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その他

肺炎と咳についての講演会に参加(演者)

講演会


2025年11月20日に東京で行われました肺炎と咳に関する講演会に演者(第二席)として参加致しました。
以下、聴講録となりますのでご興味がある方はごらんください。

【1】新しい肺炎診療ガイドラインにみる新しい抗菌薬治療の考え方 山口敏行 先生

(1)抗菌薬の使い分け
・薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 日本は耐性菌少ない
・偏らない抗菌薬の選択「抗菌薬使い分け」(Antibiotic heterogeneity)
・AUD:抗菌薬使用密度
・サンフォードはアメリカの医療事情に沿ったもの
・JAID/JSC感染症ガイド(本邦)
・AWaRe分類 
・Antibogram 80%以上を選ぶ
(2)キノロン系薬の使い分け
・合成抗菌薬
・STFXはGNRに強い
(3)成人肺炎診療ガイドライン2024
・米国では医療ケア関連肺炎の概念がなくなった(本邦ではある)
・網羅的細菌叢解析では口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が多い(第一優先菌種)
・CAPのエンピリック治療 レスピラトリーキノロン出てくる
・現在、レスピラトリーキノロンは6種類 GRNX, LSFXおすすめ
・結核の問題→トスフロが安心
・NHCAP/HAPの耐性菌リスク因子
・肺炎球菌、肺炎桿菌 → ストレプトコッカス、肺炎球菌、プレボテラ、(細菌叢解析では)
・HAP 口腔内連鎖球菌、コリネバクテリウム(細菌叢解析では)

【2】止まらない咳をどう断ち切るか?
~咳嗽治療の効果的な診断ステップと実践的アプローチ~ 横山 裕


1.長引く咳診療はなぜ難しいのか?

咳嗽は、プライマリケア外来でもっとも頻度の高い主訴のひとつである。一方で、

  • 感冒後咳嗽
  • 逆流性食道炎(GERD)
  • アトピー咳嗽、喉頭アレルギー
  • 咳喘息、気管支喘息
  • 後鼻漏、慢性副鼻腔炎、副鼻腔気管支症候群
  • 肺炎、マイコプラズマ肺炎、百日咳
  • びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症
  • 間質性肺炎、肺癌、肺結核、非結核性抗酸菌症
  • 心不全、COPD、薬剤性(ACE阻害薬など)、心因性咳嗽

といったように、頻度の高・低も含めて鑑別疾患が非常に多岐にわたる(文献2)。

開業医・プライマリケアの現場では、

  • 限られた診察時間と検査資源の中で
  • 多彩な背景疾患を想定しながら
  • 患者のQOLを損なわないよう咳をコントロールする

という、難易度の高い舵取りが求められる。


2.咳の神経回路と「咳のメカニズム」

咳は「刺激 → 受容体 → 神経 → 中枢 → 呼吸筋」という反射弓で成り立つ。末梢の咳受容体は、

  • 咽頭・喉頭
  • 気管・気管支
  • 胸膜
  • 胃・食道

などに広く分布し、迷走神経を介して延髄の咳中枢へ入力される(文献1)。その後、肋間筋・横隔膜へ指令が伝達され、咳反射として出力される。

末梢の求心路には、伝導速度の速い有髄線維(Aδ)と、遅い無髄線維(C線維)が存在し、

  • Aδ線維:機械刺激などに反応しやすい
  • C線維:カプサイシンや胃酸など化学的刺激に反応しやすい

といった機能的な違いが知られている(文献3,4)。

この「臓器横断的な迷走神経ネットワーク」を考えると、ひとりの患者で複数臓器由来の咳の原因が同時多発していても不思議ではない。


3.咳の原因は“ひとつ”とは限らない ― 複数病因とTreatable traits

Kanemitsuらは、3週間以上続く遷延性・慢性咳嗽患者を対象に原因疾患を詳細に検討している(文献5)。その結果、

  • 複数原因:38.1%
  • 咳喘息:34.3%
  • GERD:11.9%
  • 上気道由来:7.1%
  • 感冒後咳嗽:4.2%
  • アトピー咳嗽:2.6%

