リフヌア(ゲーファピキサント)【難治性慢性咳嗽治療薬】
リフヌア(ゲーファピキサント)とは、「難治性の慢性咳嗽(がいそう)」に使用される新しい鎮咳薬です(1-7)。このページでは呼吸器内科専門医がリフヌアとはどのような薬なのか適応症や作用機序を含めて解説します。
難治性慢性咳嗽(がいそう)とは何か?
✅あらゆる治療に反応せず原因が分からないまま咳が続く状態を「難治性慢性咳嗽」といいます。
✅難治性慢性咳嗽は8週間以上続く慢性咳嗽のうち、以下の2つに分類されます(8)。
✅本邦での報告では、咳嗽専門外来での遷延性・慢性咳嗽312例中、難治性慢性咳嗽は63例(20.2%)存在しており、決して稀な病態でないことが分かります(9)。
治療抵抗性の慢性咳嗽(RCC:RCC:Refractory chronic cough )
咳嗽に関係する原因(喘息、逆流性食道炎、上気道咳症候群など)の適切な治療にも関わらず継続する咳嗽
原因不明の慢性咳嗽(UCC:Unexplained chronic cough)
十分な評価を行っているにも関わらず、咳に関連する原因が不明な咳嗽
難治性慢性咳嗽の診断方法
難治性慢性咳嗽とは咳嗽に関連すると考えられる原因疾患に対し、適切な治療を行っているのにも関わらず継続する咳嗽のことを言いますが、原因疾患に対する適切な治療とは何でしょうか?ここでは最新の咳嗽・喀痰の診療ガイドラインにおける診療フローチャートを引用しながら長引く咳患者さんへの対応を確認していきたいと思います。

引用:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025
医療面接、身体所見、胸部X線写真
・問診、身体所見、胸部X線で原因が推定できる疾患がある場合はその疾患の精査にすすみます。 具体的には、肺結核などの呼吸器感染症、肺癌などの悪性疾患、喘息、COPD、喫煙による慢性気管支炎、気管支拡張症、薬剤性肺障害、心不全などが該当するでしょう。
胸部X線で原因が明らかではない咳嗽
・鼻が喉に落ちる「後鼻漏による咳嗽」の可能性があることに注意しつつ、喀痰があれば「慢性副鼻腔炎」「気管支拡張症」などの除外を行い、あれば「副鼻腔気管支症候群(SBS)」に対する治療を行います。喀痰がない・少ない場合は頻度の高い疾患と治療的診断に移ります。
喀痰が少ない、あるいは喀痰がない咳嗽
・頻度が高いのは「咳喘息」「アトピー咳嗽」「喉頭アレルギー」「胃食道逆流症(GERD)」「感染後咳嗽」です。これらの疾患を疑う場合はそれぞれ「吸入薬(吸入ステロイド/β2刺激薬)」「抗ヒスタミン薬」「制酸剤(プロトンポンプインヒビター)」「咳嗽に対する対症療法」などによる治療を2週間程度行い、症状が改善するか観察します。咳の原因となる疾患が複数存在することもあり、併存している場合は同時に治療する必要があります。
上記に対する診断および治療を行っても治らない咳嗽
必要に応じて「胸部CT検査」や「耳鼻咽喉科・消化器内科への紹介」など、咳嗽に対し他に対応可能な原因がないかを追求します。これらの対応によっても咳嗽改善が不十分、あるいは咳嗽の原因は不明である場合「難治性慢性咳嗽」と診断し、「P2X3受容体拮抗薬:ゲーファピキサント(リフヌア)」による治療介入を検討することになります。
リフヌアについて
リフヌアの作用機序
咳喘息や胃食道逆流症などの治療は咳のセンサーである「末梢咳受容体」に対する刺激となり、迷走神経を介して、咳中枢に信号が伝わることで咳が起こります。一方「難治性慢性咳嗽」の原因の1つとして末梢咳受容体である「P2X3受容体」が関与していると考えられていますが、吸入薬など一般的な治療薬では止めることが出来ません。末梢性鎮咳薬である「リフヌア(ゲーファピキサント)」はP2X3受容体を阻害することで咳嗽を止める薬です。

リフヌアの治療効果
国際共同第Ⅲ相試験(COUGH-1,2併合解析)
リフヌア(ゲーファピキサント)の有効性を検証した国際共同第Ⅲ相試験(COUGH-1,2併合解析)の結果を確認しましょう。この臨床試験の患者背景(2044例)ですが「治療抵抗性の慢性咳嗽(RCC)」が61.5%「原因不明の慢性咳嗽(UCC)」が38.5%、慢性咳嗽の罹患期間平均は11.32年と非常に長く、主な併存疾患としては喘息41%、胃食道逆流症41%、上気道咳症候群(後鼻漏による咳嗽)29%、複合例31%でした。


主要評価項目である「24時間の咳嗽頻度(1時間あたりの回数)」はリフヌア投与前と比較して56%(4週)、59%(8週)、61%(12週)改善したことが明らかになっています。

