内科専門医がアテキュラとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。

目次

アテキュラはどんな薬?

アテキュラは「吸入ステロイド(ICS)」「長時間作用型β2刺激薬(LABA)」の2成分を含む吸入薬です。アテキュラは「ブリーズヘラー」という吸入剤型の1つで「1日1回」「きちんと吸えたかどうかが分かる」「吸い口が細く吸いやすい」という特徴があります。また「ブリーズヘラー」は今回ご紹介する「ICS/LABA(アテキュラ)」以外に「ICS/LABA/LAMA(エナジア)」「LABA/LAMA(ウルティブロ)」「LAMA(シーブリ)」「LABA(オンブレス)」と様々な薬効によるラインナップが充実しており、同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能であるというメリットもあります。まずはアテキュラに含まれる2つの薬効について確認していきましょう。

吸入ステロイド(ICS):モメタゾンフランカルボン酸エステル

吸入ステロイドはアレルギー性の炎症を抑えます。

長時間作用型β2刺激薬(LABA):インダカテロール酢酸塩

気管支拡張効果があり狭くなった気管支を広げます。

アテキュラの薬効

アテキュラの適応症

アテキュラに含まれるステロイド量により「低用量」「中用量」「高用量」の3規格があります。

「喘息」

アテキュラ「低用量」「中用量」「高用量」が適応

アテキュラ投与に注意を要する方

アテキュラ投与にあたっては投与に注意を要する患者さんがいますので確認しましょう。

有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者さん

肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)

アテキュラに含まれる吸入ステロイドにより病状が悪化する可能性があります。どちらも呼吸器内科で見る疾患ですので、喘息と肺非結核性抗酸菌症を罹患している患者さんは治療すべきか呼吸器内科の主治医と相談しましょう。

デスモプレシン酢酸塩水和物を投与中の患者さん

エナジアを併用することで低ナトリウム血症が発現するおそれがあるため使用出来ません。

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん

牛乳アレルギー(慎重投与)

本剤の添加物である乳糖には夾雑物として乳蛋白が含まれます。微量の牛乳の摂取でも症状が出現する牛乳アレルギー患者さんにおいて、症状が発現することがありますので、初めて使用する際は牛乳アレルギーがある場合はあらかじめ主治医に相談するなどし十分ご注意ください。

アテキュラの副作用

よくみられる副作用としては、吸入ステロイドによる「声がれ(嗄声)」「口腔内カンジダ」「口内炎」「舌炎」、LABA(長時間作用型β2刺激薬)による「動悸」「手の震え」「筋肉の攣り(有痛性筋痙攣)」などがあります。いずれも重篤になることはありません。当院では「声がれ(嗄声)」や「口腔内カンジダ」など、吸入ステロイドによる副作用が起こった場合は同種同効薬である「レルベア」「シムビコート(ブデホル)」へ変更するか、ガスタイプの吸入薬「フルティフォーム」への変更を検討します。また「動悸」「手の震え」「筋肉の攣り」が起こった場合は、同種同効薬でも同様の副作用が起こる可能性が高く、LABAを含まない吸入の組み合わせ(ICS+LAMA)を検討します。

アテキュラの副作用について
参考)副作用について(アテキュラの添付文書より引用)
アテキュラの副作用(添付文書)

アテキュラの薬価

1か月毎日吸入した場合の薬価(3割負担)は、アテキュラ低用量で1192円、アテキュラ中用量で1302円、アテキュラ高用量で1453円となります。

・アテキュラ(低用量)14吸入 1853円 3割負担:556円
・アテキュラ(低用量)30吸入 3972円 3割負担:1192円
・アテキュラ(中用量)14吸入 2025円 3割負担:607円
・アテキュラ(中用量)30吸入 4341円 3割負担:1302円
・アテキュラ(高用量)14吸入 2261円 3割負担:678円
・アテキュラ(高用量)30吸入 4845円 3割負担:1453円

