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その他

重症喘息に関する講演会に参加

講演会
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2025年10月18日に神戸で行われました重症喘息の講演会に参加致しました。
以下、聴講録となりますのでご興味がある方はぜひご覧ください。

1. 重症喘息治療のkey player IL5と好酸球 坪内拡伸 先生


・アレルゲン暴露は上皮のAch分泌を誘導しⅡ型炎症を惹起する
・喀痰中の好酸球とIL-5濃度→FEV1との関係 Marc-Malovrh M, Respir Med. 2020 Feb;162:105875
・気管支喘息における気道リモデリング Arch Bronconeumol 2025 61 31-40
・上皮間バリアの構造 Immunity 2015 43 29-40
・喘息患者由来の上皮を培養するとバリア機能異常が認められる J allergy Clin Immunol 2011 128 549
・RSウイルス感染による上皮傷害は2型炎症を惹起する Clin Exp Allergy 2024 54 109-119
・好酸球内顆粒の分泌メカニズム Nat Rev Immunol 2012 Nov 16 13(1)9-22, Lab Invest 2009 89 769
・好酸球による上皮傷害と損傷上皮による好酸球炎症の促進 Int Arch Allergy Immunol 2024 185 1033
・好酸球と気道上皮細胞を共培養するとMUC5ACの発現が亢進する Am J Rhinol Allergy 2014 28 103
・PI3K/AKTシグナルの亢進は上皮から繊維芽細胞への形質転換を促す
・喘息患者における好酸球ペルオキシダーゼ、ADAM33とIL-5FEV1/FVCとの関係 Clin Immunol 2024 263 110228
・免疫調整細胞としての気道平滑筋細胞(IL-5とIL-1βの分泌) J Clin Invest 1999 104 657
・間葉系細胞も持続する好酸球性炎症に関与する可能性がある Arch Bronconeurmol 2025 61 31
・気道の炎症細胞浸潤と上皮下線維化肥厚との関係 
・感染防御機構としての好酸球 Nat Rev Immunol 2024 24 858
・結核感染時の肉芽腫における好酸球の抗菌活性 J exp med 2021 218
・インフルエンザ感染時における好酸球を介したCD8+T細胞応答 J Immunol 2017 198 3214
・炎症性腸疾患における好酸球の腸管恒常性維持への寄与 Nature 2022 615 151
・腸管適応型好酸球の分化におけるNotch2シグナルの役割 J Leukoc Biol 2024 116 379
・IL-5産生ILC2と好酸球による腸粘膜の恒常性 Int Immunol 2025 37 273
・消化管における組織常在性好酸球による恒常性の維持 J exp Med 2023 220 
・末梢血好酸球と心血管系疾患のリスクの関連 Open Heart 2016 3
・脳梗塞発症後の好酸球数と神経機能スコアの関連 Front Immunol 2021 12 709289
・心筋梗塞後の好酸球の役割 Nat commun 2020 11 6396
・ILC2由来のIL-5による好酸球誘導と大動脈瘤形成の関係 Adv Sci 2023 10 e2206958
・血中の好酸球は組織適応型好酸球に変化して局所で作用
・好酸球の役割 Nat Rev Immunol 2024 24 858