また原因疾患や前治療による治療効果に大きな差はみられませんでした。副次評価項目の1つである「24時間の咳嗽頻度(1時間あたりの回数)がベースラインから30%以上減少した被検者」の割合は58.5%と報告されています。

実臨床下におけるリフヌアの効果をみた臨床試験(10)
本邦で行われた多施設共同後ろ向き研究の結果をご紹介します。この試験では咳嗽外来を受診し、リフヌアを処方された難治性慢性咳嗽の272例の患者を対象としています。併存症の内訳ですが、咳喘息/喘息が75.3%、胃食道逆流症が49.3%、上気道咳症候群が37.3%、アトピー性咳嗽が28.9%でした。4週間以内のゲファピキサントに対する最大の反応を評価し、有効性は0(全く効果がない)から10(完全に消失した)までのスケールで評価されました。患者の約半数は、0~10のスケールで5以上の反応率を示し、25%がスーパーレスポンダー(反応率8以上)に分類され、スーパーレスポンダーの70.8%と中等度レスポンダーの52.0%が治療開始から2週間以内に反応を示しました。さてこの臨床試験で興味深いのは、奏効率が良い患者さんの特徴にあります。特定の喉頭感覚(喉の刺激感、くすぐったさ、分泌物の感覚)があると、リフヌアの治療反応性と関係があるというものです。また、リフヌアを中止した奏功患者においては、中止後も咳の重症度の改善がそれぞれ中央値で217日と169日間維持されました。筆者らは考察において、リフヌアによって咳の悪循環を断ち切ることで難治性慢性咳嗽の管理と神経可塑性の正常化の促進に役立つ可能性があると述べています。

リフヌアの副作用(味覚異常)
一咳嗽に関与する末梢咳受容体「P2X3受容体」ですが味覚も司っているため、ブロックすることで味覚異常が高率に起こります。リフヌア(ゲーファピキサント)の代表的な副作用である味覚異常については治療する前に知っておくとよいでしょう。臨床試験では日本人部分集団に対しリフヌア45mgを投与した際の味覚関連事象(味覚消失、味覚不全、味覚減退、味覚障害及び味覚過敏)は100%であったと報告されています。実際に投与された方に伺うと「塩味」に関する異常が多く「濃い」「薄い」「しない」など様々なようです。リフヌアは1日2回投与ですが朝分の内服を中止することで日中の味覚が回復する方もおり、中止することで比較的速やかに味覚異常は回復するようです。味覚異常と咳の疾病負荷を考慮した上で内服されるかを検討するとよいでしょう。
まとめ
難治性慢性咳嗽は、適切な治療を行っても長引く咳が続く状態です。従来の咳治療では効果が得られなかったこうした方々に対し、末梢咳受容体(P2X3)を標的とした新しい作用機序の治療薬「リフヌア(ゲーファピキサント)」の登場により、半数以上の患者さんにおいて咳嗽が改善することが分かってきました。さらに本邦の報告から、「咽喉頭異常感(喉の刺激感、くすぐったさ、分泌物の感覚)」がある方にはリフヌアが良く奏功することや、リフヌアが奏功して中止した場合も半年程度治療効果が持続することなどが分かってきました。一方で、副作用として味覚異常が比較的高頻度にみられる点には注意が必要です。この点から主治医には患者さんと相談しながら、「咳による生活への影響」と「副作用による不快感」のバランスをとった治療が求められます。重要なのは、リフヌアを使う前に咳の原因を丁寧に探ることです。「何年も咳に悩んでいる」「いろいろ試したが効かなかった」という方も、あきらめずに新しい咳の選択肢について相談してみてください。
<引用文献>
(1) McGarvey LP, et al. Lancet. 2022 ; 399 : 909-23
(2) Birring SS, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2023 ; 207 : 1539-42
(3) Niimi A, et al. Allergol Int. 2022 ; 71 : 498-504
(4) Smith JA, et al. Lung. 2022 ; 200 : 423-9
(5) McGarvey L, et al. Lung. 2023 ; 201 : 111-8
(6) Smith JA, et al. Pulm Ther. 2022 ; 8 : 297-310
(7) Martinez FJ, et al. Pulm Ther. 2021 ; 7 : 471-86
(8) Irwin RS, et al. Chest 2006; 129
(9) 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025 p150-p152
(10) Matsumoto H,ERJ Open Res. 2025 Jul 7;11(4):01037-2024
<参考記事>
・長引く咳(慢性咳嗽・遷延性咳嗽)
・【長引く咳】難治性慢性咳嗽の症状・病態・治療について解説!
・鼻が原因の咳「上気道咳症候群」
・のどの違和感(咽喉頭異常感)を伴う咳
・咳喘息(せきぜんそく)
・気管支喘息(喘息:ぜんそく)
・逆流性食道炎
葛西よこやま内科・
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