舌下免疫療法とは?スギ花粉・ダニアレルギーを改善する治療法
花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎、さらには喘息。薬で症状は抑えられても 「毎年つらい」「薬をやめられない」というお悩みは残りがちです。
そこで注目されているのが舌下免疫療法(SLIT)。 アレルギーの原因そのものに働きかけ、少しずつ体を慣らして 体質改善を目指す治療です。この記事では初心者にもわかりやすく、 基本から効果、注意点を7つのポイントで説明します。
1. 舌下免疫療法とは?
スギ花粉やダニなどの原因物質(アレルゲン)を、毎日少量ずつ舌の下に薬として置くことで体に取り込み、徐々にアレルギー反応を起こしにくい体質へ慣らしていく治療です。
たとえば、少しずつトレーニングして体力をつけていくように、体の免疫を「鍛えて慣らしていく」イメージです。薬でその場の症状を抑えるのとは違い、体の仕組みそのものに働きかける根本治療に近い方法です。
毎日続けていくと、体が「花粉やダニは危険ではない」と覚え、アレルギーの過剰反応をしにくくなります。その結果、花粉シーズン中でも症状が軽くすみ、薬の量を減らせたり、日常生活が快適になったりする可能性があります。
舌下免疫療法はすぐに効果が出る治療ではありませんが、数か月〜数年かけて少しずつ体質を変えていくため、長く続けるほど実感が得られるケースが多いです。
3. 対象と効果(スギ・ダニ・喘息)
スギ花粉症
春に多いくしゃみ・鼻水・鼻づまりを軽くし、花粉シーズンを快適に過ごせるようにします。
ダニアレルギー性鼻炎
一年中続く鼻づまりや鼻水を和らげ、ぐっすり眠れるようになり、日中の集中力も改善します。
喘息(ダニアレルギーがある人)
咳やゼーゼーを起こす発作を減らし、吸入薬を減らせる場合があります。
将来への効果
新しいアレルギーを発症しにくくする可能性があり、特に子どもにメリットが大きいとされています。
4. 誰が始められる?
目安は5歳以上。正しく服用できることが前提です。
次の場合は注意が必要:
- 妊娠・授乳中
- 自己免疫疾患の治療中
- βブロッカー内服中
- 不安定な喘息
- 強い口内炎・口腔内の傷がある場合
開始前に原因を確認するためアレルギー検査(当院)をご案内しています。
5. 治療の流れ・期間・費用
- 初回は院内で投与し、約30分観察(安全確認)。
- 翌日以降は自宅で毎日服用。少量から開始し医師の指示で段階的に増量。
- 定期的に受診し、効果・副作用をチェック。
期間:推奨は3〜5年の継続。
費用(3割負担・薬代の目安):スギ約1,300円/月、ダニ約1,800円/月。 (診察・検査は別途)
6. 副作用と注意点
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よくある副作用
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口のかゆみや腫れ
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のどの違和感
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耳のかゆみ
👉 これらは多くの場合、数日〜数週間で自然に落ち着きます。
まれに起こる強い反応
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全身にじんましんが出る
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息苦しくなる
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ふらつきやめまい
👉 このような重い症状(アナフィラキシー)はめったにありませんが、万が一起きたらすぐ医療機関を受診してください。
服用時の注意点
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薬を飲む前後 2時間は激しい運動・飲酒・入浴を避ける
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発熱、風邪、口内炎、口の傷がある日は服用を控える
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喘息の発作が出ているときも中止する
中断と再開のルール
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3か月以上やめてしまった場合は、必ず医師の指示に従って少量から再開してください。
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7. なぜ効くの?
アレルギーは、本来無害な花粉やダニを体が「敵だ!」と勘違いして強く反応する状態。 その結果、鼻水・くしゃみ・咳が出ます。
舌下免疫療法は、原因物質を少しずつ体に慣らすことで 「これは危険ではない」と体に覚えさせる治療です。
- 体にブレーキ役が育ち、反応が落ち着いてくる
- 花粉やダニを「敵」と見なさなくなり、症状が出にくくなる
- 数か月〜数年かけてアレルギーに強い体へ近づく
よくある質問(FAQ)
Q1. いつから始めるのが良いですか?
スギ花粉症は花粉が飛ばない時期(目安:初夏〜秋)に開始するとスムーズです。 ダニは通年OKですが、体調が安定している時期の開始をおすすめします。
Q2. どれくらいで効果を実感できますか?
個人差はありますが、数か月〜1年ほどで「去年より楽かも」と感じ始める方が多いです。 しっかりとした効果の定着には3〜5年の継続が目安です。
Q3. 子どもでもできますか?安全性は?
5歳以上からが目安です。副作用の多くは口の違和感など軽度で、継続とともに落ち着く傾向です。 はじめは初回院内投与+観察で安全性を確認します。
Q5. 服用を忘れた日はどうすれば?旅行や運動は?
1日程度なら気づいた時点で再開し、以降は毎日続けてください。 長期の中断は再開方法が変わるため必ずご相談を。服用前後2時間は激しい運動・飲酒・入浴を避けるのが原則です。
Q8. 妊娠・授乳中はできますか?
原則として新規開始は控えます。既に安定して継続している場合の取り扱いは個別判断です。 必ず医師にご相談ください。
Q9. 花粉が少ない年でも続ける必要はありますか?
はい。継続が効果の鍵です。飛散量に関わらず、計画通り続けることで体質改善が期待できます。
まとめ
舌下免疫療法は毎日の継続と数年単位の取り組みが必要ですが、 症状を抑えるだけではなく体質からの改善を目指せる治療です。
当院では、舌下免疫療法、 アレルギー検査などを通じて、適応判定から開始後のフォローまで伴走します。 「自分(子ども)も始められる?」「副作用が心配」など、まずはお気軽にご相談ください。