アテキュラ(ブリーズヘラー)の使い方

アテキュラ(ブリーズヘラー)の使い方を確認しましょう。下記6ステップにて吸入することが出来ます。ブリーズヘラーを選ぶメリットは、①きちんと吸えていれば「音がする(カラカラ)」②「カプセルが空になる」など、確認が出来ることです。詳しく知りたい方は下記の吸入指導箋(Nvaltis HPより引用)をご覧ください。

①カプセルを充填
②蓋と閉じてサイドボタンを押す
③しっかり吸い込む(カラカラと音がする
④息を止める
⑤ゆっくり吐く
カプセルが空になっていることを確認する

エナジアの使い方

喘息に対するアテキュラ

アテキュラはどのような喘息患者さんに対し投与すべきなのでしょうか。ここでは喘息と初めて診断された「初診」と既に喘息の治療を開始されている「再診」に分けて考えていきます。またアテキュラにはステロイドの含有量によって「低用量」「中用量」「高用量」の3規格があります。ステロイドの量をどうするかについても考えていきたいと思います。

レルベアが適する喘息(初診)とは

プライマリケア医師向け「喘息診療実践ガイドライン(1)」では初めて喘息であることが疑われたり、喘息と診断された場合にまず推奨される治療は「ICS/LABA」(吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬)」とされています。また専門医向け「喘息予防・管理ガイドライン(2)でも喘息初診の患者さんのうち「症状が毎日ある」「発作止めを毎日必要とする」「週1回以上、日常生活や睡眠が妨げられる」「夜間症状が週1っ回以上」「日常生活は可能だが多くが制限される」などの重症感がある方を除き、まずは「中用量ICS/LABA」での治療開始が望ましいと考えられます。アテキュラは「ICS/LABA」製剤ですので、喘息と診断されそこまで喘息の重症感がない患者さんであればまず試すべき治療薬と言えます

アテキュラが適する喘息(再診)とは

近年ではエナジアの様なICS/LABA/LAMA3剤配合剤吸入が使用出来るようにはなりましたが、喘息患者さんの多くはICS/LABA(アテキュラ、レルベア、フルティフォーム、シムビコート、ブデホル)で治療を開始され継続されていると思います。ICS/LABAと3剤配合剤ICS/LABA/LAMA、あるいはICSとの使い分けはどのようにしたら良いでしょうか。「コントロール不良」「咳や痰が残存」の2つに分けて考えてみたいと思います。

ICS/LABAで十分なコントロールを得られる割合

ICS/LABAで治療が行われた喘息患者さんのコントロール状況を評価した臨床試験(3)を確認しましょう。臨床試験組み入れ前6か月間に①ICS未使用②低用量ICS使用③中用量ICSの3つに分け喘息のコントールを確認しています。「日中の症状」「発作止めの使用」「夜間覚醒」「喘息増悪」「救急受診」がなく、朝のPEF値が予測値の80%以上をTotal Controlとしています。ICS/LABAでTotal Controlを得られた患者さんはそれぞれ①50%、②44%、③28%でした。ガイドラインではICS中用量/LABAで初期治療開始とするべきとされていますが、ICS/LABAのみで十分なコントロールが得られる喘息患者さんは多くて半数という結果であり、コントロールが十分でない喘息患者さんも相当数いると考えられます。

ICS/LABAでコントロールされる喘息患者さんの割合

既存治療を行ってもコントロールが悪い喘息

既に治療を開始されている喘息患者さんでは、ICS/LABA(アテキュラ)で治療しているにも関わらず喘息コントロールが不良である場合はICS/LABA/LAMA3剤配合剤(エナジア)への変更が検討されるでしょう。ICS/LABAでもコントロール不良な喘息患者さんは治療アドヒアランス(服薬順守の状況)に関わらず3-4割程度いるとされ決して少なくありません(4)。そのような患者さんに対しエナジアを投与すると「肺機能(1秒量)」「ピークフロー値」「喘息の年間増悪率」が改善することが報告されています(5)。逆に、ICS/LABA/LAMA(エナジアなど)で治療を開始しコントロールが良好であればICS/LABA(アテキュラなど)へ減量が可能と考えられます。またICS/LABA(アテキュラ)でコントロールが良好となった場合はICS(吸入ステロイド)への減量も可能と考えられます。