と、実に4割近くで「複数の原因」が関与していた。複数原因群の内訳では、

  • 咳喘息+GERD:68.1%
  • GERD+その他:14.3%
  • 咳喘息+その他:10.9%

と、特に「咳喘息」と「GERD」が“二大コンビ”として浮かび上がっている。

このように、

  • 水漏れ(咳)があるが、破損箇所(原疾患)が1か所とは限らない
  • 1つの穴をふさいでも、他の穴から水が漏れていれば咳は止まらない

という状況をイメージすると理解しやすい。

近年、複雑な呼吸器疾患に対し「Treatable traits(治療可能な形質)」という考え方が提唱されている(文献6)。これは、

  • 疾患名ベースではなく、患者ごとの“修正可能な形質”に着目し
  • それぞれに対して介入することでアウトカムを改善していく

という、precision medicine(個別化医療)の実践的な枠組みである。長引く咳でも、

  • 気道炎症(好酸球性・非好酸球性)
  • 胃酸逆流・非酸逆流
  • 後鼻漏・上気道炎症
  • 咳感受性亢進(TRPV1など)

といった「Treatable traits」を同定し、同時並行的に治療していくことが重要である。


4.問診が“8割”を占める ― 咳診療の症候学

咳嗽診療では、「詳細な問診のみでおよそ8割は原因に到達できる」とされる(文献2,7,8)。各種検査は、

  • 残り2割の鑑別のため
  • 診断の裏付けのため

に位置づけられる。

長引く咳の問診では、以下のようなポイントを系統的に確認する。

  • 咳が長引いて困った経験の有無(過去エピソード)
  • 過去に吸入薬・気管支拡張薬で改善したことがあるか(喘息疑い)
  • 今回のきっかけが「かぜ症状」かどうか(感染後咳嗽)
  • 咳のピークはすでに過ぎているか(ピークアウトしていない場合は別病態を考慮)
  • 咳が悪化する時間帯(起床時・日中・就寝前・夜間覚醒など)
  • 咳が出やすい状況(会話・電話・会議・緊張場面など)
  • 胸やけ・もたれの有無、胃カメラ歴(GERD・NERD)
  • 喉のイガイガ・ムズムズ・違和感(喉頭アレルギー・アトピー咳嗽)
  • 鼻がのどに垂れる感じ、鼻閉・くしゃみ(後鼻漏・アレルギー性鼻炎)
  • 寒暖差・タバコ・線香・花火などで咳が出やすいか(気道過敏)
  • 現在・過去の喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒュー)の有無
  • 痰の有無と性状(粘稠・膿性・血痰など)

これらを“症候学の枠組み”で整理しながらカルテに落とし込むことで、自然と鑑別疾患が絞り込まれていく。


5.咳の時間帯・痰の性状から考える鑑別

咳が出やすい時間帯や痰の性状は、原因疾患を推定するうえで有用な情報である。

  • 夜間・早朝に悪化し、夜間覚醒を伴いやすい:咳喘息・喘息
  • 就寝後~明け方にかけて増悪:逆流性食道炎、後鼻漏
  • 1日中持続し、痰を伴うことが多い:肺炎、百日咳、マイコプラズマ感染など
  • 粘調な痰・膿性痰が目立つ:慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、COPDなど

痰の性状や量、咳のリズムと時間帯を問診で丁寧に聴き取ることが、最初の分岐点となる。


6.感染後咳嗽 ― どこまで様子を見るか?

「風邪のあとに咳だけ残る」という感染後咳嗽は、3~8週続く遷延性咳嗽の代表的な原因である(文献7,8)。

ウイルス感染により気道上皮が傷害されると、修復されるまでの2~3週間は咳が持続し、カプサイシン咳感受性が一時的に亢進することが報告されている。一方、多くの症例では8週間以上続く“慢性咳嗽”の原因とはならず、自然軽快が期待できる。

臨床上のポイントは、

  • 2週間以内に咳のピークアウトが見られるか
  • 時間帯や誘因の偏りがないか(喘息・GERDなどの併存を疑う所見)

といった経過の評価である。咳喘息などが合併している場合、ピークアウトせず長期化することがあり注意を要する。


7.GERD(逆流性食道炎)と咳 ― “胸やけがない咳”をどう拾うか

本邦でもGERDの有病率は上昇しており、長引く咳の原因としても無視できない存在となっている(文献9)。

GERDは「胃内容物の逆流により、患者が不快な症状を自覚している状態」と定義される。すなわち、内視鏡所見の有無ではなく「患者側の自覚症状」が疾患の中心である。内視鏡で炎症が見られないNERD(非びらん性逆流症)でも、咳の原因となり得る(文献10,11)。

GERD関連咳嗽の病態としては、

  • 下部食道での酸逆流 → 迷走神経反射を介した咳中枢刺激(reflex機序)
  • 非酸・弱酸の高位逆流(NERD・咽喉頭逆流症:LPRD)

