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ピークフローメーター【喘息の診断・管理】

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ピークフローメーターの写真

ピークフローメーターは喘息の診断や管理に有用な医療機器です。当院では喘息診療において「病状を正しく評価し治療に活かすこと」「患者さんの積極的な治療参加を促すこと」を目的に、ピークフローメーターによる治療管理を推奨しています。このページでは「ピークフローメーター」とはどのような医療機器か、呼吸器内科専門医が解説します。

 

 

1. ピークフローとは

ピークフローのイメージ
「ピークフロー」とは、最大限の速さで息を吐きだした時、息を吐く速さの最大値である「瞬間最大風速」のことです。ピークフロー値は、肺機能検査で測定される気管支のせまさ「1秒量(=1秒間に吐ける息の量)」と関連しており、患者さんの気管支のせまさを表す指標となります。健常な方と比較して、喘息の患者さんではピークフロー値が低下します。

 

2. ピークフローメーター

ピークフローメーターの写真

ピークフローメーターは「ピークフロー値」を自宅などでも簡単に測定できる医療機器です。現在当院で利用している機種としては「ミニライト」「エアゾーン」「トルーゾーン」の3つがあります。ピークフローメーターは医療機関だけでなく自宅で患者さん自身が使用できることも特徴です。医療機関では気管支喘息の患者さんに対し保険で処方できる(喘息管理料)ほか、Amazonや楽天などのECサイトでご自分で購入することも可能です。

 

3. ピークフローメーターによる喘息診断

ピークフローの日内変動と治療反応性

時間の経過とともに気管支のせまさが変動することを「日内変動」といいます。「日内変動」は喘息診断の目安の1つとなる「気道可逆性」(気管支の伸び縮み)と「気道過敏性」を表しています。ピークフローメーターを用いることでこの「日内変動」を捉えることが出来ます。ピークフロー測定値の変動幅が最大値の20%を超えると「ピークフローによる日内変動がある」と判断し、喘息診断の1つの根拠となります。例えば、明らかな「喘鳴」がなく、呼吸苦のみを訴えているような軽症喘息患者さんであっても、ピークフロー測定により喘息と診断することが可能となります。

 

4. ピークフローによる喘息管理

喘息の評価

ガイドラインでは、喘息のコントロール状態の評価は「喘息症状」「発作治療薬の使用」「活動制限」「呼吸機能」「ピークフローの日内変動」「増悪」などにより、「コントロール良好」「不十分」「不良」の3段階に分類されます。この中にはPEF(ピークフロー)の日(週)内変動という項目があり、PEFの日内変動が20%未満の状態をコントロール良好と定義しています。そしてPEF日内変動の正常上限は8%としています。それではピークフローを用いた当院の診療の実際のイメージをご紹介いたします。

ピークフロー測定の実際

ピークフローを測定した際のご自身のPEFのベスト値を「PEF自己最良値」といい、普段の喘息の調子が良い時に見られます。一方、喘息の調子が悪い時、例えば「悪天候」「体調不良」「かぜ」などでは気管支が狭くなるとPEF値が低下します。この様なコンディション不良時に見られるのが「PEF最低値」です。喘息のコントールは「自己最良値と最低値の幅」であるPEF変動率で評価しますが、これが「PEFの日(週)内変動」です。20%を超えるとコントロール不良と考え治療強化を検討します。8%以下が正常(健常人レベル)ですので、おおよそ10-20%に収まるように喘息をコントロールすると良いでしょう。PEF変動率が10%を切る、すなわち健常人レベルであれば治療薬の減量を考えてもよいと思われます。

 

5. 呼吸が苦しい時、喘息の調子をピークフローで確認する

呼吸が苦しい時はピークフローを吹きましょう

「呼吸が苦しい」「喉がつまる」「何となく息が吸いにくい」「胸が重たい」このような症状は喘息が悪化した際にも起こりますが、喘息のせいではないこともあります。「呼吸が苦しいのは喘息のせい?」と思ったらピークフローメーターを吹いてみてください。もし喘息の調子が悪い(気管支がせまい)時はPEF値が低下します。PEF値が低下していたら発作治療薬を使用し、長期管理薬の見直しを主治医と相談してましょう。

 

