痰がからむ咳が続いていませんか?痰が絡む咳は「湿性咳嗽」といい様々な原因で起こります。このページでは痰がらみの咳の原因について探ります。
1. 痰とは何か?
痰とは下気道(気管~肺胞)で産生された分泌物のことをいいます。痰が下気道で過剰に分泌されると気道に貯留し、咳とともに喀出されたものが痰となります。
2. 痰がらみの咳が起こる理由
痰がらみの咳を起こす様々な病気があります。「痰の性状」と「咳の持続時間」を参考に病気を推測することが出来ます。咳の持続期間が「3週間以内」の場合、痰の性状が「透明」であれば「咳喘息」や「喘息」、「膿性(黄色)」であれば「感冒」「肺炎」などの感染症を疑います。また痰がらみの咳を起こすもう1つの理由が鼻疾患です。痰だと思っていたものは鼻から喉に落ちた鼻汁かもしれません。例えば「急性副鼻腔炎」では痰がらみの咳が起こります。咳の持続時間が8週間以上になると、膿性痰の原因としては「慢性副鼻腔炎」や「肺結核」「非結核性抗酸菌症」などを鑑別に挙げる必要があります。喫煙歴がある方では「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」も鑑別に上がるでしょう。一方、痰に血が混じる「血痰」の場合はやはり「肺癌」などを鑑別に挙げなければなりません。「心不全」でも「ピンク状の血痰」が出ることがあります。
3. 痰がらみの咳の検査
3-1. 胸部X線
痰がらみの咳が続く時に最も大切なのは「見逃してはいけない病気を除外すること」です。3週間以内の咳であれば「肺炎」を除外するために胸部X線写真を撮影します。3週間以上続く咳であれば「非結核性抗酸菌症」「肺結核」「肺癌」を胸部X線検査で除外していきます。咳の診療の入り口は「胸部X線で異常が認められるかどうか?」です。胸部X線で異常が認められなければその他の病気の検査に進みます。胸部X線で異常がある場合は、肺炎であれば治療しますが、それ以外の病気を疑う場合は「胸部CT撮影」や「基幹病院への紹介」を行うことになります。
3-2. 血液検査
肺炎などの感染症では「白血球(WBC)」や「炎症反応(CRP)」が上昇します。また白血球には様々な細胞がありますが、その細胞の割合見る検査を「白血球分画」といいます。喘息や咳喘息では「好酸球」、肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症では「好中球」が上昇します。非結核性抗酸菌症の中で最も多いとされてるMAC菌に対する「抗MAC抗体」や肺結核に罹患したことがある方で陽性となる「IGRA(クオンティフェロン、T-SPOT)」も重要な検査です。
3-3. 喀痰検査
主に「細菌」「非結核性抗酸菌症」「結核菌」を培養するために行う検査です。病原菌が培養された場合は抗生剤の効きやすさを確認する「感受性検査」を行ったり、「非結核性抗酸菌」が培養された場合はさらに「PCR検査」を組み合わせて行うこともあります。
3-4. PCR検査
「非結核性抗酸菌」や「肺結核」を診断するために痰を用いて行う検査です。
4. 痰がからむがあまり痰は出ない咳
痰がからむ感じがしても痰がほとんど出てこない咳があります。この様な咳を起こす原因として「逆流性食道炎」「ストレス球」「喉頭アレルギー」「咳喘息」などがあります。この様な咳は喉の違和感がとても強いことが特徴です。
5. 終わりに
痰がからむ咳の原因は多岐に渡ります。「痰の性状」と「咳の持続期間」を確認し、胸部X線で見逃してはいけない病気を除外することが重要です。お困りの際はぜひ呼吸器内科に受診してみましょう。
<参考記事>
・長引く咳の専門外来での「咳の診かたと考え方」
・長引く咳(慢性咳嗽・遷延性咳嗽)
・肺炎はどんな病気?症状・病態・治療・予防について解説!
<引用>
・咳嗽喀痰の診療ガイドライン第2版2025