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その他

ワクチンについての講演会に参加

講演会

2025.10.25に東京で行われましたワクチンについての講演会に参加致しました。
講演録をまとめましたので、ご興味がある方はご覧ください。

小児ワクチンと連携した高齢者の肺炎球菌ワクチン戦略 大石 和徳 先生

・5歳未満小児のIPDの罹患率の推移
・2014年~2024年 IPDサーベイランス(n=3944)
・年齢層別の致命率:小児<5yで低く(0.9%)、成人では65歳以上(17%)で高かった
・髄膜炎は年長児(25%)、若年成人(5-14歳)(20%)に多い
・COVIDパンデミック後すべての年齢群で5~6割減少
・血清型別割合:PCV7血清型は6%(小児PCV7の成人への間接効果)
・65歳以上では3, 19Aの割合が高い
・英国の成人肺炎球菌鼻咽頭保菌(Nasal wash法) El Safadi D, et al J Infect Dis 2025
・成人から高頻度・大半が培養陽性
・乳幼児と若年成人の保菌の血清型分布は同様
・小児と成人の保菌比:相関
・英国成人では血清型3,8,37が多い
・PPSV23:都道府県別平均接種率 個別通知実施(87.4%) 自己負担中央値3000円
・個別通知を行うと行わない群と比較して12%高い、1000円上がると2.6%低い
基礎疾患を有する患者の肺炎球菌ワクチン接種率 Kim Y et al BMJ Open 2025
・基礎疾患のある若年層では接種率が極めて低い
・肺炎球菌ワクチン接種状況と医師の推奨 若年層、高齢層のいずれにおいても医師の推奨が重要

出典: Kim Y, BMJ Open. 2025;15(8):e098133. PMID: 40780725

基礎疾患あり成人における肺炎球菌ワクチン接種率(日本)
区分 接種率(%) 備考
全成人(20歳以上) 32.4 全体平均
65歳以上 48.5 公費接種対象中心
基礎疾患あり成人(全年齢) 27.8 基礎疾患保有者の接種済み割合
─ 慢性呼吸器疾患(喘息・COPD等) 36.2 疾患群の中で最も高い
─ 糖尿病 31.6 外来受診多いが接種率は中位
─ 慢性心疾患 26.9  
─ 慢性腎疾患 24.5  
─ 肝疾患 22.7 最も低い群
複数疾患併存者 41.3 併存数が増えるほど上昇
医療者からの勧奨あり 62.8 勧奨なし(14.9%)の約4倍
 
未接種理由(複数回答)
理由 割合(%) コメント
接種の必要性を知らなかった 41.5 情報不足が最大要因
医師から勧められなかった 27.9 診療現場での説明不足
副反応が心配 12.6 安全性への懸念
費用が高い 9.3 公費対象外で顕在化
接種機会がなかった/忙しい 8.7 アクセス・機会の問題
注)比率は回答者のうち当該理由を選択した割合。複数回答可。

 

新たな肺炎球菌ワクチン キャップバックス 中村 茂樹 先生

・肺炎球菌は莢膜で覆われ、好中球貪食殺菌から逃れる
・致命率:肺炎5-7%, 菌血症:20%, 髄膜炎:22%
・IPD:死亡22.1%, 明らかな後遺症8.7%
・インフルエンザウイルス→肺炎球菌肺炎 J infect Chemother27(2021)480-485
・インフルエンザ感染後の二次性肺炎球菌肺炎の発症メカニズム
・肺炎球菌はシアル酸を取り込んで莢膜を作成している?(インフルエンザ感染後シアル酸↑)
・肺炎球菌性肺炎の死亡率は20年間変わっていない Cilloniz C et al Plos One 2018 13 7
・肺炎球菌のCapsular switchingと耐性獲得 J Infect Chemother 27 2021 211-217
・薬剤耐性IPVの予後:血清6A、不適切治療が関係
・血清型35Bは薬剤耐性率高い Miyazaki H Epidemiol Infect 152 
・PCV21ではPCV7カバー血清型が入っていない(小児ワクチンによる間接効果で成人IPVが減ったため)
・STRIDE-3試験(PCV20 vs PCV21)

出典: STRIDE-3(NCT05425732)成人未接種者を対象とした PCV21(V116)対 PCV20 比較試験・公表結果。 PubMed(概要): PMID 38964361 / ACIP ETR(成人PCV21): CDC

