フルタイド(エアゾール)【喘息治療薬】

フルタイド(エアゾール)はステロイド吸入薬で、喘息の患者さんに使用される治療薬です。このページでは呼吸器内科専門医はフルタイドエアゾールとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。
フルタイドエアゾールはどんな薬?
フルタイドエアゾールは「吸入ステロイド(ICS)」を含む吸入薬です。フルタイドエアゾールは「pMDI」という吸入剤型の1つで「ガスタイプ」「1日2回」「アルコール過敏でも大丈夫」という特徴があります。また「エアゾール」には今回ご紹介する「ICS(フルタイド)」以外に「ICS/LABA:アドエアエアゾール」という吸入薬があります。まずフルタイド(エアゾール)に含まれる薬効について確認していきましょう。
吸入ステロイド(ICS):フルチカゾンプロピオン酸エステル
吸入ステロイドはアレルギー性の炎症を抑えます。
フルタイドエアゾールの適応症
気管支喘息、小児喘息に対する適応があります。
含まれるステロイド量により50,100の2ラインナップがあります。
「小児喘息」
・フルタイド50エアゾールが適応
「喘息」
・フルタイド50,100エアゾールが適応
フルタイドエアゾール投与に注意を要する方
有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者さん
肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)
フルタイドエアゾールに含まれる吸入ステロイドにより病状が悪化する可能性があります。どちらも呼吸器内科で見る疾患ですので、喘息と肺非結核性抗酸菌症を罹患している患者さんは治療すべきか呼吸器内科の主治医と相談しましょう。
フルタイドエアゾールの副作用
よくみられる副作用としては、吸入ステロイドによる「声がれ(嗄声)」「口腔内カンジダ」「口内炎」「舌炎」があります。いずれも重篤になることはありません。当院では「声がれ(嗄声)」や「口腔内カンジダ」など、吸入ステロイドによる副作用が起こった場合は同種同効薬であるガスタイプの吸入薬「オルベスコ」への変更を検討します。
参考)副作用について(フルタイドの添付文書より引用)
フルタイドエアゾールの薬価
1か月毎日吸入した場合の薬価(3割負担)は、フルタイド50エアゾールで267円、フルタイド100エアゾールで285円となります。
・フルタイド50エアゾール(60吸入)891円 3割負担:267円
・フルタイド100エアゾール(60吸入)950円 3割負担:285円
フルタイド(エアゾール)の使い方
フルタイド(エアゾール)の使い方を説明します。下記のステップにて吸入することが出来ます。詳しく知りたい方は下記の吸入指導箋(GSK)をご覧ください。
①(初めて使用する際)よく振って4回空打ち
②よく振る
③息を吐く
④吸気口を加える
⑤息を吸いながらボンベを押す
⑥数秒息を止める
⑦ゆっくり息を吐きだす
⑧上記を2回繰り返す
スペーサーを併用する場合
スペーサーとはボンベタイプの吸入薬(pMDI)を行うための補助器具です。小さなお子様(小学生以下)や高齢の方では吸気と薬の噴霧の同調が難しいことがあり、スペーサーを併用して行うことを推奨します。
「押す」「吸う」タイミングが多少ずれても大丈夫
ボンベタイプの吸入を行なう上で難しいのは「押すタイミング(噴霧)」と「吸入のタイミング」を合わせることです。このスペーサーを使用することによりタイミングのズレを解消し確実に吸うことが出来ます。
副作用を減らし、吸入効率を向上させる
pMDI製剤は口腔内に吸入薬を噴射させる際に口の壁やのどの奥に当たった薬剤は気管支に届かず付着し、副作用の原因となることがあります。スペーサーを利用することで口やのどに直接当たるのを防ぎ、吸入効率を向上させることが出来ます。
喘息に対するフルタイドエアゾール
フルタイドエアゾールはどのような喘息患者さんに対し投与すべきなのでしょうか。本邦のガイドライン(1)(2)によれば喘息初診の患者さんに対しては気管支拡張薬を含む「ICS/LABA」製剤(レルベアなど)で治療を開始するべきとされておりますので、フルタイドエアゾールを初診患者さんに投与する機会はなさそうです。またフルタイドエアゾールにはステロイドの含有量によって「フルタイド50エアゾール」「フルタイド100エアゾール」の2規格があります。ステロイドの量をどうするかについても考えていきたいと思います。