既存治療を行っても咳や痰が残存する喘息

既に治療が開始された喘息患者さんのうち、最後まで残存していた症状は昼夜を問わない「咳や痰」であったとの報告もあります(6)。ICS/LABA(アテキュラ)による喘息治療を行っていても咳や痰が残存している場合には「LAMA」を含むエナジアへの変更が検討されるでしょう。

アテキュラは「低用量」「中用量」「高用量」のどれが良いのか?

違いは含有される「吸入ステロイド」の違いです。それではステロイド量はどのように設定すればよいのでしょうか?まずアテキュラ「中用量」で治療を開始した後、喘息増悪を起こす場合にはアテキュラ高用量を検討すべきと考えられます。また喘息のアレルギーの原因である2型炎症が強い場合、ステロイド量が多い方が喘息の増悪が少ないということが分かっています(7)。また喘息の原因そのものである「気道過敏性」が強く残存している場合も同様にステロイド量が多い方がよいと考えられます。逆にアテキュラ低用量が検討されるのはステロイド量を積極的に減らしたい場合です。例えばアテキュラ中用量で症状が長期安定している場合、骨粗しょう症や糖尿病など合併症に対する影響が懸念される場合、声がれ(嗄声)などステロイドによる副作用がある場合、肺炎など感染を繰り返す場合、そして最近増えつつある「肺非結核性抗酸菌症」を併存している場合などです。もしアテキュラ中~高用量を使用しているが、ステロイドを減量したい理由がある時に、喘息コントロールに懸念がある場合はステロイドを減量しつつLAMAを追加する、アテキュラ高用量→エナジア中への変更も1つの方法と考えられます。

アテキュラ高用量が検討される喘息とは

①アテキュラ中用量でも増悪する喘息

 

②2型炎症が強い喘息

・治療後の呼気NO検査が高値(>50ppb)
・末梢血好酸球数が高値(>300/μL)

③気道過敏性が強い喘息

・治療後もピークフローによる日内変動が20%以上
・治療後も外的要因により喘息増悪が頻回に起こる

アテキュラ低用量が検討される喘息とは

①アテキュラ注用量で長期安定している喘息

②合併症に対する影響が懸念される場合

・骨粗しょう症、糖尿病

③感染(肺炎)を繰り返す場合

④肺非結核性抗酸菌症を合併している

 

アテキュラ高用量が望ましいがステロイドを減量したい場合

「ステロイド」を減量し「LAMA」を追加
(アテキュラ中高用量→エナジア中用量)

ブリーズヘラー(アテキュラ)を選ぶメリット

ICS/LABA配合剤であるアテキュラ(ブリーズヘラー)には、同種同効薬として「レルベア(エリプタ)」「フルティフォーム(pMDI製剤)」「シムビコート(タービュヘイラー)」などがあります。ここではアテキュラの剤型である「ブリーズヘラー」を選ぶメリットについてご紹介します。

1日1回吸入である

ブリーズヘラー製剤は1日1回1吸入で完結します。1日2回(2吸入)吸う必要がある他剤と比べ、利便性が高い吸入薬と言えるでしょう。

吸い口が細く吸いやすい

他剤と比較し吸い口が細い煙突型となっているため吸いやすいのが特徴です。

きちんと吸えたかどうかが分かりやすい

うまく吸えると「カラカラ」という音がなることやきちんと吸えるとカプセルが空になることから、吸入後にきちんと吸えたかどうかの確認がしやすい吸入薬と言えるでしょう。

製剤ラインナップが豊富である

「ICS/LABA/LAMA(エナジア)」「LABA(オンブレス)」「LAMA(シーブリ)」「LABA/LAMA(ウルティブロ)」と薬効の組み合わせによる様々なラインナップが充実しています。特に喘息とCOPDを合併している方では同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能となるでしょう。

