咳はなぜ出るのか?
咳は体にとって大切な防御反応です。ウイルス、ホコリ、煙、胃酸など、体にとって異物とされる刺激を排出するために自然に起こります。
咳の原因は「肺や気管支」に限らず、「鼻・のど・食道・胃」など、さまざまな場所からの刺激が関係します。そのため、原因が一つではないことが多く、治療にも工夫が必要です。
長引く咳の主な原因と治療法
風邪が治ったはずなのに咳が数週間続く…。そんな経験はありませんか?咳が長引く背景には、いくつかの疾患が隠れていることがあります。
🦠 原因 | 📝 主な特徴 | 💊 治療の一例 |
---|---|---|
咳喘息 | 気道が敏感になり、 咳だけが長く続く |
吸入ステロイド (長期的な管理が重要) |
アレルギー性鼻炎 | 鼻水がのどに流れて咳を誘発(後鼻漏) | 抗アレルギー薬、点鼻ステロイド |
胃食道逆流症(GERD) | 胃酸の逆流がのどを刺激し咳が出る | 胃酸抑制薬(PPIなど)、生活習慣の見直し |
感染後咳嗽 | 風邪やウイルス感染後、 気道が一時的に過敏になっている |
鎮咳薬、吸入薬、安静 |
これらの原因に対して適切な治療を行えば、多くは1〜2週間で改善が期待されます。ただし、咳が長引く場合には、他の可能性を考える必要があります。
治療しても続く咳|咳過敏症候群とは
通常の治療を行っても咳が8週間以上続く場合、「難治性慢性咳嗽(なんちせい まんせい がいそう)」という状態が疑われます。
なかでも近年注目されているのが「咳過敏症候群(Cough Hypersensitivity Syndrome:CHS)」という概念です。これは、咳に関与する神経が過敏になっており、わずかな刺激でも咳が出てしまう状態です。
たとえば、「話すと咳が出る」「冷たい空気で咳が出る」「香水やたばこの煙でむせる」など、通常では咳の原因にならない程度の刺激でも反応してしまうのが特徴です。
新しい治療薬「リフヌア」とは
このような神経の過敏が原因の咳に対して、近年「リフヌア(一般名:ゲーファピキサント)」という新しい内服薬が使用できるようになりました。
この薬は、咳に関わる神経(P2X3受容体)をブロックし、「咳を感じにくくする」作用を持ちます。
リフヌアの特徴:
- 従来の治療で改善しなかった咳に対して効果が期待される
- 1日2回の服用で、神経の興奮を抑える
- 副作用として「味覚異常(味が薄く感じるなど)」が報告されている
リフヌアはすべての咳に効くわけではありませんが、咳過敏症候群が疑われる方にとっては新たな選択肢となる可能性があります。
まとめ|咳が続くときはご相談ください
「長引く咳」は、放っておいても自然に治るとは限りません。咳が何週間も続く場合、一度専門医に相談することが重要です。咳の治療には「正確な診断」と「原因に合った治療法の選択」が必要不可欠です。当院では、慢性咳嗽や咳過敏症候群の診断・治療にも対応しております。お気軽にご相談ください。
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