2.Clinical Remissionをめざす重症喘息治療 Mepolizumabのエビデンス 坂上 拓郎 先生


*引用文献を講演中に正確に確認できないため、該当する部分のエビデンスについて補完して添付しております。

重症喘息の疫学 死亡率が高い 死亡のリスクが疾患の重症度に伴って上昇する

参考:横山作成

# タイトル 概要 引用文献
1 Risk factors for death in patients with severe asthma ブラジル・サルヴァドール市における重症喘息患者を対象に、死亡例58例・対照232例を用いた症例対照研究。年齢・性別・FEV₁ < 60%予測・コントロール不能な症状が死亡の独立リスク因子であると報告。 (PMC) Santos MS, Cruz AA, Ponte EV, et al. Risk factors for death in patients with severe asthma. J Allergy Clin Immunol. 2011;128(3):549-56.e1-12.
2 Risk factors for death among adults with severe asthma 米国の保険組織に登録された成人重症喘息患者865名を平均2年間追跡。重症喘息患者の死亡リスクが一般喘息患者より高いことを示唆。 (PMC) Shah AD, Larkin H, Al-Madani K, et al. Risk factors for death among adults with severe asthma. Thorax. 2009;64(9):805-11.
3 Multinational cohort study of mortality in patients with asthma and severe asthma exacerbations 欧州5カ国の電子医療データベースを用い、成人喘息患者586,436名中、重症喘息42,611名を特定。全原因死亡率(標準化死亡率)は、喘息一般群で5.2-9.5/1,000人年、重症喘息群で11.3-14.8/1,000人年であった。重篤な増悪直後1週の死亡率も14.1-59.9/1,000人年と高リスク。 (PubMed) Bennett K, Gulliford MC, De Bruin M, et al. Multinational cohort study of mortality in patients with asthma and severe asthma exacerbations. Allergy. 2020;75(8):2062-70.
4 Long-term predictors of severe exacerbations and mortality in a population-based asthma cohort デンマークの1071名の喘息コホートを1974-1990年から追跡。喘息関連死亡の予測因子として、年齢、症状持続期間、喫煙、肺機能低下、高SABA使用、成人発症などを報告。「血中好酸球高値(>0.4×10⁹/L)」も喘息関連死と関連。 (BioMed Central) Lange P, Skånberg I, Ulrik CS, et al. Long-term predictors of severe exacerbations and mortality in a population-based asthma cohort. Respir Res. 2021;22(1):156.



重症喘息患者における増悪リスクは軽症~中等症患者と比較し5倍高い

参考:横山作成

文献 対象・研究デザイン 比較指標 軽症~中等症 重症 増悪リスク比(重症/軽症)
Suruki et al., 2017BMC Pulm Med 英米の保険データ解析(>20万人) 年間平均増悪回数/患者 0.2–0.3 1.0–1.5 約3〜5倍
Nakwan & Maneechotesuwan, 2021J Asthma Allergy アジア多施設コホート(1年追跡) 年間増悪率(人年あたり) 1.66 3.98 約2.4倍
Jacobs et al., 2023BMJ Open Respir Res 英国住民コホート(5年間) 調整後増悪率(IRR) 1.0(基準) 6.2 約6倍
Sears, 2019Am J Respir Crit Care Med 多数の疫学研究を総括 各研究間の比較 約3〜6倍(レビュー)
Bennett et al., 2020Allergy 欧州5か国コホート(58万人) 年間増悪+死亡率 0.9/1000人年 4.8/1000人年 約5倍


重症喘息の日常生活へ及ぼす影響 職場 学校 日常生活

参考:

文献 影響対象 内容要約
Leso V, et al. Quality of life and work functionality in severe asthma patients. PMC (2024) (PMC) 職場・日常生活 生物学的製剤治療を受けた重症喘息患者で、臨床的改善とともに職業機能・日常生活機能も改善したというデータを示す。重症喘息患者では、呼吸症状・息切れが業務遂行能力を制限。(PMC)
Walters GI, et al. Asthma control in severe asthma and occupational exposures to inhalable asthmagens. BMJ Open Respir Res. 2024 (PubMed) 職場 重症喘息患者 (16–64歳就労者) 504名を対象に、職場での吸入性刺激物曝露と喘息コントロール (ACQ7スコア) の関連を調べた。39%が曝露リスクありと推定。曝露とコントロール不良の関連は統計学的に有意ではなかったものの、就労環境が重症患者の管理を複雑化しうる点を指摘。(PubMed)
Mackiewicz P, et al. ‘Stuck in catch-22’: a qualitative study of perceived work ability and decision-making about employment in severe asthma. BMC Pulm Med. 2025 (BioMed Central) 職場 重症喘息患者の就労能力認識について質的調査。慢性症状・生活制限・医療・心理的要因が相互作用し、労働能力に関する葛藤・やむをえず離職・就業継続の難しさを経験しているという記述。(BioMed Central)
Eisner MD, et al. Risk Factors for Work Disability in Severe Adult Asthma. Am J Med. 2006 (American Journal of Medicine) 職場 成人重症喘息 465例を前向きコホート。構造化インタビューによる就労履歴調査にて、重症喘息患者では労働不能 (work disability) を来すリスクがあることを報告。呼吸制限、増悪歴、併存疾患が影響因子。(American Journal of Medicine)
Toyran M, et al. Asthma control affects school absence, achievement and quality of life. (Allergologia et Immunopathologia) 2020 (サイエンスダイレクト) 学校 小児・思春期において、喘息コントロール不良例では学校欠席率が高く、学業成績低下・授業参加困難・友人関係の問題が生じやすいと報告。(サイエンスダイレクト)
Mustafina M, et al. Factors affecting the quality of life of patients with bronchial asthma. WASJ 2025 (Spandidos Publications) 日常生活・学校・仕事 増悪・症状不安定性が、仕事や学校を休む回数増加・日常活動制限に関連。QoL(生活の質)低下が日常生活制限や心理的ストレスを通じて拡大。(Spandidos Publications)
Håkansson KEJ, et al. The impact of biologic therapy on work capacity in severe asthma. (2025) (Taylor & Francis Online) 職場 重症喘息患者における 生物学的治療介入後の就労能力改善 に関する論文。重症喘息患者は長期的慢性疾患ゆえに早期離職リスクが高く、15-25%が労働力から退出する可能性を指摘。(Taylor & Francis Online)