STRIDE-3 試験:概要
項目 内容
デザイン 成人(18歳以上)ワクチン未接種者を対象とした、PCV21(V116)対 PCV20 の無作為化・二重盲検・アクティブコンパレータ試験
主目的 免疫原性:OPA 幾何平均価(GMT)と 4倍上昇率(≥4-fold rise)の比較(共通10血清型での非劣性、PCV21のみ含有の11血清型での優越性)
主要評価時点 接種後 30 日
安全性 局所・全身反応、有害事象、重篤な有害事象(SAE)
* 公式発表・公表抄録ベースの要約。臨床発症抑制エンドポイントは本試験の主要評価ではありません。

免疫原性の主な結果(PCV21 vs PCV20)
比較領域 結果(要点) 補足
共通10血清型 PCV21はPCV20に対して非劣性を達成 全ての共通血清型で OPA GMT 比の下限95%CIが非劣性閾値を上回る
PCV21 のみ含有の11血清型 11中10血清型で優越性(OPA GMT比および4倍上昇率) 例外:15Cは優越性基準を満たさず
年齢層別 50歳以上コホートで上記の非劣性・優越性を確認 18–49歳コホートでもPCV21の免疫応答は非劣性
* PCV21の追加血清型には成人での負担が大きい型(例:35B など)が含まれる。15Cのみ優越性に未到達。

安全性(要約)
指標 PCV21 PCV20 コメント
局所反応・全身反応 概ね軽度〜中等度 概ね軽度〜中等度 両群で類似
重篤な有害事象(SAE) ワクチン関連の重大事象は報告なし 同様 安全性プロファイルは同等
* 詳細頻度は公表抄録・規制当局資料の範囲で一致。個々の百分率は正式論文の表に依拠。

高齢者を肺炎球菌感染症から守る~65歳以上の高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方 Up to date 永井 英明 先生

・肺炎球菌の疾病負担
・肺炎は死因第5位、死亡者の96.3%は65歳以上の高齢者であり、肺炎球菌が最多である
・加齢による免疫老化:細胞性免疫
・加齢によりワクチンの有効性が低下する
・多くの小児は肺炎球菌を鼻咽頭に保菌し、しばしば中耳炎や肺炎を発症、市中における同菌の水平伝搬に重要な役割を果たす
・IPD:髄膜炎、菌血症含む
・併存疾患を有する成人におけるIPD罹患率 Imai K et al BMJ open2018 8 3 e018553
・併存疾患によっては65歳未満でもIPD
・併存疾患によっては肺炎球菌肺炎の罹患率が高まる
Pelton SI open forum Infec  dis 2015 2 1
・PCV21 78% PCV24 51%
・各ワクチンの肺炎球菌肺炎の血清型カバー率 Maeda H et al Hum Vaccin Immunother 2025 21(1)2518847
・STRIDE-6試験:既存ワクチン(PPSV23、PCV13、PCV15など)接種済みの成人を複数コホートに割り付け、PCV21と比較対照ワクチン(PCV15あるいはPPSV23)との免疫原性・安全性を評価。

STRIDE-6 試験:概要
項目 内容
目的 既に肺炎球菌ワクチン接種歴のある成人で、PCV21(V116)の免疫原性・安全性を評価
対象 50歳以上の成人(多国籍・多施設)/既接種歴あり(PCV13、PPSV23 など)
デザイン 無作為化・アクティブ対照・第3相。評価:OPA GMT、IgG GMC、4倍上昇率、安全性
評価時点 接種前、接種後30日
* 本試験は免疫原性・安全性評価が主。臨床発症抑制(有効性)を直接評価する設計ではありません。

コホート構成(例示;論文公表内容の要点)
コホート 既接種歴 比較 主な評価
コホート1 PPSV23 接種歴あり PCV21 vs PCV15 共通血清型での非劣性、PCV21固有血清型での上乗せ応答
コホート2 PCV13 接種歴あり PCV21 vs PPSV23 共通血清型で同等性、PCV21固有血清型での優位な免疫応答
コホート3 複数ワクチン歴(例:PCV13+PPSV23) PCV21 単群評価 など 全21血清型に対する応答の確認
* 具体の割付やサンプルサイズは公表論文の本文・補足表をご参照ください。

免疫原性:主要所見
比較領域 結果(サマリー) 補足
既接種者における共通血清型 PCV21は比較ワクチンに対して非劣性/同等のOPA応答 PCV15やPPSV23と比較しても、既接種歴の影響下で十分な応答を維持
PCV21固有血清型(成人負担型含む) PCV21で広範な追加血清型に対し高い応答 成人で問題となる 22F, 33F, 35B, 23A/23B, 24F, 31, 15A/15C, 16F などをカバー
IgG応答・4倍上昇率 既接種歴ありでも良好な増加を確認 各血清型の詳細値は本文・補足データ参照
* 代表所見の要約。血清型別のOPA GMT比・4倍上昇率は出典論文の表を参照してください。

