喘息と空気清浄機|症状を悪化させないための選び方と注意点
喘息と空気清浄機|症状を悪化させないための選び方と注意点

「喘息があるけれど、空気清浄機は使ったほうがいいのでしょうか?」外来診療の現場で、患者さんからよくいただく質問です。最近は高性能な空気清浄機が数多く販売され、「空気清浄機を使えば喘息がよくなるのでは?」と期待される方も少なくありません。
しかし、喘息診療の立場から見ると、空気清浄機は治療の代わりになるものではありません。一方で、正しく選び、正しく使うことで、日常生活の中で喘息を悪化させにくくする「環境対策」としては有効です。
この記事では、喘息の方が空気清浄機を選ぶ際に知っておいてほしいポイントを、呼吸器内科医の視点で詳しく解説します。
1. 喘息と室内空気の深い関係
喘息は、気道に慢性的な炎症が起こり、わずかな刺激でも咳や息苦しさが出やすくなる病気です。その刺激の多くは、実は室内の空気中に存在しています。
代表的なものとしては、
- ハウスダスト
- ダニやその死骸・フン
- 花粉
- ペットの毛やフケ
- カビ
- PM2.5などの微粒子
などが挙げられます。
これらは目に見えにくく、こまめに掃除をしていても完全に取り除くことは難しいのが現実です。そのため、空気中のアレルゲンや微粒子を減らす補助的な手段として、空気清浄機が注目されています。
2. 空気清浄機は喘息治療の代わりになる?
結論から言うと、空気清浄機だけで喘息が治ることはありません。
喘息治療の基本は、
-
吸入ステロイド薬を中心とした薬物治療
-
定期的な通院による症状や呼吸状態の評価
です。
これらは、喘息による気道の炎症を抑え、発作を予防するために欠かせません。
一方で、空気清浄機には、
-
室内のアレルゲンや微粒子を減らす
-
夜間や在宅時間に受ける気道への刺激を減らす
といった効果が期待できる場合があります。そのため、空気清浄機は喘息を悪化させにくい環境を整えるための一つの手段として、役立つ可能性があります。ただし、あくまで適切な薬物治療を継続したうえで行う「環境対策の補助」と考えることが大切です。
3. 喘息の方が空気清浄機を選ぶときの重要ポイント

HEPAフィルター搭載を選ぶ
喘息の方が空気清浄機を選ぶ際、最も重要なのがHEPAフィルターが搭載されているかどうかです。
HEPAフィルターは、花粉やハウスダスト、PM2.5などの微粒子を高い精度で捕集できます。
「HEPA相当」ではなく、明確にHEPAフィルターと記載されているものを選びましょう。
部屋の広さに合った性能を選ぶ
空気清浄機には、「適用床面積」や「清浄能力」が設定されています。部屋の広さに対して能力が不足していると、十分な効果が得られません。
- 寝室
- リビング
- 子ども部屋
など、主に過ごす部屋の広さを基準に選ぶことが大切です。
メンテナンスのしやすさも重要
フィルターの交換や掃除がしにくいと、結局使わなくなってしまいます。
また、フィルターが汚れたままだと、空気清浄機自体が不衛生になることもあります。
- フィルター交換の頻度
- 交換費用
- 前面フィルターの掃除のしやすさ
も事前に確認しておきましょう。
4. 空気清浄機の効果を高める使い方

空気清浄機は、置くだけで十分な効果が得られるわけではありません。使い方を工夫することで、効果をより実感しやすくなります。
まず基本となるのは、窓やドアを閉めた状態で使用することです。
外気が頻繁に入る環境では、せっかく浄化した空気が入れ替わってしまい、清浄効果が弱まります。
次に、掃除や布団の上げ下ろしをした直後です。
このタイミングは、ほこりやアレルゲンが空気中に舞いやすいため、一時的に強運転に切り替えると効果的です。
設置場所も重要です。リビング全体を1台でカバーしようとするよりも、寝室など長時間過ごす場所に設置することで、夜間の咳や息苦しさといった症状の軽減につながることがあります。
また、空気清浄機は換気の代わりにはなりません。厚生労働省の資料でも、空気清浄機は室内の微粒子を減らす補助的な手段であり、二酸化炭素を排出するためには換気が必要とされています。
そのため、可能な範囲で換気を行いながら、掃除や寝具の管理などの環境対策と併用することが、空気清浄機の効果をより活かすポイントです。
5. よくある質問

Q. 加湿機能は必要ですか?
乾燥対策として有効な場合もありますが、湿度が高すぎるとカビやダニが増える原因になります。
適切な湿度管理が大切です。
Q. 空気清浄機を使っていれば薬は減らせますか?
自己判断で薬を減らすことはおすすめできません。薬の調整は必ず医師と相談しましょう。
Q. 空気清浄機は一日中つけておいたほうがいいですか?
長時間過ごす時間帯や就寝中など、在宅時間に合わせて使用するのが基本です。
常時運転が可能な機種であれば、無理のない範囲で継続的に使用しても問題ありません。
Q. 何台くらい置くのが理想ですか?
家全体を1台でカバーしようとするよりも、寝室やリビングなど、よく過ごす部屋ごとに設置したほうが効果を実感しやすい場合があります。
生活スタイルに合わせて検討しましょう。
6. まとめ|空気清浄機と上手に付き合うために
空気清浄機は、喘息の治療そのものではありません。
しかし、
- 室内の空気環境を整える
- アレルゲンや微粒子への暴露を減らす
という点で、喘息管理の補助的な役割を果たす可能性があります。
大切なのは、
- 正しい知識で選ぶこと
- 薬物治療をきちんと続けること
- 日常生活全体で喘息を管理すること
喘息症状や生活環境について不安がある方は、お気軽に当院までご相談ください♪
葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック
院長 横山 裕
医院紹介
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