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フルティフォーム【喘息治療薬】

喘息 アレルギー 呼吸器内科
フルティフォームの薬効


フルティフォームは2つの成分を配合した吸入薬で、喘息患者さんに使用される治療薬です。成人だけでなく小児適応もあり、ガスタイプなので粉タイプが使用できない方にも利用できます。このページでは呼吸器内科専門医がフルティフォームとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。

目次

フルティフォームはどんな薬?

フルティフォームは「吸入ステロイド(ICS)」「長時間作用型β2刺激薬(LABA)」の2つの成分を含む吸入薬です。フルティフォームは「pMDI」というガスタイプの吸入剤です。まずフルティフォームに含まれる2つの薬効について確認していきましょう。

吸入ステロイド(ICS):フルチカゾンプロピオン酸エステル

吸入ステロイドはアレルギー性の炎症を抑えます。

長時間作用型β2刺激薬(LABA):ホルモテロールフマル酸塩水和

気管支拡張効果があり狭くなった気管支を広げます。

フルティフォームの薬効

フルティフォームの適応症

フルティフォームに含まれるステロイド量により50と125の2規格があります。小児喘息に対してはフルティフォーム50が, 成人喘息に対してはフルティフォーム50と125の適応があります。

「小児喘息」

フルティフォーム50が適応

「喘息」

フルティフォーム50,125が適応

フルティフォームの投与に注意を要する方

フルティフォーム投与にあたっては投与に注意を要する患者さんがいますので確認しましょう。

有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者さん

肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)

フルティフォームに含まれる吸入ステロイドにより病状が悪化する可能性があります。どちらも呼吸器内科で見る疾患ですので、喘息と肺非結核性抗酸菌症を罹患している患者さんは治療すべきか呼吸器内科の主治医と相談しましょう。

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん

アルコール過敏な方

本剤には添加物として無水エタノールが微量が含まれます。アルコール過敏な方は注意しましょう。

デスモプレシン酢酸塩水和物を投与中の患者さん

エナジアを併用することで低ナトリウム血症が発現するおそれがあるため使用出来ません。

フルティフォームの副作用

よくみられる副作用としては、吸入ステロイドによる「声がれ(嗄声)」「口腔内カンジダ」「口内炎」「舌炎」、LABA(長時間作用型β2刺激薬)による「動悸」「手の震え」「筋肉の攣り(有痛性筋痙攣)」などがあります。いずれも重篤になることはありません。当院では「声がれ(嗄声)」や「口腔内カンジダ」など、吸入ステロイドによる副作用が起こった場合、フルティフォーム125を使用している場合にはフルティフォーム50へ変更(ステロイドを減量)するか、吸入ステロイドである「オルベスコ」への変更を検討します。また「動悸」「手の震え」「筋肉の攣り」が起こった場合は、同種同効薬でも同様の副作用が起こる可能性が高く、LABAを含まない吸入の組み合わせ(ICS+LAMA)を検討します。

フルティフォームの副作用

参考)副作用について(フルティフォームの添付文書より引用)フルティフォームの副作用(添付文書)

フルティフォームの薬価

1か月毎日吸入した場合の薬価(3割負担)は、フルティフォーム50で1251円、フルティフォーム125で1302円となります。

・フルティフォーム50(14吸入)2017円 3割負担:605円
・フルティフォーム50(30吸入)4169円 3割負担:1251円
・フルティフォーム125(14吸入)2176円 3割負担:653円
・フルティフォーム125(30吸入)4340円 3割負担:1302円

フルティフォームの使い方

フルティフォーム(pMDI)の使い方を確認しましょう。ガスの圧力で霧状の薬液を吸入しますが、薬の噴射と薬を吸い込むタイミングを同調させる必要があります。ボンベを押しやすくなる吸入補助具「フルプッシュ」は薬局でもらえますのでかならず装着しましょう。詳しく知りたい方は下記吸入指導箋(杏林製薬HPより引用)をご覧ください。

①吸入補助具(フルプッシュ)をつける
②初めて使用する際は空打ちを「4回」行う
③吸入器をよく振る
④軽く息を吐く
⑤吸入口をくわえる
息を吸いながらレバーを押しゆっくり吸い込む
⑦息を3~5秒程度とめる
⑧ゆっくり吐き出す
⑨規定回数④-⑧を繰り返す