などが挙げられる(文献3,10,12)。下部食道レベルの酸刺激が主病態であるため、典型的な胸やけや呑酸を自覚しない“silent GERD咳”も少なくない。

診療上は、

  • FSSG(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)による症状スコア評価(文献11,12)
  • PPI(あるいはP-CAB)治療に対する反応性
  • 就寝前3時間以内の飲食習慣、肥満・喫煙などの生活因子

を総合して判断する。特に「夕食から就寝まで3時間未満」はGERDの強い危険因子であり、生活指導の重要なターゲットとなる(文献13)。


8.後鼻漏・上気道咳症候群(UACS)

後鼻漏咳症候群(PNDS)/上気道咳症候群(UACS)は、

  • 従来型副鼻腔炎
  • 好酸球性副鼻腔炎
  • アレルギー性鼻炎
  • 慢性鼻咽頭炎

などを背景に、鼻汁が下咽頭へ流れ込むことにより咳を引き起こす病態である(文献2)。

重要な点は、

  • 患者自身が「鼻がのどに垂れる感じ」を自覚していないことが20%程度ある
  • 逆に後鼻漏があっても咳を訴えない症例も存在する

というギャップである(文献14)。咽頭後壁の“reddish curtain sign”などは、内科医でも喉頭ファイバーや咽頭観察で確認しうる有用な所見とされる(文献15)。

アレルギー性鼻炎は、気道過敏性を亢進させ、喘息・咳嗽の増悪因子としても重要である(文献16)。気道を「一つの連続した臓器」として、鼻から気管支までトータルに評価する視点が求められる。


9.喉頭アレルギー・アトピー咳嗽

喉頭アレルギーは、吸入抗原により喉頭粘膜に生じるⅠ型アレルギー炎症であり、主症状は「咽喉頭異常感」と「慢性乾性咳嗽」である。治療は抗ヒスタミン薬が第一選択であり、効果不十分な場合には吸入ステロイドを追加する(文献2)。

アトピー咳嗽は、中枢気道の好酸球性炎症を背景に咳受容体感受性の亢進を生じる非喘息性好酸球性気道炎症である。特徴として、

  • 喉のイガイガを伴う持続性の乾性咳嗽
  • アトピー素因を有することが多い
  • カプサイシン咳感受性は亢進しているが、メサコリンによる咳反応は正常
  • FeNOは正常範囲であることが多い
  • 気管支拡張薬が無効である

などが挙げられる(文献2)。

日常診療レベルでは、

  • 抗ヒスタミン薬が奏功しやすい
  • 吸入ステロイドが一部の症例で効果を示す
  • 気管支拡張薬は基本的に効果が乏しい

という点で、喉頭アレルギーとアトピー咳嗽は「同じTreatable trait」としてまとめて考えるほうが、実践上はわかりやすい。


10.咳喘息と喘息 ― ICS継続の“良い理由・悪い理由”

咳喘息は、「喘鳴や呼吸困難を伴わない慢性咳嗽のみを症状とし、気道過敏性軽度亢進、気管支拡張薬が有効」という喘息の亜型として定義される(文献2)。

実臨床で「咳喘息」と呼ばれている症例には、

  • 気管支拡張薬(SABA/LABA)への反応性が明確な“狭義の咳喘息”
  • ICS/LABAに反応するが、気管支拡張薬への直接的な反応がはっきりしない“広義の咳喘息”

が混在していると考えられる。

ICS継続の「良い根拠」となりうるのは、例えば以下のようなケースである。

  • FeNO高値、末梢血好酸球高値
  • 好酸球性副鼻腔炎(ECRS)の合併
  • アトピー素因が強い
  • PEF日内変動、呼吸機能検査でボーダーラインの閉塞所見がある

一方、「ICS/LABAに咳が反応した」という事実だけを根拠に、“何となく漫然と”ICSを続けることは避けるべきである。その背後に、喉頭アレルギーやアトピー咳嗽など別のTreatable traitが隠れている可能性もある。


11.LAMA(チオトロピウムなど)の抗咳作用 ― TRPV1を介した機序

チオトロピウムは、喘息・COPDで広く用いられている長時間作用性抗コリン薬であるが、近年「咳の改善」にも寄与することが報告されている。J Allergy Clin Immunolの動物実験モデルでは、チオトロピウムが(抗コリン作用とは別に)神経細胞のTRPV1を阻害し、カプサイシン誘発咳反射を抑制することが示されている(文献17,18,19)。

