アニュイティ【喘息治療薬】

アニュイティはステロイド吸入薬で、喘息の患者さんに使用される治療薬です。このページでは呼吸器内科専門医がアニュイティとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。
アニュイティはどんな薬?
アニュイティは「吸入ステロイド(ICS)」を含む吸入薬です。アニュイティは「エリプタ」という吸入剤型の1つで「1日1回」「吸入手技が簡単」という特徴があります。また「エリプタ」は今回ご紹介する「ICS(アニュイティ」以外に「ICS/LABA(レルベア)」「ICS/LABA/LAMA(テリルジー)」「LAMA(エンクラッセ)」「LABA/LAMA(アノーロ)」と様々な薬効によるラインナップが充実しており、同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能であるというメリットもあります。アニュイティに含まれる薬効成分について確認していきましょう。
吸入ステロイド(ICS):フルチカゾンフランカルボン酸エステル
吸入ステロイドはアレルギー性の炎症を抑えます。
アニュイティの適応症
気管支喘息に対する適応があります。
アニュイティに含まれるステロイド量により100と200のラインナップがあります。
アニュイティ投与に注意を要する方
有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者さん
肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)
アニュイティに含まれる吸入ステロイドにより病状が悪化する可能性があります。どちらも呼吸器内科で見る疾患ですので、喘息やCOPDと肺非結核性抗酸菌症を罹患している患者さんは治療すべきか呼吸器内科の主治医と相談しましょう。
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん
牛乳アレルギー(慎重投与)
本剤の添加物である乳糖には夾雑物として乳蛋白が含まれます。微量の牛乳の摂取でも症状が出現する牛乳アレルギー患者さんにおいて、症状が発現することがありますので、牛乳アレルギーのある患者さんへの投与に際しては、十分ご注意ください。(GSK HPより)
アニュイティの副作用
よくみられる副作用としては、吸入ステロイドによる「声がれ(嗄声)」「口腔内カンジダ」「口内炎」「舌炎」があります。いずれも重篤になることはありません。当院では「声がれ(嗄声)」や「口腔内カンジダ」など、吸入ステロイドによる副作用が起こった場合は同種同効薬であるガスタイプの吸入薬「オルベスコ」への変更を検討します。
参考)副作用について(アニュイティ添付文書より引用)
アニュイティの薬価
1か月毎日吸入した場合の薬価(3割負担)は、アニュイティ100で390円、アニュイティ200で505円となります。
・アニュイティ100(30吸入)1301円 3割負担:390円
・アニュイティ200(30吸入)1683円 3割負担:505円
アニュイティ(エリプタ)の使い方
アニュイティ(エリプタ)の使い方は難しくありません。下記6ステップにて吸入することが出来ます。詳しく知りたい方は下記の吸入指導箋(GSK)をご覧ください。
①カチッとするまでふたをあける
②吸気口をくわえる
③しっかり吸い込む
④息を止める
⑤ゆっくり吐く
⑥ふたを閉める
喘息に対するアニュイティ
アニュイティはどのような喘息患者さんに対し投与すべきなのでしょうか。本邦のガイドライン(1)(2)によれば喘息初診の患者さんに対しては気管支拡張薬を含む「ICS/LABA」製剤(レルベアなど)で治療を開始するべきとされておりますので、アニュイティを初診患者さんに投与する機会はなさそうです。またアニュイティにはステロイドの含有量によって「アニュイティ100」と「アニュイティ200」の2規格があります。ステロイドの量をどうするかについても考えていきたいと思います。
アニュイティが適する喘息とは
喘息患者さんの多くはガイドライン(1)(2)で推奨されている様に、気管支拡張薬を含むICS/LABA(レルベア、フルティフォーム、シムビコート、ブデホル)で治療を開始され継続されていると思います。ICS/LABAとICS(アニュイティ)との使い分けはどのようにしたら良いでしょうか。「喘息コントロール」という側面から考えていきたいと思います。
吸入ステロイド単剤でコントロールできる喘息とは
ICSおよびICS/LABAで治療が行われた喘息患者さんのコントロール状況を評価した臨床試験(3)を確認しましょう。臨床試験組み入れ前6か月間に①ICS未使用②低用量ICS使用③中用量ICSの3つに分け喘息のコントールを確認しています。「日中の症状」「発作止めの使用」「夜間覚醒」「喘息増悪」「救急受診」がなく、朝のPEF値が予測値の80%以上をTotal Controlとしています。ICSのみでTotal Controlを得られた患者さんはそれぞれ①40%、②28%、③16%でした。まず「ICS/LABA」でTotal Controlを得られるかどうかを確認し、得られるのであればICS(アニュイティ)への減量をチャレンジすると良いでしょう。ただしICS(アニュイティ)のみでTotal Controlを得られる割合は喘息全体の16%~40%と多くはありませんので、減量前後の喘息コントールを慎重に見極める必要がありそうです。
アニュイティは「100」or「200」のどちらが良いのか?