フルティフォーム指導箋

スペーサーを併用する場合

スペーサーとはボンベタイプの吸入薬(pMDI)を行うための補助器具です。小さなお子様(小学生以下)や高齢の方では吸気と薬の噴霧の同調が難しいことがあり、スペーサーを併用して行うことを推奨します。

スペーサー

「押す」「吸う」タイミングが多少ずれても大丈夫

ボンベタイプの吸入を行なう上で難しいのは「押すタイミング(噴霧)」と「吸入のタイミング」を合わせることです。このスペーサーを使用することによりタイミングのズレを解消し確実に吸うことが出来ます。

副作用を減らし、吸入効率を向上させる

pMDI製剤は口腔内に吸入薬を噴射させる際に口の壁やのどの奥に当たった薬剤は気管支に届かず付着し、副作用の原因となることがあります。スペーサーを利用することで口やのどに直接当たるのを防ぎ、吸入効率を向上させることが出来ます。スペーサー併用イメージ

喘息に対するフルティフォーム

フルティフォームはどのような喘息患者さんに対し投与すべきなのでしょうか。ここでは喘息と初めて診断された「初診」と既に喘息の治療を開始されている「再診」に分けて考えていきます。またフルティフォームにはステロイドの含有量によって「フルティフォーム50」「フルティフォーム125」の2規格があります。ステロイドの量をどうするかについても考えていきたいと思います。

フルティフォームが適する喘息(初診)とは

プライマリケア医師向け「喘息診療実践ガイドライン(1)」では、初めて喘息であることが疑われたり、喘息と診断された場合にまず推奨される治療は「ICS/LABA」(吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬)」とされています。また専門医向け「喘息予防・管理ガイドライン(2)でも喘息初診の患者さんのうち「症状が毎日ある」「発作止めを毎日必要とする」「週1回以上、日常生活や睡眠が妨げられる」「夜間症状が週1回以上」「日常生活は可能だが多くが制限される」などの重症感がある方を除き、まずは「中用量ICS/LABA」での治療開始が望ましいと考えられます。フルティフォーム125を1日2回×1回2吸入(計4吸入)使用すると「中用量ICS/LABA」に該当します。喘息と診断されそこまで喘息の重症感がない患者さんであればまず試すべき治療薬と言えます。

フルティフォームが適する喘息(再診)とは

喘息患者さんの多くはガイドラインでも推奨されているようにICS/LABA(アテキュラ、レルベア、フルティフォーム、シムビコート、ブデホル)で治療を開始され継続されていると思います。一方で3剤配合剤(ICS/LABA/LAMA)が近年登場しています。3剤配合剤ICS/LABA/LAMAやICSとの使い分けはどのようにしたら良いでしょうか。「コントロール不良」「咳や痰が残存」の2つに分けて考えてみたいと思います。

ICS/LABAで十分なコントロールを得られる割合

ICS/LABAで治療が行われた喘息患者さんのコントロール状況を評価した臨床試験(3)を確認しましょう。臨床試験組み入れ前6か月間に①ICS未使用②低用量ICS使用③中用量ICSの3つに分け喘息のコントールを確認しています。「日中の症状」「発作止めの使用」「夜間覚醒」「喘息増悪」「救急受診」がなく、朝のPEF値が予測値の80%以上をTotal Controlとしています。ICS/LABAでTotal Controlを得られた患者さんはそれぞれ①50%、②44%、③28%でした。ガイドラインではICS中用量/LABAで初期治療開始とするべきとされていますが、ICS/LABAのみで十分なコントロールが得られる喘息患者さんは多くて半数という結果であり、コントロールが十分でない喘息患者さんも相当数いると考えられます。ICSでコントロールされる喘息患者さんの割合

既存治療を行ってもコントロールが悪い喘息

既に治療を開始されている喘息患者さんでは、中用量ICS/LABA(フルティフォーム125:1回2吸入×2)で治療しているにも関わらず喘息コントロールが不良である場合は、フルティフォームを増量(1回3-4吸入×2)とするか、LAMA(スピリーバ)を追加、もしくはICS/LABA/LAMA3剤配合剤(エナジアやテリルジー)への変更が検討されるでしょう。ICS/LABAでもコントロール不良な喘息患者さんは治療アドヒアランス(服薬順守の状況)に関わらず3-4割程度いるとされ決して少なくありません(4)。そのような患者さんに対しLAMAを追加すると「肺機能(1秒量)」「ピークフロー値」「喘息の年間増悪率」「喘息コントロール」が改善することが、3剤配合剤吸入の臨床試験で報告されています(5)(6)。逆にICS/LABA/LAMAで治療を開始しコントロールが良好であればICS/LABAへ減量が可能と考えられます。またICS/LABA(フルティフォーム)でコントロールが良好となった場合はICS(吸入ステロイド単剤)への減量も可能と考えられます。

