コレステロールの数値が高いと言われたら?高脂血症・脂質異常症の原因と改善方法
健診で「コレステロールが高い」と指摘されても、すぐに症状が出るわけではありません。しかし放置すると動脈硬化が進み、将来の心筋梗塞・脳梗塞のリスクが上がります。本記事では、一般の方向けに原因・基準値・改善法・受診の目安までをやさしく解説します。
1. 高脂血症(脂質異常症)とは?
高脂血症、あるいは脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が基準値を超えて多くなっている状態を指します。脂質は本来、エネルギー源やホルモンの材料として体に欠かせない存在ですが、過剰になると血管にたまり、血流の流れを妨げてしまいます。
この病気のやっかいな点は、ほとんどの場合で自覚症状がないことです。健診で「コレステロールが高い」と指摘されても体調に変化がないため放置してしまう方も多いですが、その間にも動脈硬化は静かに進行します。結果的に、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす危険が高まるのです。つまり「今は元気だから大丈夫」ではなく、「今のうちに生活を見直す」ことが重要です。
2. 基準値とチェックポイント
項目 | 要注意の目安 | ポイント |
---|---|---|
LDLコレステロール(悪玉) | 140 mg/dL以上 | 高いほど動脈硬化のリスク上昇 |
HDLコレステロール(善玉) | 40 mg/dL以下 | 低いとリスク上昇(回収役が不足) |
中性脂肪(TG) | 150 mg/dL以上 | 食事・アルコール・運動不足の影響を受けやすい |
※ 数値だけでなく、年齢・喫煙・血圧・糖代謝・家族歴などを合わせて総合的に評価します。健診結果は放置せず、早めに生活を見直しましょう。
3. 主な原因(食事・運動不足・遺伝)
高脂血症(脂質異常症)は、ひとつの要因だけで起こるのではなく、生活習慣と体質が重なって発症することが多い病気です。
食生活
まず食生活です。揚げ物や脂身の多い肉、バターや生クリームを使った料理は悪玉コレステロール(LDL)を増やしやすく、糖分の多いお菓子やジュース、アルコールの過剰摂取は中性脂肪を上昇させます。外食やコンビニ食が多い方は、気づかないうちに脂質や糖分を取りすぎていることがあります。
運動不足・肥満
体を動かさない生活はエネルギー消費が少なくなり、余分なカロリーが脂肪として蓄積されます。特にお腹まわりにたまる内臓脂肪は、コレステロールや中性脂肪のバランスを崩しやすく、脂質異常症を悪化させる大きな要因です。肥満は血圧や血糖にも影響するため、心筋梗塞や脳梗塞のリスクをさらに高めます。
遺伝的要因
また、遺伝的要因も見逃せません。代表的なのが「家族性高コレステロール血症」で、親から子へと体質が受け継がれます。
この場合、若いころからコレステロール値が非常に高くなりやすく、生活習慣の改善だけでは十分に下がりません。早期に医師の診断を受け、治療を始めることが必要です。
4. 放置するとどうなる?
コレステロールや中性脂肪が高い状態を放置すると、血管の内側に脂質が沈着してプラーク(こぶ状の塊)ができ、血管を硬く・狭くする動脈硬化が進みます。これは一度進行すると元に戻りにくく、全身の血管に広がります。
- 心筋梗塞・狭心症:胸の痛みや突然死の原因に
- 脳梗塞:麻痺や言語障害など重い後遺症を残すことも
- 末梢動脈疾患:足の血流障害から壊死に至る可能性あり
- 大動脈瘤・大動脈解離:破裂すれば命に関わる
さらに高血圧・糖尿病・喫煙が重なるとリスクは数倍に跳ね上がります。怖いのは症状がないまま進行すること。健診で異常を指摘されたら、症状が出る前に予防することが最も重要です。
5. 今日からできる改善方法
食事(“減らす”+“置き換える”)
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バター・脂身の多い肉・揚げ物は控える
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魚(特に青魚:サバ・イワシ・サンマなど)を積極的に取り入れる → EPA・DHAが豊富
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大豆製品・野菜・きのこ・海藻・全粒穀物など、食物繊維の多い食品を増やす
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お菓子・ジュース・アルコールは控えめにして中性脂肪の上昇を防ぐ
運動
- 有酸素運動:ウォーキング・ジョギング・自転車などの有酸素運動を 1日30分、週3回以上
- 筋トレ:大筋群を週2回程度。筋トレを組み合わせることで基礎代謝が上がり、脂肪が燃えやすい体づくりに役立つ
その他
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禁煙:血管を守るために必須
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体重管理:標準体重に近づけるだけでも脂質改善につながる
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ストレス対策:休養・睡眠をしっかりとり、生活リズムを整える
7. 受診の目安と次の一歩
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健康診断で
「LDLコレステロールが140mg/dL以上」
「HDLコレステロールが40mg/dL以下」
「中性脂肪が150mg/dL以上」
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といった数値が出た場合、受診を検討することが大切です。数値が基準をわずかに超える程度でも、他に高血圧や糖尿病、喫煙などのリスク因子があると、動脈硬化は加速しやすくなります。
医療機関では、血液検査の結果だけでなく生活習慣やリスク因子を総合的に評価し、生活改善で様子をみるか、薬の治療を始めるかを判断します。薬を使い始めた場合は1か月程度で効果や副作用をチェックし、その後も定期的に検査を行いながら治療を続けていきます。つまり、コレステロール値の異常は「結果を見て終わり」ではなく、「今後どう行動するか」が大切です。健診で指摘されたら、そのままにせず、ぜひ医師に相談してみましょう。
8. まとめ
コレステロール高値は自覚がなくても進行します。まずは食事・運動・禁煙・体重管理から。必要に応じて薬を併用し、将来の心血管イベントを予防しましょう。健診で指摘を受けたら、早めに医療機関へご相談ください。