気道抵抗性試験(モストグラフ)は、マウスピースを加えて呼吸を10秒程度繰り返すだけで「気道抵抗」=「気管支のせまさ」を測定することが出来る医療機器です。喘息(ぜんそく)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など気管支がせまくなる病気の診断に役立つほか、通常の肺機能検査では検出できないような異常を見つけることで「咳喘息」や「潜在的な喘息」の診断につながります。このページでは気道抵抗性試験(モストグラフ)について、呼吸器内科専門医が解説いたします。
1. 気道抵抗性試験とは
気道抵抗性試験(モストグラフ)はオシレーション波を用いて「気道抵抗(呼吸の通りにくさ)」を測定します。気管支がせまくない場合は気道抵抗は低値となりますが、気管支がせまくなると気道抵抗は高値となります。気道抵抗は「色」と「高さ」で表され、正常(気道抵抗:低値)な場合は緑の平坦な波形、気管支がせまい(気道抵抗:高値)場合は赤・高い波形となります。
2. 気道抵抗性試験(モストグラフ)はどのような方に行うか
気管支のせまさを検出する医療機器なので、気管支がせまくなる病気(喘息やCOPD)の診断に有用です。喘息やCOPDなどで気管支がせまくなると「喘鳴(ぜんめい):ゼーゼー、ヒューヒュー」や「呼吸苦」が出現します。喘鳴や呼吸苦がある方は気道抵抗性試験(モストグラフ)の良い適応と考えられます。また「咳喘息」は喘息程ではありませんが、気道抵抗が上昇することが知られています。「長引く咳」「のどがつまる」「息が吸いにくい」「胸が重たい」など、喘息として非典型的な症状の方でも、軽微な異常を検出できるためおすすめできます。喘息の診断方法としては「呼吸機能検査(スパイロ)」や「呼気NO検査(ナイオックス)」もありますが、これらの検査では「最大限の努力を要すること」や「息を一定の速度で吐き続けること」が求められるため、小さなお子様やご高齢の方ではどうしても検査が難しいことがあります。気道抵抗性試験(モストグラフ)は「努力を要さない」「いつもどおり呼吸しているだけ」の検査ですので「小さなお子様」や「ご高齢の方」でも検査を行うことができるのが特徴です。
<モストグラフ(気道抵抗性試験)をおすすめする方>
・喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)がある
・呼吸苦がある
・長引く咳
・小さなお子様(5~6歳以上)や高齢の方
3. 気道抵抗性試験で気管支のせまさを評価する
明らかな喘鳴(ぜんめい)や呼吸苦がない方でも、気道抵抗が高値となる場合は喘息を疑うきっかけとなります。そのような方に吸入薬による治療を行うと気道抵抗が低下し、モストグラフの波形が変化します。治療反応性を見る目的で治療前後に気道抵抗性試験(モストグラフ)を行うと、潜在的な喘息を捉えることが可能です。
4. 気道抵抗性試験の波形による病態の違い
気道抵抗性試験の波形を見ると、手前と奥の色が異なることが分かると思います。手前と奥ではオシレーション波による周波数が異なり、手前の周波数が高(R20)、奥の周波数が低(R5)となります。R5は全気道抵抗、R20は中枢気道抵抗を表し、R5-20は末梢気道抵抗を表すと考えられています。このように周波数によって波形の高さが異なることを「周波数依存性」といいます。周波数依存性は特に「末梢気道がせまい」ような病気であるCOPDや末梢気道がせまいタイプの喘息で見られます。
5. おわりに
「咳が長引く」「胸が重たい」「息がしにくい」こうした症状があっても、通常の検査では原因がはっきりしないことがあります。気道抵抗性試験(モストグラフ)は、努力を必要とせず、わずか10秒間の呼吸で気管支のせまさを評価できる新しい検査法です。とくに、喘息やCOPDが疑われる方、咳喘息や潜在的な喘息の可能性がある方、小さなお子様やご高齢の方にとって、有用かつ負担の少ない検査です。「もしかして喘息かも」「咳が長引いていて心配」と感じたら、どうぞお気軽に当院へご相談ください。呼吸器内科専門医が、丁寧な問診と検査で、あなたの症状の原因を一緒に見つけてまいります。
<参考記事>
・気管支喘息(ぜんそく)と咳喘息はどう違う?原因・症状・治療について解説!
・私は本当に喘息?その疑問に呼吸器内科専門医が答えます
・気管支喘息(検査・診断)
・気管支喘息(治療)
・咳喘息
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・呼気NO(FeNO)検査【喘息の診断・管理】