既存治療を行っても咳や痰が残存する喘息

既に治療が開始された喘息患者さんのうち、最後まで残存していた症状は昼夜を問わない「咳や痰」であったとの報告もあります(7)。ICS/LABA(フルティフォーム)による喘息治療を行っていても咳や痰が残存している場合には「LAMA(スピリーバ)」を追加するか、LAMAを含む3剤配合剤吸入(エナジア、テリルジー)への変更が検討されるでしょう。

フルティフォームは「50」「125」のどれが良いのか?

フルティフォームの用法用量一覧

違いは含有される「吸入ステロイド」「気管支拡張薬」の違いです。それではフルティフォームはどのように設定すればよいのでしょうか?まずフルティフォーム125を2×2吸入、つまり「中用量の吸入ステロイド」で治療を開始した後、喘息増悪を起こす場合にはフルティフォーム125を3-4×2吸入へ吸入回数を増やすか、LAMA(スピリーバ)を追加すべきと考えられます。喘息のアレルギーの原因である2型炎症が強い場合、ステロイド量が多い方が喘息の増悪が少ないということが分かっています(7)。また喘息の原因そのものである「気道過敏性」が強く残存している場合も同様にステロイド量が多い方がよいと考えられます。このような場合にはフルティフォーム125の吸入回数を増加させることが妥当でしょう。一方、2型炎症はそこまで強くなく、「咳や痰」の残存、気道狭窄がメインであり、吸入ステロイドを増やす必要がなければLAMAを追加すべきと考えられます。逆にフルティフォーム50が検討されるのはステロイド量を積極的に減らしたい場合です。例えばフルティフォーム125(中用量)で症状が長期安定している場合、骨粗しょう症や糖尿病など合併症に対する影響が懸念される場合、声がれ(嗄声)などステロイドによる副作用がある場合、肺炎など感染を繰り返す場合、そして最近増えつつある「肺非結核性抗酸菌症」を併存している場合などです。もしフルティフォーム125を2~4×2(中~高用量)を使用しているが、ステロイドを減量したい理由がある時に、喘息コントロールに懸念がある場合はステロイドを減量しつつLAMAを追加する、フルティフォーム125→フルティフォーム50+スピリーバ(LAMA)もしくは低用量ICS/LABA/LAMA(テリルジー100, エナジア中)への変更も1つの方法と考えられます。フルティフォーム治療増減フローチャート

フルティフォーム125(3~4吸入×2):ICS高用量が検討される喘息とは

①フルティフォーム125(2×2吸入):ICS中用量で増悪する

 

②2型炎症が強い喘息

・治療後の呼気NO検査が高値(>50ppb)
・末梢血好酸球数が高値(>300/μL)

③気道過敏性が強い喘息

・治療後もピークフローによる日内変動が20%以上
・治療後も外的要因により喘息増悪が頻回に起こる

フルティフォーム50:ICS低用量が検討される喘息とは

①フルティフォーム中用量で長期安定している喘息

②合併症に対する影響が懸念される場合

・骨粗しょう症、糖尿病

③感染(肺炎)を繰り返す場合

④肺非結核性抗酸菌症を合併している

 

フルティフォーム125(3~4吸入×2):ICS高用量が望ましいがステロイドを減量したい場合

・フルティフォーム125(2×2吸入)に「LAMA(スピリーバ)」を追加
・3剤配合剤吸入(テリルジー、エナジア)への変更

pMDI製剤(フルティフォーム)を選ぶメリット

ICS/LABA配合剤であるフルティフォーム(pMDI製剤)には、同種同効薬として「レルベア(エリプタ)」「アテキュラ(ブリーズヘラー)」「シムビコート(タービュヘイラー)」などがあります。ここではフルティフォームの剤型である「pMDI製剤」を選ぶメリットについてご紹介します。

吸気力が弱くても大丈夫

粉が出るタイプの吸入を「ドライパウダー製剤(DPI)」といいますが、自分の力で吸い上げる必要があり、吸う力が弱い「高齢な方」や「小児」ではうまく吸えないことがあります。pMDI製剤は吸う力が弱くても吸うことが出来ます。