フルタイドエアゾールが適する喘息とは
喘息患者さんの多くはガイドライン(1)(2)で推奨されている様に、気管支拡張薬を含むICS/LABA(アドエア、レルベア、フルティフォーム、シムビコート、ブデホル)で治療を開始され継続されていると思います。ICS/LABAとICS(フルタイドエアゾール)との使い分けはどのようにしたら良いでしょうか。「喘息コントロール」という側面から考えていきたいと思います。
吸入ステロイド単剤でコントロールできる喘息とは
ICSおよびICS/LABAで治療が行われた喘息患者さんのコントロール状況を評価した臨床試験(3)を確認しましょう。臨床試験組み入れ前6か月間に①ICS未使用②低用量ICS使用③中用量ICSの3つに分け喘息のコントールを確認しています。「日中の症状」「発作止めの使用」「夜間覚醒」「喘息増悪」「救急受診」がなく、朝のPEF値が予測値の80%以上をTotal Controlとしています。ICSのみでTotal Controlを得られた患者さんはそれぞれ①40%、②28%、③16%でした。まず「ICS/LABA」でTotal Controlを得られるかどうかを確認し、得られるのであればICS(フルタイドエアゾール)への減量をチャレンジすると良いでしょう。ただしICS(フルタイドエアゾール)のみでTotal Controlを得られる割合は喘息全体の16%~40%と多くはありませんので、減量前後の喘息コントールを慎重に見極める必要がありそうです。
フルタイドエアゾールは「50」「100」のどちらが良いのか?
フルタイド50,100エアゾールの違いは含有される「吸入ステロイド」の違いです。それではステロイド量はどのように設定すればよいのでしょうか?まずフルタイドエアゾールで喘息増悪を起こす場合にはアドエアエアゾールへの変更を検討すべきと考えられます。喘息のアレルギーの原因である2型炎症が強い場合、ステロイド量が多い方が喘息の増悪が少ないということが分かっています(4)。また喘息の原因そのものである「気道過敏性」が強く残存している場合も同様にステロイド量が多い方がよいと考えられます。逆にフルタイド50エアゾールが検討されるのはステロイド量を積極的に減らしたい場合です。例えばフルタイド100エアゾールで症状が長期安定している場合、骨粗しょう症や糖尿病など合併症に対する影響が懸念される場合、声がれ(嗄声)などステロイドによる副作用がある場合、肺炎など感染を繰り返す場合、そして最近増えつつある「肺非結核性抗酸菌症」を併存している場合などです。もしフルタイド100エアゾールを使用しているが、ステロイドを減量したい理由がある時に、喘息コントロールに懸念がある場合はステロイドを減量しつつLABAを追加する、フルタイド100エアゾール→アドエア50エアゾール, レルベア100への変更も1つの方法と考えられます。
フルタイド100エアゾールが検討される喘息とは
①2型炎症が強い喘息
・治療後の呼気NO検査が高値(>50ppb)
・末梢血好酸球数が高値(>300/μL)
③気道過敏性が強い喘息
・治療後もピークフローによる日内変動が20%以上
・治療後も外的要因により喘息増悪が頻回に起こる
フルタイド50エアゾールが検討される喘息とは
①フルタイド100エアゾールで長期安定している喘息
②合併症に対する影響が懸念される場合
・骨粗しょう症、糖尿病
③感染(肺炎)を繰り返す場合
④肺非結核性抗酸菌症を合併している
フルタイド100エアゾールが望ましいがステロイドを減量したい場合
「ステロイド」を減量し「LABA」を追加
(フルタイド100エアゾール→アドエア50エアゾール)
pMDI製剤(フルタイドアゾール)を選ぶメリット
ICS製剤であるフルタイドエアゾール(pMDI製剤)には、同種同効薬として「オルベスコ(pMDI製剤)」「アニュイティ(エリプタ)」「パルミコート(タービュヘイラー)」などがあります。ここではフルタイドアエアゾールの剤型である「pMDI」を選ぶメリットについてご紹介します。
