「咳が続くのに原因がわからない…」そんな方へ。
咳や胸のモヤモヤ、ゼーゼー・ヒューヒューといった症状があるのに、検査では異常なし——それは「隠れ喘息」や「咳喘息」「COPD」など、見つかりにくい呼吸の病気かもしれません。
そんな症状の見極めに役立つのが、新しい呼吸検査「モストグラフ」です。マウスピースをくわえて10秒ほど自然に呼吸するだけで、気道の状態を波形と数値でチェックできます。
この記事では、モストグラフの仕組みや、どんな人におすすめかを呼吸器専門医がわかりやすく解説します。
目次
モストグラフ(気道抵抗性試験)とは?
モストグラフとは、空気の通りにくさ(=気道抵抗)を測定する呼吸機能検査のひとつです。正式には「オシレーション法」と呼ばれ、呼吸中に空気に微弱な振動(オシレーション)を加えて、気道の通りやすさ(抵抗値)を調べます。
健康な気道では空気の流れがスムーズなので「気道抵抗」は低くなり、気管支が狭くなると抵抗が高くなります。これを視覚的にわかりやすく波形として表示するのが、モストグラフの特長です。
通常は緑色で平らな波形が正常、赤色で高く波打つ波形は気道が狭くなっている可能性を示します。
結果は色分けされ正常ならば緑、抵抗が強くなるにつれて黄→赤→青と異常が見やすく表示されます。
モストグラフはどんな人におすすめ?
以下のような症状がある方は、モストグラフ検査の対象になることが多いです。
- 咳が長引いている(咳喘息が疑われる)
- ゼーゼー・ヒューヒューと音がする(喘鳴)
- 胸が重たい、呼吸がしづらい
- 過去に喘息やCOPDと診断されたことがある
- 小児(5〜6歳以上)や高齢者で、通常の呼吸検査が難しい方
特に「隠れ喘息(潜在性喘息)」のように、通常の検査では異常が見つからないタイプの疾患にも、モストグラフは有効です。
他の呼吸検査と何が違うの?
従来の肺機能検査(スパイロメトリー)や呼気NO検査(ナイオックス)は、力強く息を吸ったり吐いたりする「努力性呼吸」が必要で、患者さんにとって少し負担がかかります。
一方、モストグラフは「いつも通りに楽に呼吸するだけ」で検査ができます。そのため、小さなお子さんや高齢者、体力が低下している方でも、簡単に受けられる検査です。
波形で病気のヒントが見える?
モストグラフでは、呼吸時の抵抗を周波数ごとに測定し、波形として表示します。これにより、気道のどの部分が狭くなっているかが分かります。
- R5: 全気道(末梢+中枢)の抵抗
- R20: 中枢気道の抵抗
- R5-R20: 末梢気道の抵抗
R5-R20の値が高くなっている場合、特に「末梢気道の狭窄」が疑われ、喘息やCOPDの早期発見に役立ちます。
治療の効果もチェックできる
モストグラフは、治療がちゃんと効いているかどうかを確認するのにも使える検査です。たとえば、吸入薬を使う前と使った後にモストグラフで検査をすると、呼吸のしやすさにどれくらい変化があったかがわかります。薬を使った後に数値が良くなっていれば、その治療が効果的だったと判断できます。
このように、治療の前後で「波の形」や「数値」がはっきり変わるのを見ることができるので、患者さん自身も「ちゃんと良くなっているんだ」と実感しやすくなります。薬を飲んだり吸ったりしても、すぐには体の変化がわかりにくいこともありますが、モストグラフの結果を見れば、その効果が目に見えてわかるので安心です。また、こうしたデータがあると、医師も治療が合っているかどうかを判断しやすくなり、よりその人に合った治療を続けることができます。
まとめ|咳や息苦しさが気になる方へ
モストグラフ(気道抵抗性試験)は、ほんの10秒間、普段通りの呼吸をするだけで気管支の状態を数値化・可視化できる画期的な検査です。咳や息切れが長引いているのに、これまでの検査で異常が見つからなかった方、小さなお子さんやご高齢の方でも、安心して受けられるのが特徴です。
「もしかして隠れ喘息かも?」と思ったら、モストグラフを活用して、呼吸の健康をチェックしてみましょう。
参考記事
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・ピークフローメーター【喘息の診断・管理】
・気道抵抗性試験(モストグラフ)【喘息の診断・管理】
・呼気NO(FeNO)検査【喘息の診断・管理】