声がかれにくい(嗄声が起こりにくい)

pMDI製剤に含まれる吸入ステロイドは粒子が小さいため、のど~気管支の太いなど局所に沈着しにくく、粉(ドライパウダー)製剤と比べて声がかれにくい(嗄声が起こりにくい)ことが特徴です。

むせにくい

pMDI(ガスタイプ)は粉(ドライパウダー)製剤と比べてむせにくいです。

吸入回数を調節できる(AMD:用量調節投与)

フルティフォームは1日4~8吸入の間で吸入回数を調節することが出来ます。用量を調節する方法のことをAMD(Adjustable Maintenance Dosing:用量調節投与)といいます(8)(9)。例えば季節性に悪化する時期は吸入回数を増やし、調子がよい時期には減らすなど、用量を柔軟に変更して投与することが可能となります。

小児や高齢者でも吸える

特に小学生未満のお子様ではガス(pMDI)製剤をおすすめします。

pMDI(フルティフォーム)を選ぶデメリット

吸入回数が多い

粉(ドライパウダー)製剤は1日1回が主流ですが、ガスタイプ(pMDI)製剤は基本1日2回以上吸入する薬がほとんどです。

ICS/LABA/LAMA(3剤配合剤)がない

喘息適応があるICS/LABA/LAMA(3剤配合剤)吸入はなく、必要な場合はLAMA(スピリーバ)を併用する必要があります。

吸入指導を要する

噴霧と吸うタイミングを同調させる必要があり、初回の吸入指導が重要と言えるでしょう。

アルコール過敏な方は注意

微量のアルコールでも過敏な方は粉(ドライパウダー)製剤を選びましょう。もしガス(pMDI)製剤を選びたい場合は「フルタイドエアゾール」「アドエアエアゾール」を選ぶと良いでしょう。

pMDI製剤と環境問題

pMDI製剤には代替フロンが含まれており、温室効果ガスの1つです(10)。どちらの吸入薬も使用可能な状況において環境問題を考えるのであればDPI(ドライパウダー)を選ぶべきかもしれません。

おわりに

フルティフォームは2つの有効成分を含む、ガスタイプ(pMDI)製剤の吸入薬です。pMDI製剤のメリットを活かし、「小児」から「高齢者」まで吸入が可能であり、局所の副作用(嗄声など)が少ないこと、吸入回数が可変であること(AMD)などが特徴として挙げられます。一方、正しく使用するには「吸入指導」を要し、「スペーサー」併用が望ましいケースもあるでしょう。初めてフルティフォームを使用される際は、医療従事者立ち合いのもと、しっかりと吸入手技を確認する必要がある吸入薬とも言えます。アルコール過敏がある方は事前に主治医へ相談しておきましょう。フルティフォームはステロイド量の異なる「50」と「125」そして吸入回数によりフルティフォーム125の「2×2」「3×2」「4×2」吸入と用量を調節することが出来ます。効果が不十分な場合、自己判断で中断したりせず、必ず医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。当院では、吸入薬の使い方指導や症状の経過観察はもちろん、呼気NO検査やスパイロメトリー(肺機能検査)などによる客観的な評価も行っております。「いまの吸入薬で本当にコントロールできているか不安」「フルティフォームを使うべきか悩んでいる」という方は、お気軽にご相談ください。

引用文献

(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)Bateman ED et al: Am J Respir Crit Care Med 2004; 170(8), 836-844
(4)Gon Y, et al: Respir Investig 2021 (doi.org/10.1016/j.resinv.2021.02.003) [Epub online ahead]
(5)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2021;9(1),69-84
(6)Kerstjens HAM, Lancet Respir Med. 2020 Oct;8(10):1000-1012
(7)Adachi M, et al. J Asthma. 2019 Sep;56(9):1016-1025
(8)Chauhan BF, et al.Cochrane Database Syst Rev. 2013 Feb 28;2:CD009611.
(9)Price DB, et al. Respir Res. 2007 Jul 4;8:46.
(10)Woodcock A, et al. Thorax. 2022 Feb 7;thoraxjnl-2021-218088.

参考記事

・気管支喘息(治療)
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・気道過敏症とは何か?【喘息】【咳喘息】
・ピークフローメーター【喘息の診断・管理】
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・テリルジー【喘息・COPD治療薬】
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院長 横山 裕

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