TOPへ

新着記事

中性脂肪(トリグリセリド)

新着記事 生活習慣病 内科

中性脂肪(トリグリセリド)とは何か

中性脂肪(Triglycerides; TG)は血液中に存在する脂質の1つで、生命維持に不可欠なエネルギー源です。食品由来の脂肪だけでなく、糖質やタンパク質からも肝臓で合成されます。体内では脂溶性ビタミンの吸収や体温維持にも関与しますが、過剰になると健康リスクの原因となります。

基準値

  • 空腹時:30〜149 mg/dL

  • 空腹時150 mg/dL以上(随時175 mg/dL以上)で高トリグリセリド血症と診断

中性脂肪(トリグリセリド)が産生される仕組み

体内の脂質は、大きくトリグリセリド(中性脂肪)、コレステロール、リン脂質、脂肪酸の4つに分けられ、それぞれ体の中で重要な役割を果たしています。トリグリセリドは糖やアルコールが体内で代謝されてできたグリセロールに、3個の脂肪酸が結合したもので、必要に応じて脂肪酸に分解されエネルギーとなります。

中性脂肪の構造

中性脂肪(トリグリセリド)代謝経路

中性脂肪(トリグリセリド)はそのままの形では吸入されません。消化酵素であるリパーゼにより、再度「脂肪酸」と「グリセロール」に分解され、小腸から取り込まれます。そして血管内では「カイロミクロン」という中性脂肪を運搬する受け皿に乗せられて、全身に運ばれます。運送先は主に「肝臓」「筋肉」で、組織では中性脂肪から脂肪酸に分解されてエネルギー源として使用されます。ただし使いきれずに余った中性脂肪は各組織で蓄えられた結果、「脂肪肝」「脂肪筋」「皮下脂肪や内臓脂肪の増加」につながるのです。

さて、消化管で吸収されたトリグリセリド(中性脂肪)は「カイロミクロン」という受け皿に載せられて、血液を循環します。その際、LPL(リポ蛋白リパーゼ)という酵素により適宜遊離脂肪酸へと分解され、最終的には残骸であるカイロミクロンレムナントとなり、肝臓に取り込まれます。そして肝臓で蓄えられたトリグリセリド(中性脂肪)は、コレステロールとともに「VLDL」という受け皿に載せられ、再度血液を循環します。LPLの作用によって徐々にトリグリセリド(中性脂肪)は減少していくと、受け皿は「IDL」そして「LDL」という名称に変わります。そう、LDLとは悪玉コレステロールのことで、受け皿内には多くのコレステロールを含みます。全身の余ったコレステロールを回収する役割を果たすのは「HDL」善玉コレステロールです。最近の研究では、LDL(悪玉コレステロール)のみならず、中性脂肪を多く含むリポ蛋白(TR:Triglyceride-rich lipoproteins)であるカイロミクロンやVLDL、カイロミクロンレムナントが血中に多く存在すると、動脈硬化のリスクとなることが知られてきました。

中性脂肪(トリグリセリド)と心血管疾患

かつて中性脂肪は、LDLコレステロールのような危険因子というより、肥満・糖尿病・脂肪肝・飲酒・メタボリックシンドロームに伴って上がる補助的なマーカーとして捉えられることが少なくありませんでした。しかし近年では中性脂肪を多く含むリポ蛋白(triglyceride-rich lipoproteins: TRL)と、その残骸であるレムナントが、動脈硬化性心血管疾患に深く関わることが、疫学・遺伝学・病態生理の各面から支持されるようになっています。

中性脂肪ではなくリポ蛋白と残骸がリスク

血液中の中性脂肪は水に溶けないため、単独では存在できません。そこで中性脂肪はカイロミクロンやVLDLといったリポ蛋白という受け皿(TRL)に乗って循環します。これらは末梢でリポ蛋白リパーゼ(LPL)によって分解され、中性脂肪が減る一方で、コレステロールを比較的多く含む小さめのレムナント(残骸)へと変化します。このレムナント粒子は動脈壁へ侵入しやすく、壁内にとどまり、マクロファージに取り込まれて泡沫細胞形成を促すという点で、動脈硬化を引き起こすと考えられています。さらに、血管内皮機能障害、炎症、血栓形成傾向にも関与するとされています。