吸気力が弱くても大丈夫
粉が出るタイプの吸入を「ドライパウダー製剤(DPI)」といいますが、自分の力で吸い上げる必要があり、吸う力が弱い「高齢な方」や「小児」ではうまく吸えないことがあります。pMDI製剤は吸う力が弱くても吸うことが出来ます。
声がかれにくい(嗄声が起こりにくい)
pMDI製剤に含まれる吸入ステロイドは粒子が小さいため、のど~気管支の太いなど局所に沈着しにくく、粉(ドライパウダー)製剤と比べて声がかれにくい(嗄声が起こりにくい)ことが特徴です。
むせにくい
pMDI(ガスタイプ)は粉(ドライパウダー)製剤と比べてむせにくいです。
小児や高齢者でも吸える
特に小学生未満のお子様ではガス(pMDI)製剤をおすすめします。
アルコール過敏でも大丈夫
一般的にpMDI製剤(ガスタイプ)には微量のアルコールが添加されているため、アルコール過敏の方には向きませんが、アドエアエアゾールにはアルコールが添加されていないため、アルコール過敏な方でも使用できます。
製剤ラインナップが豊富である
「ICS(フルタイド)」「ICS/LABA(アドエア)」「LABA(セレベント)」と薬効の組み合わせによる様々なラインナップが充実しており、同じ吸入製剤でスムーズな減量が可能です。
pMDI製剤(アドエアエアゾール)を選ぶデメリット
吸入回数が多い
粉(ドライパウダー)製剤は1日1回が主流ですが、ガスタイプ(pMDI)製剤は基本1日2回以上吸入する薬がほとんどです。
ICS/LABA/LAMA(3剤配合剤)がない
喘息適応があるICS/LABA/LAMA(3剤配合剤)吸入はなく、必要な場合はLAMA(スピリーバ)を併用する必要があります。
吸入指導を要する
噴霧と吸うタイミングを同調させる必要があり、初回の吸入指導が重要と言えるでしょう。
pMDI製剤と環境問題
pMDI製剤には代替フロンが含まれており、温室効果ガスの1つです(5)。どちらの吸入薬も使用可能な状況において環境問題を考えるのであればDPI(ドライパウダー)を選ぶべきかもしれません。
おわりに
フルタイドエアゾールは吸入ステロイド製剤(ICS)で、喘息、小児喘息をコントロールするために有効な吸入薬です。ステロイド量の異なる「50」「100」の2種類があります。小児喘息に適応症があること、DPI(粉)、pMDI(ガス)タイプのラインナップもあります。通常、ICS単剤でコントロールされる喘息患者さんは多くはありませんが、ICS/LABA(アドエアエアゾールなど)でしっかりコントロールされている場合にはICS(フルタイドエアゾール)への減量も検討されるでしょう。当院では、吸入薬の使い方指導や症状の経過観察はもちろん、呼気NO検査やスパイロメトリー(肺機能検査)などによる客観的な評価も行っております。「いまの吸入薬で本当にコントロールできているか不安」「フルタイドディスカスを使うべきか悩んでいる」という方はお気軽にご相談ください。
引用文献
(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)Bateman ED et al: Am J Respir Crit Care Med 2004; 170(8), 836-844
(4)Lee LA et al: Lancet Respir Med 2020; S2213-2600(20), 30389-1[Epub ahead of print]
(5)Price DB, et al. Respir Res. 2007 Jul 4;8:46.
参考記事
・気管支喘息(治療)
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・アドエア(ディスカス)【喘息・COPD治療薬】
・アドエア(エアゾール)【喘息・COPD治療薬】
・レルベア【喘息・COPD治療薬】
・オルベスコ【喘息治療薬】
・アニュイティ【喘息治療薬】

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック
院長 横山 裕
医院紹介

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