アニュイティ100とアニュイティ200の違いは含有される「吸入ステロイド」の違いです。それではステロイド量はどのように設定すればよいのでしょうか?まずアニュイティで喘息増悪を起こす場合にはレルベアを検討すべきと考えられます。喘息のアレルギーの原因である2型炎症が強い場合、ステロイド量が多い方が喘息の増悪が少ないということが分かっています(4)。また喘息の原因そのものである「気道過敏性」が強く残存している場合も同様にステロイド量が多い方がよいと考えられます。逆にアニュイティ100が検討されるのはステロイド量を積極的に減らしたい場合です。例えばアニュイティ200で症状が長期安定している場合、骨粗しょう症や糖尿病など合併症に対する影響が懸念される場合、声がれ(嗄声)などステロイドによる副作用がある場合、肺炎など感染を繰り返す場合、そして最近増えつつある「肺非結核性抗酸菌症」を併存している場合などです。もしアニュイティ200を使用しているが、ステロイドを減量したい理由がある時に、喘息コントロールに懸念がある場合はステロイドを減量しつつLABAを追加する、アニュイティ200→レルベア100への変更も1つの方法と考えられます。
アニュイティ200が検討される喘息とは
①2型炎症が強い喘息
・治療後の呼気NO検査が高値(>50ppb)
・末梢血好酸球数が高値(>300/μL)
③気道過敏性が強い喘息
・治療後もピークフローによる日内変動が20%以上
・治療後も外的要因により喘息増悪が頻回に起こる
アニュイティ100が検討される喘息とは
①アニュイティ200で長期安定している喘息
②合併症に対する影響が懸念される場合
・骨粗しょう症、糖尿病
③感染(肺炎)を繰り返す場合
④肺非結核性抗酸菌症を合併している
アニュイティ200が望ましいがステロイドを減量したい場合
「ステロイド」を減量し「LABA」を追加
(アニュイティ200→レルベア100)
エリプタ製剤(アニュイティ)を選ぶメリット
ICSであるアニュイティ(エリプタ製剤)には、同種同効薬として「オルベスコ(pMDI製剤)」があります。ここではアニュイティの剤型である「エリプタ」を選ぶメリットについてご紹介します。
1日1回吸入である
エリプタ製剤は1日1回1吸入で完結します。1日2回(2吸入)吸う必要がある他剤と比べ、利便性が高い吸入薬と言えるでしょう。
吸入手技が簡単である
「ふたを開ける」→「吸う」→「閉じる」のたった3ステップで吸入が完結します。数ある吸入薬の中で、使い化が最もシンプルで簡単な吸入薬と言って良いでしょう。
吸入残数が分かりやすい
吸入薬の残数カウンターがついており、一目で何回残っているかが分かります。カウンターの大きさも大きいため高齢の方や視力が悪い方でも見やすいでしょう。
吸えているかどうかを確認できる
エリプタ製剤には「エリプタトレーナー」という吸入練習器具があります。この練習器具はきちんと吸えていれば音がなる仕組みとなっているため、ご自身が吸入出来ているかどうかの確認をすることが出来るのです。
製剤ラインナップが豊富である
「ICS(アニュイティ)」「ICS/LABA(レルベア)」「LAMA(エンクラッセ)」「LABA/LAMA(アノーロ)」「ICS/LABA/LAMA(テリルジー)」と薬効の組み合わせによる様々なラインナップが充実しており、同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能です。
エリプタ製剤(テリルジー)を選ぶデメリット
吸う力が弱い方には不向き
アニュイティ(エリプタ)の様に粉が出るタイプの吸入を「ドライパウダー製剤(DPI)」といいます。DPIは自分の力で吸い上げる必要があり、吸う力が弱い「高齢な方」ではうまく吸えないことがあります。エリプタ製剤を初めて使用する際は「エリプタトレーナー」を用いて吸入が出来るかどうかを確認すると良いでしょう。
声がかれることがある(嗄声)
アニュイティに含まれる吸入ステロイドは比較的粒子が大きいため、のど~気管支の太いところを中心に沈着します。そのため副作用として声がかれる(嗄声)ことが一定の割合でみられます。
むせることがある
粉(ドライパウダー)製剤は吸ってムセやすい方がいます。
おわりに
アニュイティは吸入ステロイド製剤(ICS)で、1日1回で吸入できる利便性や吸入手技の簡便さを特徴とする喘息治療薬です。アニュイティにはステロイド量の異なる「100」「200」の2種類があります。ICS単剤でコントロールされる喘息患者さんは多くはありませんが、ICS/LABA(レルベア)でしっかりコントロールされている場合にはICS(アニュイティ)への減量も検討されるでしょう。当院では、吸入薬の使い方指導や症状の経過観察はもちろん、呼気NO検査やスパイロメトリー(肺機能検査)などによる客観的な評価も行っております。「いまの吸入薬で本当にコントロールできているか不安」「アニュイティを使うべきか悩んでいる」という方はお気軽にご相談ください。
引用文献
(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)Bateman ED et al: Am J Respir Crit Care Med 2004; 170(8), 836-844
(4)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2020; S2213-2600(20), 30389-1[Epub ahead of print]
参考記事
・気管支喘息(治療)
・気道過敏症とは何か?【喘息】【咳喘息】
・ピークフローメーター【喘息の診断・管理】
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・レルベア【喘息・COPD治療薬】
・テリルジー【喘息・COPD治療薬】

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック
院長 横山 裕
医院紹介

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