中性脂肪高値は心筋梗塞・脳梗塞リスク

大規模疫学研究では、非空腹時の中性脂肪が高い人ほど、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳卒中、全死亡のリスクが高いことが示されています。とくに非空腹時の中性脂肪は空腹時よりも、日常生活で実際に血管がさらされている脂質環境を反映しやすく、心血管リスク予測に有用である可能性が示されています。食後高脂血症やレムナント(残骸)の停滞は、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、脂肪肝で目立ちやすく、これらの患者さんではLDLがそれほど高くなくても中性脂肪高値が見逃されやすい残余リスクとなっています。

中性脂肪高値で本当に見るべきは「残骸(レムナント)」「non-HDL-C」「apoB」

動脈硬化を実際に起こすのはアポBを1個ずつ持つアテローム形成性粒子の数です。ApoBとは動脈硬化を起こすリポ蛋白の「数」を示す指標です。LDLコレステロールだけでは見逃されることがある中性脂肪が高い人や糖尿病では特に重要なマーカーと考えられています。LDLもVLDLレムナントも、基本的にはapoB含有粒子です。したがって、TGが高い患者では、LDL-Cが見かけ上そこまで高くなくても、non-HDLやapoBが高ければ実際のリスクは高いことがあります。

中性脂肪をさ下げれば必ず心血管リスクも減るとまでは言い切れない

中性脂肪低下そのものが、どの薬でも同じように心血管イベント減少につながるわけではありません。実際、代表的介入試験では結果が一様ではありませんでした。

  • ・REDUCE-IT:高リスク患者における高純度EPAで主要心血管イベントが有意に減少

  • ・STRENGTH:EPA+DHA製剤を用いた試験ではは有効性を示せず

  • ・PROMINENT:pemafibrateでも、心血管イベント抑制を示せませんでした。

どんな患者で中性脂肪のリスクを強く意識すべきか

中性脂肪関連の残余リスクをとくに意識したいのは、以下のようなケースです。

  • ・2型糖尿病

  • ・肥満・内臓脂肪型肥満

  • ・メタボリックシンドローム

  • ・脂肪肝

  • ・LDL-Cは治療目標に達しているのにイベントリスクが高い患者

  • ・HDL-C低値を伴う患者

  • ・食後高脂血症が疑われる患者

臨床ではどう考えるか

①TG高値は軽視しない
LDL-Cほど単純ではないものの、心血管リスクと無関係とは言えません。

②LDL-Cだけでなくnon-HDL-CやapoBも考える
とくに糖尿病・肥満・メタボでは、粒子数ベースのリスクを見逃しにくくなります。

③空腹時だけにこだわりすぎない
非空腹時TGは日常的なレムナント曝露を反映し、リスク予測上むしろ有用なことがあります。

④高TG血症では膵炎リスクとなる

まとめ

中性脂肪は単に余ったエネルギーの指標ではありません。実際に問題となるのは、中性脂肪を運ぶリポ蛋白と、その代謝で生じるレムナント(残骸)です。これらは動脈壁に侵入して炎症や泡沫細胞形成を引き起こし、LDLコレステロールを十分に下げた後にも残る残余リスクの一部を担うと考えられています。近年は疫学研究に加えて、遺伝学的研究からもこの関与が支持されており、とくに糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームでは中性脂肪高値を軽視すべきではありません。

引用文献

  1. 1.López-Miranda J, Arterioscler. 2025. PMID: 40461363.

  2. 2.Nordestgaard BG. Circ Res. 2016. PMID: 26892957.

  3. 3.Ginsberg HN, Eur Heart J. 2021;42(47):4791-4806. PMID: 34472586.

  4. 4.Jørgensen AB, Eur Heart J. 2013. PMID: 23248205.

  5. 5.Langsted A, Pathology. 2019. PMID: 30522787.

  6. 6.Wilson PWF, J Clin Lipidol. 2021. PMID: 34802986.

  7. 7.Glavinovic T,Endocrinol Diabetes Obes. 2021. PMID: 33229928.

  8. 8.Glavinovic T, J Am Heart Assoc. 2022. PMID: 36216435.

  9. 9.Miller M.Curr Opin Lipidol. 2024. PMID: 38482842.

  10. 10.Pareek M,Expert Opin Drug Saf. 2022. PMID: 34253137.

  11. 11.Linton MRF,Endotext. Updated review. PMID: 26844337.

  12. 12.Chapman MJ,Curr Opin Lipidol. 2022. PMID: 35304222.

  13. 参考記事

  14. LDL
    脂質異常症

24時間WEB予約

院長 横山 裕

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック

院長 横山 裕

資格・所属学会