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パルミコート【喘息治療薬】

喘息 アレルギー 呼吸器内科
パルミコートの薬効


パルミコートはステロイド吸入薬で、喘息の患者さんに使用される治療薬です。このページでは呼吸器内科専門医がパルミコートとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。

目次

パルミコートはどんな薬?

パルミコートは「吸入ステロイド(ICS)」を含む吸入薬です。パルミコートは「タービュヘイラー」という吸入剤型の1つで「吸入回数を調節できる(AMD)」「妊娠中の安全性が高い」という特徴があります。また「タービュヘイラー」は今回ご紹介する「ICS(パルミコート)」以外に「ICS/LABA(シムビコート)」があり、同じ吸入製剤でスムーズな増減が可能であるというメリットもあります。パルミコートに含まれる薬効成分について確認していきましょう。パルミコートの薬効

吸入ステロイド(ICS):ブデソニド

吸入ステロイドはアレルギー性の炎症を抑えます。

パルミコートの適応症

「気管支喘息」「小児喘息」に対する適応があります。
含まれるステロイド量により「100μg」と「200μg」のラインナップがあります。

パルミコートの用法用量一覧

小児喘息

パルミコートを1回100〜200μg1日2回吸入します。(100μg~800μg)

喘息

パルミコートを1回100〜400μgを1日2回吸入します。(200μg~1600μg)

パルミコート投与に注意を要する方

アニュイティの投与にあたっては投与に注意を要する患者さんがいますので確認しましょう。

有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者さん

肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)

アニュイティに含まれる吸入ステロイドにより病状が悪化する可能性があります。どちらも呼吸器内科で見る疾患ですので、喘息と肺非結核性抗酸菌症を罹患している患者さんは治療すべきか呼吸器内科の主治医と相談しましょう。

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん

パルミコートには「乳糖」が含まれていないため、乳糖不耐症の患者さんや牛乳アレルギーの患者さんにも安心して使うことが出来ます。

パルミコートの副作用

よくみられる副作用としては、吸入ステロイドによる「声がれ(嗄声)」「口腔内カンジダ」「口内炎」「舌炎」があります。いずれも重篤になることはありません。パルミコートはドライパウダー製剤の中では比較的副作用は少ない吸入と言えるでしょう。当院では「声がれ(嗄声)」や「口腔内カンジダ」など、吸入ステロイドによる副作用が起こった場合は同種同効薬であるガスタイプの吸入薬「オルベスコ」への変更を検討します。

パルミコートの副作用

参考)副作用について(パルミコート添付文書より引用)

パルミコート副作用(添付文書)

パルミコートの薬価

1か月間「2吸入」を毎日吸入した場合の薬価(3割負担)はパルミコート100で146円、パルミコート200で183円となります。

・パルミコート100(112吸入)911円 3割負担:273円
・パルミコート200(112吸入)1138円 3割負担:341円

<参考>1か月薬価

パルミコート100
・1吸入×2 : 488円 3割負担:146円
・2吸入×2 : 976円 3割負担:293円
・3吸入×2 :1464円 3割負担:439円
・4吸入×2 :1952円 3割負担:731円 

パルミコート200
・1吸入×2 : 610円 3割負担:183円
・2吸入×2 :1219円 3割負担:366円
・3吸入×2 :1828円 3割負担:549円
・4吸入×2 :2438円 3割負担:731円 

パルミコート(タービュヘイラー)の使い方

パルミコートの使い方を確認しましょう。パルミコートは「クルッ」「カチッ」「スー」のイメージで吸入します。詳しく知りたい方は下記吸入指導箋(アストラゼネカHPより引用)をご覧ください。

①キャップを外す
(初めて使用する場合は「クルッ→カチッ」2回繰り返す)
③右に回す(クルッ)
④左に回す(カチッ)
息を吐いたら口にくわえる
⑥息を吸う
⑦3~5秒程度息を止める
⑧ゆっくり吐き出す
⑨規定回数③-⑧を繰り返す

