呼吸器内科外来にお越しになる患者さんからよく受ける質問として「気管支喘息と咳喘息は違うんですか?」というものがあります。確かに、両者には喘息(ぜんそく)という言葉が含まれていますが、実は気管支喘息(ぜんそく)と咳喘息は異なる病気です。このページでは「気管支喘息(ぜんそく)と咳喘息の違い」についてまとめてみたいと思います。
目次
1. 気管支喘息(ぜんそく)とはどのような病気か?
気管支喘息(ぜんそく)とは呼吸の通り道である気道(気管、気管支)にアレルギーによる炎症が起こり、気管支が過敏になることで、「かぜ」「季節の変わり目」「寒暖差」などの刺激に対し、気管支がせまくなり喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)があり、咳や痰が出ることを繰り返す病気です。
2. 咳喘息とはどのような病気か?
咳喘息は気管支喘息(ぜんそく)と異なり喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)を伴わず、咳が長引くことを唯一の症状とする疾患です。アレルギー炎症などにより気道が過敏となり、気道が少しでも伸び縮みすると咳が出やすくなってしまっていること(咳嗽反応の亢進)が原因と考えられています。そのため、気管支拡張薬により咳が改善することを確認することが診断の手がかりとなります(0)。
3. 咳喘息と気管支喘息の比較
咳喘息と喘息の違いをまとめてみましょう。両者ともアレルギー炎症により気道が過敏となることが原因で起こります。咳喘息は気管支は狭くならず咳や痰が主な症状となりますが、気管支喘息(ぜんそく)は咳や痰が出るだけでなく気管支が狭くなり喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)や呼吸困難が出現する病気となります。
4. 咳喘息は気管支喘息に移行する?
咳喘息から気管支喘息(ぜんそく)に移行する割合は30-40%とも報告されています。咳喘息に対し吸入ステロイドを使用すると移行する可能性は低下します(1)(2)。
(1)Matsumoto H,J Asthma. 2006 Mar;43(2):131-5.
(2)Fujimura M,Thorax. 2003 Jan;58(1):14-8.
5. 咳喘息と気管支喘息の治療は?
5-1. 気管支喘息
気管支喘息の治療の主体は吸入薬です。通常、吸入ステロイド(ICS)と気管支拡張薬(LABA)合剤による治療が行われます。治療により症状(咳・痰・呼吸苦・喘鳴)は速やかに改善します。症状改善後は定期的な治療により、喘息増悪をしないように予防することが推奨されています(3)(4)。
詳しく知りたい方はこちら
気管支喘息(検査・診断)
気管支喘息(治療)
5-2. 咳喘息
咳喘息の治療の主体も同様に吸入薬で行います。通常、吸入ステロイド(ICS)と気管支拡張薬(LABA)合剤による治療が行われます。治療により症状(咳・痰)は速やかに改善します。慢性咳嗽の原因としては咳喘息単独よりも複数の原因(咳喘息+逆流性食道炎)が最多であったとの報告もあり(5)、原因に合わせた治療が望まれます。
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(3)喘息予防・管理ガイドライン2024(アレルギー学会)
(4)喘息診療実践ガイドライン2024(喘息学会)
(5)Kanemitsu Y, Allergology International 68 (2019) 478-485
6. おわりに
咳喘息と気管支喘息(ぜんそく)の違いについてまとめました。どちらも気管支にアレルギーが起こり、気道が過敏になって起こり、吸入薬が奏功する病気です。咳喘息は気管支はせまくなりませんが、気管支喘息は気管支がせまくなり、呼吸が苦しくなったり、ゼイゼイする病気です。両者を区別するには適切な問診(過去にゼイゼイしたかなど)、聴診(喘鳴があるか)、検査(呼気NO検査や呼吸機能検査、気道抵抗性試験)に基づき、適切な診断が望まれます。咳喘息や気管支喘息は、一度診断し治療したら終わりではなく、同じような症状を繰り返すことが特徴です。当院では呼吸器・アレルギー専門医による適切な診断に基づき、今後の見通しを説明することが可能です。長びく咳でお困りであったり、長引く咳を繰り返している方はぜひ当院にご相談ください。