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【講演会演者】Severe Asthma Treatment Decision-Making

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2025.1.31にWebで行われました重症喘息における講演会に演者として参加致しました。

座長は東京品川病院 森川先生、演者は私と日本医科大学の清水先生の2人が登壇致しました。

本講演は大学、病院、クリニックの様々な立場の専門医から、重症喘息患者さんに対し、どのように意思決定支援をしていくかをテーマに行われました。ディスカッションでは「注射はまだいいです」患者さんの意思決定へできること、と題して活発な議論が行われました。重症喘息患者に対し生物学的製剤を投与する前段階としてのコミュニケーションのあり方が焦点になっていた印象です。

以下、私の講演要旨となりますのでご興味がある方はぜひご覧ください。

重症喘息における意思決定支援と生物学的製剤の役割


1. はじめに

重症喘息は、既存の治療法ではコントロールが困難な疾患であり、患者の生活の質(QOL)を大きく損なう。特に、長期間にわたる経口ステロイド(OCS)の使用は、様々な副作用を引き起こし、患者の健康を脅かす可能性がある。本記事では、重症喘息の治療選択肢としての生物学的製剤に焦点を当て、その意思決定支援の重要性について述べる。


2. 重症喘息の診断と治療

(1)重症喘息の定義
重症喘息とは、「最大限の既存治療(高用量ICS/LABA/LAMA、LTRA、SRT、OCS、生物学的製剤)を行ってもなおコントロールが困難な喘息」を指す。喘息の70~80%は標準的な治療でコントロール可能だが、約5~10%の患者は既存の治療で十分な効果が得られず、重症喘息として診断される。

(2)喘息増悪のリスクとOCSの影響
重症喘息患者は頻繁な喘息増悪を経験し、そのたびにOCSが使用されることが多い。しかし、長期間のOCS使用は以下のようなリスクを伴う。

  • 代謝異常(糖尿病・肥満)
  • 心血管系リスク(高血圧・動脈硬化)
  • 骨格筋系障害(骨粗鬆症・サルコペニア)
  • 感染症リスクの増加(肺炎・敗血症)など

OCSの副作用を最小限に抑えるためには、代替治療の導入が求められる。


3. 生物学的製剤の導入とその意義

(1)生物学的製剤とは何か
生物学的製剤は、喘息の病態に関わる特定の分子を標的とする抗体製剤である。従来のステロイド治療と異なり、全身への影響を抑えながら喘息の増悪を防ぐことが可能である。

現在、以下のような生物学的製剤が利用されている。

標的 生物学的製剤
IgE オマリズマブ
IL-5 メポリズマブ、ベンラリズマブ
IL-4R デュピルマブ
TSLP テゼペルマブ

これらの製剤は、患者の炎症メカニズムに応じて適切に選択される。

(2)生物学的製剤の効果
生物学的製剤を導入することで、以下の効果が期待される。

  • 喘息増悪の抑制(OCS使用の減少)
  • QOLの改善(呼吸機能の向上)
  • 長期的な安全性の確保

特に、喘息増悪を繰り返す患者に対して、生物学的製剤は劇的な改善をもたらすことが報告されている。


4. 患者の意思決定支援(SDM: Shared Decision Making)

(1)なぜ意思決定支援が重要か
生物学的製剤は、効果的な治療法である一方で、費用負担が高いという問題がある。そのため、患者が納得した上で治療を選択できるよう、意思決定支援(SDM)が求められる。

(2)KOFU Studyの示唆
KOFU Studyでは、重症喘息患者における生物学的製剤の受け入れプロセスが分析された。結果として、以下の課題が浮かび上がった。

  • 患者自身が重症喘息であると認識していない
  • 治療の選択肢について十分な説明を受けていない
  • 費用負担を理由に治療を見送るケースが多い

これらの課題に対応するため、医療者は以下の情報を積極的に提供する必要がある。

  • 患者の病状と治療選択肢の説明
  • 生物学的製剤の効果と必要性
  • 費用負担軽減策(高額療養費制度など)の説明

(3)多職種チームの役割
生物学的製剤の導入には、医師だけでなく、看護師や薬剤師、医療ソーシャルワーカー(MSW)などの多職種チームが関与することが望ましい。特に、患者のヘルスリテラシーを向上させるために、簡潔かつ明確な情報提供が求められる。


5. 生物学的製剤の経済的負担と補助制度

(1)高額療養費制度の活用
生物学的製剤の治療費は高額だが、日本には「高額療養費制度」や「付加給付制度」があり、一定の自己負担限度額を超えた医療費は還付される。
患者には、治療費が単なる負担ではなく、将来的な医療費削減にもつながる可能性があることを説明する必要がある。

(2)患者の費用負担に対する心理的バリア
多くの患者は「現状維持バイアス」により、高額な治療を回避しがちである。この心理的傾向に対処するためには、以下のアプローチが有効である。

  • 治療の長期的なメリットを強調する
  • 比較データを提示し、客観的に判断できるようにする
  • 繰り返し説明し、患者の理解を促進する

6. まとめ

重症喘息の治療において、生物学的製剤は有望な選択肢である。しかし、その導入には患者の理解と納得が不可欠であり、医療者は適切な意思決定支援(SDM)を行う必要がある。特に、費用負担や治療への不安を軽減するために、多職種での介入や補助制度の活用を積極的に提案することが重要である。生物学的製剤がもたらす恩恵を最大限に活かすために、患者と医療者が共に最適な治療選択を行える環境を整えることが求められる。

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