喘息に対するパルミコート

パルミコートはどのような喘息患者さんに対し投与すべきなのでしょうか。本邦のガイドライン(1)(2)によれば喘息初診の患者さんに対しては気管支拡張薬を含む「ICS/LABA」製剤で治療を開始するべきとされておりますので、パルミコートを初診患者さんに投与する機会はなさそうです。またパルミコートにはステロイドの含有量によって「「パルミコート100」と「パルミコート200」の2規格があります。ステロイドの量をどうするかについても考えていきたいと思います。

パルミコートが適する喘息とは

喘息患者さんの多くはガイドライン(1)(2)で推奨されている様に、気管支拡張薬を含むICS/LABA(レルベア、フルティフォーム、シムビコート、ブデホル)で治療を開始され継続されていると思います。ICS/LABAとICS(パルミコート)との使い分けはどのようにしたら良いでしょうか。「喘息コントロール」という側面から考えていきたいと思います。

吸入ステロイド単剤でコントロールできる喘息とは

ICSおよびICS/LABAで治療が行われた喘息患者さんのコントロール状況を評価した臨床試験(3)を確認しましょう。臨床試験組み入れ前6か月間に①ICS未使用②低用量ICS使用③中用量ICSの3つに分け喘息のコントールを確認しています。「日中の症状」「発作止めの使用」「夜間覚醒」「喘息増悪」「救急受診」がなく、朝のPEF値が予測値の80%以上をTotal Controlとしています。ICSのみでTotal Controlを得られた患者さんはそれぞれ①40%、②28%、③16%でした。まず「ICS/LABA」でTotal Controlを得られるかどうかを確認し、得られるのであればICS(パルミコート)への減量をチャレンジすると良いでしょう。ただしICS(パルミコート)のみでTotal Controlを得られる割合は喘息全体の16%~40%と多くはありませんので、減量前後の喘息コントールを慎重に見極める必要がありそうです。ICSでコントロールされる喘息患者さんの割合

パルミコートは「100」or「200」のどちらが良いのか?

パルミコート100とパルミコート200の違いは含有される「吸入ステロイド」の違いです。それではステロイド量はどのように設定すればよいのでしょうか?まずパルミコートで喘息増悪を起こす場合には気管支拡張薬を含むICS/LABA(シムビコート)を検討すべきと考えられます。喘息のアレルギーの原因である2型炎症が強い場合、ステロイド量が多い方が喘息の増悪が少ないということが分かっています(4)。また喘息の原因そのものである「気道過敏性」が強く残存している場合も同様にステロイド量が多い方がよいと考えられます。逆にパルミコート100が検討されるのはステロイド量を積極的に減らしたい場合です。例えばパルミコート200で症状が長期安定している場合、骨粗しょう症や糖尿病など合併症に対する影響が懸念される場合、声がれ(嗄声)などステロイドによる副作用がある場合、肺炎など感染を繰り返す場合、そして最近増えつつある「肺非結核性抗酸菌症」を併存している場合などです。もしパルミコート200を4~8吸入使用しているが、ステロイドを減量したい理由がある時に、喘息コントロールに懸念がある場合はステロイドを減量しつつLABAを追加する、パルミコート(200)4~8吸入→シムビコートへの変更も1つの方法と考えられます。

パルミコート200が検討される喘息とは

①2型炎症が強い喘息

・治療後の呼気NO検査が高値(>50ppb)
・末梢血好酸球数が高値(>300/μL)

③気道過敏性が強い喘息

・治療後もピークフローによる日内変動が20%以上
・治療後も外的要因により喘息増悪が頻回に起こる

パルミコート100が検討される喘息とは

①パルミコート200で長期安定している喘息

②合併症に対する影響が懸念される場合

・骨粗しょう症、糖尿病

③感染(肺炎)を繰り返す場合

④肺非結核性抗酸菌症を合併している

 

パルミコート200が望ましいがステロイドを減量したい場合

「ステロイド」を減量し「LABA」を追加
(パルミコート200を4~8吸入×2→シムビコート

タービュヘイラー製剤(パルミコート)を選ぶメリット

ICS(吸入ステロイド)であるパルミコート(タービュヘイラー製剤)には、同種同効薬として「オルベスコ(pMDI製剤)」や「アニュイティ(DPI製剤)」があります。ここではパルミコートの剤型である「タービュヘイラー」を選ぶメリットについてご紹介します。