全身ステロイドと合併症発現リスク

参考:横山作成

論文/レビュー 主題/目的 主な知見 引用
Volmer T, Effenberger T, Trautner C, Buhl R. “Consequences of long-term oral corticosteroid therapy and its side-effects in severe asthma in adults: a focused review …” 重症喘息における長期 OCS 使用の合併症をレビュー 感染症、糖尿病、骨粗鬆症、骨折、精神障害、心血管リスク上昇など、多器官にわたる副作用が報告されており、用量依存性にリスクが増加するという傾向あり。 (publications.ersnet.org)  
Sullivan PW et al. “Oral corticosteroid exposure and adverse effects in asthma” 喘息患者における OCS 使用と有害事象の関連を評価 OCS 使用患者は、非使用患者に比して有害事象リスクが高く、入退院・発作率・医療コストも上昇。 (JA Clinical Online)  
Systematic Literature Review of Systemic Corticosteroid Use (ATS review) ステロイド(経口/注射を含む)使用の合併症リスクを体系的にまとめ 短期および長期の副作用リスク(骨・代謝・内分泌・消化器・感染症など)が、累積使用と増量に伴って上昇する傾向あり。 (ATS Journals)  
Casale TB, Corbridge T, Germain G, et al. “Real-world association between systemic corticosteroid exposure and complications in US patients with severe asthma” 米国の保険クレームデータを用いて、SCS 使用と合併症発現率を比較 中用量~高用量 SCS 使用群では、あらゆる合併症の発現オッズ比が 1.30~1.63 と有意上昇。低用量でも一部合併症リスク上昇を認めた。 (BioMed Central)  
Tran TN, et al. “Oral Corticosteroid Treatment Patterns of Patients in the …” 喘息患者における OCS 使用パターンとリスク 骨粗鬆症・骨折、消化器障害、代謝変化などが OCS 使用に関連。高線量使用者でリスク増大。 (サイエンスダイレクト)  
Lai CC, et al. “Complications related to oral corticosteroid use in asthma …” OCS 必要例の合併症リスク 喘息患者で OCS 必要なグループでは、有害事象リスクが明らかに高いとの報告。 (Taylor & Francis Online)  

