アトロベント【喘息・COPD治療薬】

アトロベントはSAMAという成分を配合した吸入薬で、喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんに使用される治療薬です。このページでは呼吸器内科専門医がアトロベントとはどんな薬なのか、薬効、使い方、副作用、注意すべき点などについてまとめて解説します。
アトロベントはどんな薬?
アトロベントは「短時間作用型抗コリン薬(SAMA)」という成分を含む吸入薬です。使い方としては「発作止め」として、主に呼吸が苦しい時に使用することになります。
短時間作用型抗コリン薬 (SAMA) :イプラトロピウム臭化物水和物
気管支拡張効果があります。吸入後30分以内には効果発現し、効果持続は4~6時間程度です。
アトロベントの適応症
アトロベントはCOPD(慢性気管支炎・肺気腫)・喘息に対し適応がある吸入薬です。
「COPD:慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)」
1回1~2吸入(20~40μg)吸入を1日3~4回まで
「喘息」
1回1~2吸入(20~40μg)吸入を1日3~4回まで
アトロベント投与に注意を要する方
アトロベント投与にあたっては投与に注意を要する患者さんがいますので確認しましょう。
アトロベントを使用できない方(禁忌)
本剤の成分又はアトロピン系薬剤に対して過敏症の既往歴のある患者
閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
開放隅角緑内障であれば使用することは出来ます。
緑内障をお持ちの方は必ず主治医に申し出てください。
眼科主治医にも閉塞隅角か開放隅角かの相談をしましょう。
前立腺肥大症の患者[排尿障害を起こすおそれがある。
前立腺肥大がある方でも、特に尿閉を来すような高度な方は使用しないようにしましょう。
上室性不整脈の患者、又はその既往歴のある患者
開放隅角緑内障の患者
妊婦
授乳婦
高齢者
アトロベントの副作用


アトロベントの薬価
アトロベント1本あたりの薬価(3割負担)は、174円となります。
また1容器(10mL)で200回噴射できます。
・アトロベントエロゾル20μg 4.20mg10ml 581円 3割負担:174円
アトロベントの使い方
ガスの圧力で霧状の薬液を吸入しますが、薬の噴射と薬を吸い込むタイミングを同調させる必要があります。
アトロベントの吸入手技
初めて使用する場合は2回空打ちを行う
3日間以上使用しなかった場合は1回空打ちを行う
①キャップを外し、吸入器をよく振る
②軽く息を吐く
③吸入口をくわえる
(吸入口から3-4cm離して吸う方法もあります)
④息を吸いながらレバーを押しゆっくり吸い込む
⑤息を3~5秒程度とめる
⑥ゆっくり吐き出す
⑦規定回数④-⑧を繰り返す
スペーサーを併用する場合
スペーサーとはボンベタイプの吸入薬(pMDI)を行うための補助器具です。小さなお子様(小学生以下)や高齢の方では吸気と薬の噴霧の同調が難しいことがあり、スペーサーを併用して行うことを推奨します。
「押す」「吸う」タイミングが多少ずれても大丈夫
ボンベタイプの吸入を行なう上で難しいのは「押すタイミング(噴霧)」と「吸入のタイミング」を合わせることです。このスペーサーを使用することによりタイミングのズレを解消し確実に吸うことが出来ます。
副作用を減らし、吸入効率を向上させる
pMDI製剤は口腔内に吸入薬を噴射させる際に口の壁やのどの奥に当たった薬剤は気管支に届かず付着し、副作用の原因となることがあります。スペーサーを利用することで口やのどに直接当たるのを防ぎ、吸入効率を向上させることが出来ます。
喘息に対するアトロベント
アトロベント(SAMA)は喘息増悪時の治療薬です。増悪時に1回1~2吸入を症状が改善するまで20分おきに3回(1時間)まで繰り返します。SABA(メプチンやサルタノール)よりも気管支拡張効果の発現はやや遅いものの、1回あたりの作用時間は2~6時間と比較的長く効くと考えられており、1時間かけて3回吸った後は5~6時間空けることが無難と思われます。また重度の増悪時に使用する際は、SABAと同様に「換気血流不均等」という現象により低酸素が起こることがることに留意が必要です。また理論上は咳や痰に対する抗コリン薬としての効果も期待できると考えられます。
SABA(メプチン、サルタノール)が使えない方への代替薬
メプチンやサルタノールをはじめとするSABAには副作用として「手の震え」や「動悸」があり、発作薬として使用しづらい方がいらっしゃいます。そのような方ではアトロベント(SAMA)を使用するとよいと思われます。
重症喘息に対するSABAとSAMAとの併用
SABA(メプチン、サルタノール)とSAMA(アトロベント)は異なる薬効成分であり、併用することが可能です。
アトロベントの使用回数が多くなったら主治医へ相談
アトロベントを頻回使用しないといけない状態は、例え吸入ステロイド(ICS)を含む定期治療を行っていたとしても喘息のコントロールが不十分な状態と考えられます。アトロベントを毎日複数回使うような状態になったときは、主治医へ早めに相談し、定期治療の変更(Step up)を検討しましょう。
おわりに
アトロベントは喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の発作時に使用される吸入薬です。苦しい時に使用し改善するようであれば気管支がせまいことを意味します。呼吸苦が持続するようであれば1時間あたり3回(1回あたり1~2吸入)繰り返し吸入出来ます。アトロベントを繰り返し使用しないといけない状態は、喘息やCOPDのコントロールが不良な状況と考えられます。アトロベントだけでしのぐことはせず、早めに主治医に相談し、維持治療薬の見直しを行いましょう。現在、喘息やCOPDと診断されて治療中で、アトロベントを含めた発作時治療薬をお持ちでない方は主治医と相談し処方してもらうようにしましょう。
引用文献
(1)喘息診療実践ガイドライン
(2)喘息予防・管理ガイドライン
(3)COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン
参考記事
・気管支喘息(治療)
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・メプチンエアー(喘息・COPD治療薬)
・サルタノール【喘息・COPD治療薬】

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック
院長 横山 裕
医院紹介

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