安全性(要約)
指標 PCV21(V116) 比較ワクチン コメント
局所反応・全身反応 軽度〜中等度が中心 同程度 忍容性は概ね良好
重篤な有害事象(SAE) ワクチン関連の重大事象なし 同様 安全性プロファイルは同等
* 頻度の詳細は論文本文の安全性表を参照。


・PCV接種後のPCV20/21の再接種は、安全性の観点から可能である
・肺炎球菌ワクチンの接種率は40%程度にとどまる
・医療者側の積極的な推奨が必要

ハイリスク者を肺炎球菌感染症から守る~6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方Up to date~ 西 順一郎 先生

・IPDの年齢分布:5~64歳は23%
・成人IPD罹患率の変化
・PPSV23のIPD予防効果 42.2%, 20-64歳 59% 
・年齢別肺炎球菌罹患率 Morimoto K Plos one 10 3 e 0122247 2015
・基礎疾患:慢性心疾患、慢性肺疾患、糖尿病、慢性肝疾患、悪性腫瘍は成人でもリスク↑
・15歳以上のIPD患者の年齢層別基礎疾患 Tamura K Vaccine 2022 40 24 3338-3344
・肺炎:慢性呼吸器疾患、喘息、悪性腫瘍、糖尿病
・小児のIPDの年次推移 Takeuchi N vaccine 2025 54 127138
・5~14歳で髄膜炎多い
・15~64歳:成人IPD由来肺炎球菌の血清型の変化:15~64歳ではNVT増加が見られていなかった(2019年時点)
・STRIDE-8

出典: STRIDE-8 試験(NCT05696080)
Merck & Co. CAPVAXIVE™(21価肺炎球菌結合ワクチン; PCV21, V116)公表データ(2024年)
参考:Merck Press Release

STRIDE-8 試験:概要
項目 内容
目的 基礎疾患を有する成人(18–64歳)におけるPCV21の免疫原性と安全性をPCV15+PPSV23と比較評価
デザイン 第3相、多施設、無作為化、アクティブ対照試験
対象 肺炎球菌ワクチン未接種の成人(18–64歳)で糖尿病・心疾患・慢性肺疾患・腎疾患などの基礎疾患を有する群
比較群 試験群:PCV21(単回接種)+プラセボ(8週後)
対照群:PCV15(初回)+ PPSV23(8週後)
評価時点 接種前(Day 1)および接種後30日(Day 30)
主要評価項目 血清型別 OPA 幾何平均価(GMT)および IgG 幾何平均濃度(GMC)による免疫原性比較
副次評価項目 安全性(局所反応、全身反応、重篤な有害事象)

主要結果の要約
比較領域 結果(要約) 補足
共通血清型(13型) PCV21はPCV15+PPSV23と同等の免疫応答(非劣性) 共通13型のOPA GMT比で非劣性基準を満たす
PCV21固有血清型(8型) PCV21が優れた免疫応答を示す 15A, 15C, 16F, 23A, 23B, 24F, 31, 35Bで明確な優越性
基礎疾患群(糖尿病・心疾患など) 全疾患群で一貫した免疫応答を確認 既報のPCV20に対しても広い血清型カバー範囲
安全性 良好な忍容性(重篤なワクチン関連事象なし) 注射部位痛・発熱・倦怠感などは軽度・一過性でPCV15群と同程度
* 各血清型別OPA GMT比・4倍上昇率の詳細値は論文または規制当局報告書を参照。

総括
評価 内容
免疫原性 PCV21は既存のPCV15+PPSV23と比較して同等以上の免疫応答を示し、成人リスク群における広範なカバーを実現。
安全性 安全性プロファイルは他の肺炎球菌ワクチンと同様。重篤な有害事象は報告されず。
臨床的意義 1回接種で広範な血清型をカバーできる成人用PCVとして、PCV15+PPSV23併用スケジュールの代替候補。


・慢性心不全患者:急性感症候群累積発症率:PPSV23接種群ではHR 0.46 Eurich DT Heart 98(14) 1072-1077 2012
・肺炎球菌ワクチン接種による心保護作用
・慢性腎臓病:血液透析患者:PPSV23 全死亡(HR0.62) 心血管イベント(HR 0.36)
・無脾症:PPSV23 保険適応

地域社会におけるワクチンのLast one mile~安心して接種できる仕組みを~
武藤 義和 先生

・地域を巻き込んだワクチン接種勧奨の取り組みについて

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院長 横山 裕

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック

院長 横山 裕

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