難治性咳嗽を伴う喘息患者では、チオトロピウムによりカプサイシン感受性が改善し、咳症状が軽減したとの報告もある(文献17)。喘息コントロール不良例におけるLAMA追加(SITT:ICS/LABA/LAMA)は、気管支拡張だけでなく“抗咳作用”という側面からも注目される。


12.最新ガイドラインに基づく長引く咳のフローチャート

「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019・2025第2版」では、長引く咳に対する巻頭フローチャートが提示されている(文献2,20)。大まかな流れは、

  • ①単一もしくは主要な原因疾患を想定しながら鑑別を進める(複数原因の可能性を常に念頭に置く)
  • ②感染症・悪性腫瘍・薬剤性・心不全など“見逃してはいけない疾患”を除外する
  • ③喀痰の有無や画像所見から、気道感染・びまん性肺疾患・副鼻腔炎などを評価する
  • ④GERD、後鼻漏、咳喘息/喘息、アトピー咳嗽/喉頭アレルギーなど主な原因に対する「診断的治療」を行う
  • ⑤効果判定期間を守りつつ、反応が乏しければ治療方針の再検討・専門医紹介を考慮する

ガイドラインのフローチャートはあくまで“道しるべ”であり、現場では患者背景やQOL、合併症を考慮した柔軟な運用が必要である。


13.難治性咳嗽へのアプローチ ― Treatable traitsを並べて考える

ガイドラインに沿って主要な原因に対する治療を行ってもなお咳が続く場合、「難治性慢性咳嗽(RCC/UCC)」としてのアプローチが必要となる。

本講演で示した“長引く咳患者に対するアプローチ”では、

  • 喘息・咳喘息:ICS/LABA、必要に応じてLAMA、バイオ製剤やOCS
  • アトピー咳嗽/喉頭アレルギー:抗ヒスタミン薬、吸入ステロイド、場合によりOCS
  • GERD・LPRD:PPI/P-CAB、高用量投与、消化管運動賦活薬、生活指導、手術(噴門形成術)
  • 後鼻漏・副鼻腔炎:マクロライド長期投与、点鼻ステロイド、手術、SLIT、鼻うがい
  • 好中球性気道炎症:マクロライド療法
  • 咳感受性亢進:新規P2X3アンタゴニスト(リフヌア等)が選択肢となる場合がある

といった「Treatable traitsごとの治療メニュー」を並べて検討する。

重要なのは、

  • “ひとつの病名を決めること”よりも、“今この患者にとって修正可能な要素を見つけること”
  • ひとつずつ順番に治療していくのではなく、必要に応じて同時並行で介入すること

である。こうした視点が、長引く咳診療を“行き詰まり”から“構造的アプローチ”へと変えてくれる。


14.まとめ

  • 長引く咳の原因は多岐にわたり、4割近くで「複数の原因」が併存している。
  • 咳の神経回路は臓器横断的な迷走神経ネットワークであり、GERDや後鼻漏など遠隔臓器も咳に関与する。
  • 問診が診断の“8割”を占める。時間帯・誘因・痰の性状・既往歴などを症候学的に整理することが重要である。
  • GERD、後鼻漏、喉頭アレルギー/アトピー咳嗽、咳喘息/喘息は、互いに重なり合うTreatable traitsとして捉える必要がある。
  • LAMA(チオトロピウム)はTRPV1を介した抗咳作用も有し、難治性咳嗽を伴う喘息で有用な場面が存在する。
  • 最新ガイドライン(咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019・2025)のフローチャートを参考にしつつ、患者ごとの個別化医療(precision medicine)をめざすことが重要である。

止まらない咳に悩む患者に対して、ひとつでも多くの「治療可能な形質(Treatable traits)」を見つけ、丁寧に介入していくことが、臨床医に求められている役割である。


【スライド別ポイントまとめ】

スライド1~2:タイトル・COI・Agenda

  • 演題:止まらない咳をどう断ち切るか?~咳嗽治療の効果的な診断ステップと実践的アプローチ~
  • COI:杏林製薬株式会社との関係開示
  • Agenda:長引く咳診療の難しさ、Treatable traitsとprecision medicine、問診、各論(GERD・後鼻漏・アトピー咳嗽・喉頭アレルギー・咳喘息・喘息)、難治性咳嗽の実際

スライド3~4:長引く咳診療が難しい理由・咳の神経回路

  • 鑑別疾患が非常に多い(感冒後咳嗽、GERD、アトピー咳嗽、喉頭アレルギー、咳喘息、喘息、肺炎、肺癌など)
  • プライマリケアでの受診頻度が高く、時間・検査資源が限られる
  • 咳受容体は咽頭・喉頭・気管・気管支・胸膜・胃食道などに分布し、迷走神経を介して咳中枢へ入力される