参考:横山作成

合併症 リスク上昇の傾向・エビデンス 備考(用量依存性、発現時期など)
骨・筋肉系(骨粗鬆症、骨折、筋萎縮) 長期使用で明らかにリスク上昇 用量依存性あり。低用量でもリスクは増えるとの報告あり。 (BioMed Central)
代謝・内分泌(高血糖、糖尿病、脂質異常) OCS により血糖上昇・耐糖能異常が誘導され、糖尿病発症リスクが上昇 用量や累積投与量が大きいほどリスク増。 (publications.ersnet.org)
感染症リスク 免疫抑制作用により、感染症(特に皮膚・呼吸器・真菌・結核等)のリスク上昇 長期・高用量使用では顕著にリスク高まる。 (publications.ersnet.org)
消化器障害 胃潰瘍、消化性潰瘍、消化管出血リスクの上昇 ステロイド+NSAID併用時リスク増。 (BioMed Central)
心血管系 高血圧、動脈硬化、心血管イベントリスク上昇 長期使用で心血管リスクへの悪影響を示唆する報告あり。 (BioMed Central)
精神・神経系 気分変調、うつ、不眠、認知機能影響 高用量/長期でリスクが高まる傾向。 (publications.ersnet.org)
眼科系 白内障、緑内障リスク上昇 ステロイド使用で眼圧上昇や白内障形成が報告。 (publications.ersnet.org)
皮膚・皮下組織 皮膚萎縮、紫斑、創傷治癒遅延 長期使用で皮膚脆弱性増加。 (publications.ersnet.org)
その他(腎・電解質、神経、眼、腫瘍リスク etc.) 多様な合併症が報告 用量・期間依存性の影響が大きい。 (ATS Journals)


・好酸球性重症喘息のフェノタイプの分布
・重症喘息の治療アルゴリズム
・バイオマーカーで分類した成人重症喘息の治療選択
・Treatable traits approach

・鼻疾患は重症喘息患者の49~21%に合併していた(AR 49% 慢性副鼻腔炎46% 鼻茸21%)

参考:横山 作成

出典 対象 副鼻腔疾患/鼻茸合併率 備考
Evidences from the Severe Asthma Network Italy (SANI) registry 重症喘息患者 695例 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 (CRSwNP) の合併率 40.6% 重症喘息と副鼻腔疾患の強い関連性を報告 (PubMed)
“Chronic rhinosinusitis with nasal polyps and asthma” 喘息患者 重症喘息患者では鼻茸を伴う副鼻腔炎 (CRSwNP) の割合は 57.1〜62% と報告 軽症喘息(38〜42.9%)との比較を記載 (サイエンスダイレクト)
“Asthma and Chronic Rhinosinusitis: Diagnosis and Medical …” (MDPI) 喘息患者一般 喘息患者のうち副鼻腔炎 (CRS) の合併率は 22〜45% と推定 鼻茸を伴う副鼻腔炎の頻度も含むという文脈 (MDPI)
“Prevalence of comorbid asthma in patients with chronic rhinosinusitis with nasal polyps” 副鼻腔炎患者 鼻茸を伴う副鼻腔炎 (CRSwNP) 患者の約 59.6% に喘息 この文献は逆方向(CRSwNP 側から喘息併存率)を論じているが、関連性の強さを示す一例 (BioMed Central)


・CRSwNP(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎)は喘息回数、OCS投与日数、長期使用者の割合が有意に高くなる

参考:横山作成

指標 CRSwNP 合併群 非合併群 備考・コメント
年間増悪回数(OCS 必要な増悪) 有意に高い(平均値の上昇) 低め Canonica et al. “Chronic rhinosinusitis with nasal polyps impact in severe asthma” で Table 1 にて報告。(サイエンスダイレクト)
OCS 使用日数(年間) “2 倍” 程度高い 比較群より少ない “Oral CorticoSteroid sparing with biologics in severe asthma (SANI)” にて、「CRSwNP 存在は OCS 使用日数を年あたり約 2 倍」に押し上げる要因との記載あり。(worldallergyorganizationjournal.org)
長期 OCS 使用者割合 より高い傾向 より低 同論文で、CRSwNP 合併例は「OCS 長期使用者」になりやすいと記述。具体的割合は本文中要約で示されるが、Table 1 に詳細記載。(PMC)


・上下気道は機能的および組織学的類似性を有しており好酸球とIL-5は重症喘息や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に関与する
・IL-5と好酸球は好酸球性重症喘息と鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の病態に関与している
・IL-5は2型炎症の中心的な役割を果たすサイトカインであり好酸球性炎症にとどまらず病態生理において広範な役割を担う
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院長 横山 裕

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院長 横山 裕

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