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呼吸器内科

高血圧の薬をやめてもいい?|症状がなくても続けることが大切な理由

呼吸器内科 生活習慣病

高血圧治療は“続けること”がいちばんの薬です

―症状がなくても油断しないで―

「最近、血圧が落ち着いてきたから、薬をやめてもいいですか?」――診察室で、よく耳にする言葉です。血圧が安定すると、治ったように感じる方も少なくありません。けれども高血圧は、症状がなくても静かに進行する“沈黙の病気”です。

薬をやめてしまうと、再び血圧が上昇し、脳や心臓などの血管に負担をかけてしまいます。治療でいちばん大切なのは「下げること」よりも「続けること」。

この記事では、なぜ治療を継続することが重要なのか、そして長く続けるためのコツを専門医がわかりやすく解説します。

なぜ高血圧は「症状がない」のに危険なのか

高血圧は、血管にかかる圧力が長期間にわたって高い状態を指します。多くの方は、頭痛やめまいなどの症状を感じないまま日常を過ごしています。

しかし、血圧が高い状態が続くと、血管の壁が常に圧迫され、少しずつ傷ついていきます。その結果、血管が厚く硬くなり(動脈硬化)、次のような病気のリスクが高まります。

脳卒中(脳出血・脳梗塞):血管が破れたり詰まったりする

心筋梗塞・狭心症:心臓の血管が詰まり、心臓の筋肉が壊死する

腎不全:腎臓の血管が傷つき、老廃物を処理できなくなる

このような重い病気は、血圧が上がったその日ではなく、「高い状態を何年も放置した結果」起こることがほとんどです。

血圧が上がるメカニズムと、放置によるリスク

血圧は、心臓が血液を押し出す力(心拍出量)と、血管の硬さ・細さ(末梢血管抵抗)のバランスで決まります。加齢やストレス、塩分の摂りすぎ、運動不足などにより血管が硬くなると、自然と血圧は上がりやすくなります。

特に日本人は「塩分に敏感」な体質が多く、食事の影響を受けやすいことが知られています。
また、夜間や早朝にだけ血圧が上がる“隠れ高血圧(仮面高血圧)”も多く、病院で測るだけでは見逃されるケースもあります。

血圧をコントロールせず放置すると、目の血管が破れて眼底出血(高血圧性網膜症)を起こしたり、心臓が肥大して心不全を招いたりすることもあります。気づかないうちに、全身の臓器に負担をかけ続けてしまうのです。

「薬をやめても大丈夫?」―中断で起こること

高血圧の薬は、血圧を下げるだけでなく、「血管を守る」役割も担っています。服用をやめると、数日から数週間で再び血圧が上昇し、血管のダメージが進みます。

中でも怖いのは、“リバウンド現象”です。一度安定していた血圧が急に高くなり、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすことがあります。

「薬をやめても今は大丈夫だった」という人でも、数か月後、数年後に再び上昇して病気を発症するケースもあります。血圧は一見安定しているように見えても、薬の力で保たれていることが多いのです。

自己判断で薬を中断してしまうと、せっかく整ってきた血圧のバランスが崩れることがあります。不安なときは一人で悩まず、医師に相談しながら一緒に調整していきましょう。

治療を続けるための3つのコツ

① 定期的な通院を習慣にする

血圧は日々変動します。季節やストレス、睡眠不足、塩分摂取量などで変わるため、定期的に医師と相談しながらコントロール状況を確認することが大切です。

通院リズムを決めておくと、「うっかり薬が切れた」「飲み忘れた」という事態を防げます。体調や生活リズムの変化も、早めに相談するようにしましょう。

② 薬の不安は我慢せず相談を

薬を飲むことで「だるい」「立ちくらみがする」といった副作用を感じる方もいます。そうした場合は、薬の種類や量を調整することで改善できることが多いです。自己判断で中止せず、気になる点は必ず医師へ相談してください。

薬の内容を見直しながら“続けやすい治療”を探すことが、長く続けるコツです。

③ 家庭で血圧を測って「見える化」する

朝起きてすぐ、夜寝る前など、家庭で血圧を測る習慣をつけましょう。毎日の記録がグラフになれば、治療効果が実感しやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。

家庭血圧は、診察室で測るよりも実際の生活に近い値が出ます。医師にとっても重要な参考データになります。

生活習慣も“継続”がカギ

薬と同じくらい大切なのが、日々の生活習慣です。
高血圧の治療は「薬を飲むだけ」ではなく、「体の環境を整えること」でもあります。

  • 減塩: 1日6g未満が理想。味付けを薄めに、だしや香辛料を活用
  • 運動: 1日20〜30分のウォーキングを週3〜5回
  • 禁煙: たばこは血管を収縮させ、薬の効果を弱める
  • 体重管理: BMI25未満を目標に
  • 睡眠とストレス: 寝不足やストレスも血圧上昇の一因

これらを“完璧にこなす”必要はありません。
むしろ、「できることを無理なく続ける」方が、結果的に良い血圧コントロールにつながります。途中で挫折しても構いません。再開すればそれも前進です。

当院でのサポート体制

当院では、患者さん一人ひとりのライフスタイルやお仕事に合わせて、「無理なく続けられる治療」を一緒に考えています。

  • 定期通院が難しい方には、まとめ処方(リフィル処方箋)を活用
  • 家庭血圧の測定方法を一緒に確認し、正しい測り方を指導
  • 副作用が気になる方には、薬の種類・服用時間を調整

“続けることが苦にならない治療”こそ、結果を出す近道です。

まとめ

高血圧は、症状がないからといって安心できる病気ではありません。静かに血管を傷つけ、ある日突然、脳や心臓の病気として現れます。

治療を続けることが、将来の病気を防ぐ近道です。薬も生活習慣も、無理をせず「できることから少しずつ」行っていきましょう。

当院では、患者さんが安心して治療を継続できるよう、丁寧にサポートいたします。血圧のことでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な医学情報をもとに作成しています。治療内容や薬の調整は、体質や病状によって異なりますので、自己判断せず、必ず医師にご相談ください。

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院長 横山 裕

葛西よこやま内科・
呼吸器内科クリニック

院長 横山 裕

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