スライド5~6:咳のメカニズムと治療ターゲット

  • Aδ線維とC線維の役割の違い(機械刺激 vs 化学刺激)
  • TRPV1などの受容体が咳感受性亢進に関与する
  • 咳治療では、末梢受容体・求心路・中枢・遠心路のどこをターゲットにするかを意識する必要がある

スライド7~9:複数原因としての長引く咳・Treatable traits

  • Kanemitsuらのデータ:複数原因が約4割、咳喘息・GERDが中心的役割を果たす
  • 水漏れの比喩:原疾患が複数あると、一つだけ直しても咳は止まらない
  • Treatable traitsとprecision medicineの概念の導入

スライド10~14:多岐にわたる鑑別疾患と問診の重要性

  • 感冒後咳嗽、GERD、アトピー咳嗽、喉頭アレルギー、咳喘息・喘息、後鼻漏、肺炎、慢性副鼻腔炎などのリストアップ
  • 問診の具体例(咳のきっかけ、時間帯、誘因、胸やけ、喉の違和感、鼻症状、アレルギー歴、喘鳴歴など)
  • 症候学的アプローチとカルテ上の整理の仕方

スライド15~17:咳の時間帯・経過・痰の性状からの鑑別

  • 急性咳嗽(~3週)、遷延性咳嗽(3~8週)、慢性咳嗽(8週~)の区分
  • 夜間覚醒と喘息・咳喘息、後鼻漏・GERDとの時間帯の特徴
  • 痰の有無・性状からみた鑑別のポイント

スライド18~20:感染後咳嗽

  • 上気道感染後に3~8週続く遷延性咳嗽の代表疾患であること
  • 多くは8週以内に自然軽快し、ピークアウトの有無が重要であること
  • カプサイシン咳感受性の一時的亢進、気道分泌・繊毛クリアランス障害の関与

スライド21~30:GERDと咳

  • GERDとNERDの臨床像・病態の違い
  • 食道インピーダンス・pH検査、FSSG問診票の有用性
  • 低位逆流→迷走神経反射、高位逆流(LPRD)など複数の機序
  • 就寝前3時間以内の食事がGERDの危険因子であること

スライド31~38:LPRD・GERD関連咳嗽のまとめ

  • 咽喉頭は胃酸に脆弱であり、少量の逆流でも咳や嗄声の原因となり得る
  • 多くの症例では下部食道レベルの逆流が中心で、胸やけを伴わないことも多い
  • PPI不応例では運動賦活薬や生活指導、外科治療を検討する必要がある

スライド39~48:後鼻漏・UACS

  • PNDS/UACSの定義と原因疾患(副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎など)
  • 後鼻漏の自覚と咳の有無が一致しないことへの注意点
  • “reddish curtain sign”など咽頭所見の重要性

スライド49~60:アレルギー性鼻炎と咳・気道過敏性

  • 鼻炎罹患期間と気道過敏性(PC20)の関係
  • Upper airway diseaseがLower airwayを増悪させる“one airway”の概念

スライド61~75:喉頭アレルギー・アトピー咳嗽

  • 喉頭アレルギーの定義と主症状(咽喉頭異常感・乾性咳嗽)
  • アトピー咳嗽の病態(非喘息性好酸球性気道炎症、FeNO正常など)
  • 抗ヒスタミン薬・ICSの位置づけ、気管支拡張薬が無効である点

スライド76~90:咳喘息・喘息コントロール・SITT

  • 咳喘息の定義、狭義と広義の概念
  • 日本における喘息コントロール率とAssessment GAP
  • ICS/LABA/LAMA(SITT)の役割とLAMAの抗咳作用

スライド91~100:TRPV1とチオトロピウムの抗咳作用

  • TRPV1受容体とC線維、カプサイシン咳受容体
  • チオトロピウムがTRPV1を阻害し、咳反射を抑制するメカニズム

スライド101以降:ガイドライン2025・難治性咳嗽へのアプローチ

  • 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025第2版フローチャート②
  • Treatable traitsごとの治療選択肢(ICS/LABA、LAMA、PPI、抗ヒスタミン、マクロライド、手術、バイオ製剤、P2X3阻害薬など)
  • 見逃してはならない疾患群(結核・肺癌・間質性肺炎など)への注意喚起

【参考文献(講演スライドより抜粋)

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  21. 日薬理誌(Folia Pharmacol Jpn). 2008;131:429–433.
  22. 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025. 日本呼吸器学会.

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院長 横山 裕

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