6. ピークフローの測定方法

6-1. ピークフローは1日2回「朝」と「午後」に測定

ピークフロー測定のタイミング

ピークフロー値は時間帯によって異なることが知られており、深夜~早朝に最も低くなり、午後に最も高くなります。そのため喘息の病状を見るにはピークフロー測定を朝(起床時)と午後の1日2回行うと良いでしょう。

 

6-2. 測定の実際

ピークフローメーター測定の実際

ピークフローはいつも同じ姿勢で測定しましょう。目盛りを0にした後、しっかり息を吸って、出来るだけ早く息を吐いてください。この際、最後まで息を吐き切らなくても大丈夫です。測定値を確認しながら3回測定し、最大値を記録しましょう。

 

7. ピークフローメーターQ&A

Q1) PEFの数値があまり変わりません、毎日測定必要ですか?
A1)
・喘息の状態が落ち着いている証拠ですので主治医と減薬について相談してみましょう。
・ピークフローはコンディション不良時にこそ下がります。
・毎日測定しなくても良いですが、コンディション不良時には測定し自己最良値と比較しましょう。

Q2) PEFが下がっていても呼吸が苦しくありませんが、どういう風に解釈すれば良いでしょうか?
A2) 
・3回測定しても同様に低下しているのであれば気管支がせまくなっていると考えられます。
・PEF変動率が20%を超える場合には、治療の見直しを検討する必要があります。
・「気管支のせまさ」と「自覚症状」は一致しないこともあるので、自己判断せずに主治医へ相談しましょう。

Q3) 年齢と体格から求めるPEF予測値と実際のPEF測定値に乖離があります。
A3)
・PEFの平均値は必ずしも一致しないことがあります。
・大切なのは「ご自身の自己最良値」と比較した普段の測定値になります。

Q4) 喘息と診断されていませんが、PEF測定値の変動が大きいです。喘息なのでしょうか?
A4)
・PEFの健常人における正常上限は8%、病的と考えられるのは20%超です。
・もし喘息を疑う症状(咳や痰、呼吸苦、喘鳴)があれば、喘息の可能性があります。
・PEFの測定結果をもって、ぜひ呼吸器内科専門医に相談しましょう。

Q5) 呼吸が苦しくPEF測定値も低下しているときはどうすれば良いですか?
A5)
・喘息が悪化していると考えられます。
・定期薬を既に使用されている場合には、発作治療薬吸入を行いましょう。
・定期薬を現在使用していないのであれば使用し、発作治療薬吸入も行ってください。
・もし手元に薬がない場合には、まず医療機関に受診することが大切です。

Q6) PEFは小児でも出来るのでしょうか?
A6)
・小学生頃より出来るようになります。

Q7) ピークフローメーターの機種による違いはありますか?
A7) 
・どの機種を使用しても、ご自身のPEF変動を見てますので大丈夫です。
・男性で体格が大きい方はPEF測定値が振りきれることがありますので「ミニライト」を使用しましょう。

8. おわりに

ピークフローメーターは、喘息の診断や日々のコントロール状態を「見える化」できる、非常に有用な医療機器です。とくに軽症の喘息や自覚症状がはっきりしない場合でも、数値の変動を通じて気管支の状態を把握することが可能となり、治療の方針を適切に立てる手がかりになります。当院では、患者さんがご自身の呼吸状態を客観的に把握し、日々の変化に気づくことができるよう、ピークフローメーターの活用を積極的に推奨しています。測定方法や記録のつけ方、データの読み取り方なども丁寧にサポートしていますので、「ピークフローを試してみたい」「管理に使いたい」という方はお気軽にご相談ください。呼吸の不調や気になる症状がある方、これまでに喘息と診断されたものの納得がいかない方も、どうぞ一度当院にご相談いただければと思います。呼吸器専門医が、あなたに合った診断と治療を一緒に考えていきます。

 

<参考記事>

・喘息(検査・診断)
・喘息(治療)
・気管支喘息はどんな病気?症状・原因・治療法を専門医が解説!
・気管支喘息(ぜんそく)と咳喘息はどう違う?原因・症状・治療について解説!

 

著者

医療法人社団 ギブネス
葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック院長 横山裕

横山裕

資格
  • 総合内科専門医
  • 呼吸器内科専門医
  • アレルギー専門医

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