ブリーズヘラー一覧

ブリーズヘラー製剤(アテキュラ)を選ぶデメリット

吸う力が弱い方には不向き

ブリーズヘラー(アテキュラ)の様に粉が出るタイプの吸入を「ドライパウダー製剤(DPI)」といいます。DPIは自分の力で吸い上げる必要があり、吸う力が弱い「高齢な方」ではうまく吸えないことがあります。ブリーズヘラー製剤を初めて使用する際は実際の吸入見本を用いて吸入が出来るかどうかを確認すると良いでしょう。

声がかれることがある(嗄声)

アテキュラに含まれる吸入ステロイドは比較的粒子が大きいため、のど~気管支の太いところを中心に沈着します。そのため副作用として声がかれる(嗄声)ことが一定の割合でみられます。

むせることがある

粉(ドライパウダー)製剤は吸ってムセやすい方がいます。

1回の吸入手技で吸えないことがある

ブリーズヘラーが正しく吸えると「カラカラ」と音がなりますが、1回目で音がならないことがあります。カプセルが静電気を帯びて回らないことや、カプセルに穴が十分に開いていないこと、吸入を操作する際の角度(30~45°が望ましいです)などが原因と考えられます。繰り返し吸うことは出来ますので「カラカラ」と音がなるまでやり直して吸ってみてください。

チョコチョコ吸いはNG

ブリーズヘラーを吸う際に小さな呼吸を繰り返して吸ってしまう、いわゆる「チョコチョコ吸い」をしてしまう方がいます。これでもカプセルが空になるわけですが、この吸い方ですと気管支の奥までお薬が届きません。1回の呼吸で深く吸うことを意識しましょう。

おわりに

アテキュラは2つの有効成分を1日1回で吸入できる利便性や吸ったかどうかを耳と目で確認できること、吸気口が細いため吸いやすいことなどを特徴とする喘息の吸入製剤です。一方で、1回の呼吸で深く吸うこと、吸入前操作(カプセルを充填、穴を空けること)など吸入を行うにあたりいくつかの確認事項があります。初めてアテキュラを使用される際は、医療従事者立ち合いのもと、しっかりと吸入手技を確認する必要がある吸入薬とも言えます。声がれ・感染の繰り返し・緑内障・前立腺肥大・牛乳アレルギーがある方は、主治医との相談が不可欠です。また、アテキュラにはステロイド量の異なる「低用量」「中用量」「高用量」の2種類があります。効果が不十分な場合、自己判断で中断したりせず、必ず医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。当院では、吸入薬の使い方指導や症状の経過観察はもちろん、呼気NO検査やスパイロメトリー(肺機能検査)などによる客観的な評価も行っております。「いまの吸入薬で本当にコントロールできているか不安」「アテキュラを使うべきか悩んでいる」という方は、お気軽にご相談ください。

引用文献

(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)Bateman ED et al: Am J Respir Crit Care Med 2004; 170(8), 836-844
(4)Gon Y, et al: Respir Investig 2021 (doi.org/10.1016/j.resinv.2021.02.003) [Epub online ahead]
(5)Kerstjens HAM, Lancet Respir Med. 2020 Oct;8(10):1000-1012
(6)Adachi M, et al. J Asthma. 2019 Sep;56(9):1016-1025
(7)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2020; S2213-2600(20), 30389-1[Epub ahead of print]

参考記事

・気管支喘息(治療)
・気道過敏症とは何か?【喘息】【咳喘息】
・ピークフローメーター【喘息の診断・管理】
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・エナジア【喘息】
・レルベア【喘息・COPD治療薬】

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院長 横山 裕

葛西よこやま内科・
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院長 横山 裕

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