吸入回数を調節できる(AMD:用量調節投与)

パルミコートは「100」もしくは「200」を1日2~8吸入の間で回数調節することが出来ます。用量を調節する方法のことをAMD(Adjustable Maintenance Dosing:用量調節投与)といいます(5)(6)。例えば季節性に悪化する時期は吸入回数を増やし、調子がよい時期には減らすなど、用量を柔軟に変更して投与することが可能となります。

パルミコートAMD

嗄声が起こりにくい

パルミコートに含まれる吸入ステロイドであるブデソニドはドライパウダー製剤の中でも粒子が小さく、のど~気管支の太いなど局所に沈着しにくいため、比較的声がれ(嗄声)が起こりにくい吸入薬です。

むせにくい

パルミコートは粉(ドライパウダー)製剤の中でも、むせにくい吸入薬です。

吸った感じがしない(デメリットでもある)

パルミコートは他の粉(ドライパウダー)製剤と比べて、吸った際の「粉感」が少ない吸入薬です。

妊娠中に使用しやすい

パルミコートに含まれるステロイド「ブデソニド」は妊娠中の催奇形性のリスクがないことが明らかになっているため(5)、妊娠中でも使いやすい吸入薬です。

ブリーズヘラー(パルミコート)を選ぶデメリット

吸入回数が多い

粉(ドライパウダー)製剤は1日1回が主流ですが、パルミコートは基本1日2回以上吸入を行う必要があります。

ICS/LABA/LAMA(3剤配合剤)がない

同じ剤型(タービュヘイラー)で喘息適応があるICS/LABA/LAMA(3剤配合剤)吸入はなく、必要な場合はLAMA(スピリーバ)を併用する必要があります。

吸入前操作がやや複雑である

初めて使用する際は2回、また普段は1回「クルッ」→「カチッ」と2回まわす充てん作業が必要となります。初回の吸入指導が重要と言えるでしょう。

吸入回数が分かりにくい

吸入器本体に吸入回数の目安となるメーターがついていますが、小さく見えづらくなっています。

吸う力が弱い方には不向き

DPI(粉)製剤は自分の力で吸入薬を吸い上げる必要があるため、吸う力が弱い方(高齢の方など)には向いていない吸入薬です。そのような方はpMDI(ガスタイプ)の吸入薬をおすすめします。

おわりに

パルミコートは「ブデソニド」というステロイドを含む吸入薬です。規格は「100」と「200」があり、「AMD療法」など状況に応じて吸入回数を増減させることができる吸入薬となります。またパルミコート(ブデソニド)は妊娠中の方にも安全性が確認されている唯一の吸入薬です。ICS単剤でコントロールされる喘息患者さんは多くはありませんが、ICS/LABA(シムビコートなど)でしっかりコントロールされている場合にはICS(パルミコート)への減量も検討されるでしょう。パルミコートを使用する際の注意点ですが、吸入する前の操作である「クル」「カチ」が挙げられます。初回は2回、以降は吸入する度に行う必要があります。このため初回使用時は必ず医療従事者による吸入指導を受ける必要があります。効果が不十分な場合、自己判断で中断したりせず、必ず医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。当院では、吸入薬の使い方指導や症状の経過観察はもちろん、呼気NO検査やスパイロメトリー(肺機能検査)などによる客観的な評価も行っております。「いまの吸入薬で本当にコントロールできているか不安」「パルミコートを使うべきか悩んでいる」という方は、お気軽にご相談ください。

引用文献

(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)Bateman ED et al: Am J Respir Crit Care Med 2004; 170(8), 836-844
(4)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2020; S2213-2600(20), 30389-1[Epub ahead of print]
(5)Chauhan BF, et al.Cochrane Database Syst Rev. 2013 Feb 28;2:CD009611.
(6)Price DB, et al. Respir Res. 2007 Jul 4;8:46.

参考記事

・気管支喘息(治療)
・気道過敏症とは何か?【喘息】【咳喘息】
・ピークフローメーター【喘息の診断・管理】
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・シムビコート【喘息・COPD治療薬】
・オルベスコ【喘息治療薬】
・アニュイティ【喘息治療薬】

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院長 横山 裕

葛西よこやま内科・
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院長 横山 裕

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