咳喘息とは?
咳喘息(Cough Variant Asthma)とは、気管支が過敏になることで咳だけが持続的に出る病気です。通常の気管支喘息と異なり、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)や明らかな呼吸困難がみられず、咳だけが症状として現れるのが特徴です。
特に、風邪をひいたあとに咳が2週間以上続く方や、夜間・早朝に咳がひどくなる方は、咳喘息を疑う必要があります。気づかずに放置していると、本格的な喘息(気管支喘息)へ移行してしまうこともあります。
どんな症状が出るの?
咳喘息の症状は「咳のみ」で、痰や発熱、息苦しさなどは基本的に伴いません。しかしその咳は頑固で、以下のような特徴を持つことが多いです。
- 2週間以上続く乾いた咳(湿った痰がらみではない)
- 夜中や明け方に咳が強くなる
- 会話中・運動中に咳が誘発される
- 咳止めや風邪薬が効かない
- 咳のせいで眠れない・日常生活に支障がある
これらの症状がある場合は、単なる「風邪の後遺症」ではなく、咳喘息という疾患が潜んでいる可能性があります。
咳喘息の原因とは?
咳喘息の原因は、気道(空気の通り道)の「慢性的な炎症」と「過敏性」にあります。ウイルス感染やアレルゲンなどの刺激で気道の内側が敏感になり、咳という反射が引き起こされる状態です。
具体的な誘因として、以下のものが知られています。
- ウイルス感染(風邪)の後:最も多い原因。風邪が治った後に咳だけが続くケース。
- 大気汚染・タバコの煙:受動喫煙も含む。気道の炎症を助長します。
- アレルゲンの吸入:花粉・ハウスダスト・ペットの毛など。
- 強い香りや温度変化:香水、柔軟剤、冷たい空気なども刺激になります。
- ストレス:自律神経が乱れることで気道の反応性が高まります。
これらの要素が複合的に関与し、慢性的な咳が続く状態が咳喘息です。
気管支喘息との違い
咳喘息と気管支喘息は、気道が過敏になっている点では共通していますが、臨床的には以下のような違いがあります。
項目 | 咳喘息 | 気管支喘息 |
---|---|---|
主な症状 | 咳のみ | 咳、喘鳴、息切れ |
咳の時間帯 | 夜間・早朝に強い | 夜間や運動時に増悪 |
呼吸音 | 正常(異常なし) | ゼーゼー、ヒューヒュー |
進行 | 喘息へ移行することがある | 慢性化しやすい |
治療薬 | 主に吸入ステロイド | 吸入薬+気管支拡張薬 |
咳喘息を早期に治療することで、気管支喘息への進行を予防できます。
診断の流れ
咳喘息の診断は、咳の持続期間、性状、他の病気の除外などを踏まえて行います。以下の検査や評価を組み合わせて診断を進めます。
- 問診:咳が出る時間帯、きっかけ、咳以外の症状の有無を確認
- 胸部X線:肺炎や肺がんなどの器質的疾患を除外
- 呼気NO(FeNO)検査:気道炎症(好酸球性炎症)の有無を確認
- 気管支拡張薬の試験投与:吸入薬で咳が改善すれば診断の根拠になります
当院では、これらの検査を総合的に判断し、必要な治療へとつなげていきます。
咳喘息の診断基準や治療ガイドラインについては、日本呼吸器学会の公式ページでも詳しく解説されています。
治療法と生活上の注意点
咳喘息の治療の基本は、「気道の炎症を抑えること」です。風邪と違って自然には治りにくく、適切な治療が必要です。
主な治療法
- 吸入ステロイド薬(ICS):気道の炎症を抑える中心的な薬です。
- 気管支拡張薬:短期間補助的に使用することがあります。
- 抗アレルギー薬:アレルゲンが関与している場合に追加。
生活上の注意点
- 禁煙:本人だけでなく家族の受動喫煙も重要な誘因です。
- 室内環境の整備:ハウスダストやカビを除去しましょう。
- マスクの活用:花粉や冷気から気道を守ることができます。
- 香りの強い製品は避ける:香水・芳香剤など。
治療は1~2か月かけて継続的に行うことが多く、自己判断で中断すると再発する可能性があります。
まとめ
咳喘息は、長引く咳でも特に見逃されやすい病気ですが、適切な治療で十分に改善が期待できます。
風邪が治ったのに咳が続く、夜になると咳が止まらない、といった症状があれば早めに呼吸器内科を受診しましょう。
葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニックでは、咳の原因をしっかりと見極めたうえで、最適な検査と治療を提供しています。咳でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
日本呼吸器学会の咳に関する一般向け解説もご参照ください。
参考文献