はじめに|診察時だけでは分からない喘息コントロール
喘息患者さんが呼吸器内科を受診されると、医師から「調子はどうですか?」と聞かれると思います。患者さんは診察時点ではとても調子が良かったので「調子は良いです。」と答えます。しかし患者さんは実は1か月前に風邪をひいていました。その時は喘息の調子がとても悪かったとしたら本当に喘息はコントロールされていると言えるのでしょうか?このページでは一定期間での喘息コントロールを客観的に評価できる「喘息コントロールテスト(ACT)」について考えてみたいと思います。
1. その喘息治療は本当に適切?
喘息患者さんに行われている治療により喘息が適切にコントロールされているかどうかを評価するにはどうしたら良いでしょうか?医師による主観的な評価だけで診療を行うと喘息コントロールを正しく評価出来なくなる可能性があることが報告されています。「喘息質問票による患者さんの評価」と「医師による主観的な評価」を行い比較したところ、コントロールが良好と判断された患者さんの割合が27.4%も大きく異なっていたことが分かっています(1)。このことから喘息のコントロールを適切に評価するためには「患者質問票」による評価を行うことが重要であると考えられます。
2. ぜんそくコントロールテスト(ACT)とは何か
ぜんそくコントロールテスト(ACT)は5項目の質問の合計点により、過去1か月間における喘息のコントロールを評価する質問票です(2,3)。 5点×5項目の計25点満点で評価を行います。喘息コントロールテストを用いることで、喘息の一定期間における病状を客観的に評価することが可能となります。本邦の喘息ガイドラインでもACTによる評価が推奨されています(4,5)。
3. ACTを実際につけてみましょう
それでは実際にACTをつけてみましょう。各質問についてあてはまるものに1つずつチェックをしましょう。合計点は何点になりましたか?
引用:https://videos.gskstatic.com/pharma/Health/Japan/asthma/support-tools/act-adult/index2012.html
4. ACTの点数をどう評価する?
喘息コントロールテスト(ACT)は何点を目指すべきなのでしょうか?もちろん25点満点であることに越したことはありませんが、最近の各国のガイドラインには治療目標としてClinical remission(臨床的寛解)(6)という概念が記載され、その評価項目にはACTも含まれています。本邦のガイドラインではACTが23点以上を目指すべきであるとされています(4,5)。またACTが20点を切っている場合は喘息は適切にコントロールされていないと考えられ主治医と治療の見直しをするべきと考えられています。
おわりに|自分の状態を知ることから始めましょう
喘息は時間の経過とともに病状が変動する病気です。そのため診察時点だけで患者さんの状態を評価してしまうと、一定期間の喘息の良し悪しを正確に評価することはできません。例えば診察時には症状がなくても、前回から今回の診察の間にコントロール不良の状態があったかもしれません。一定期間での喘息状態を評価することが、重症化を防ぎ快適な日常生活を送るためには欠かせません。「ぜんそくコントロールテスト(ACT)」は、わずか5問・1分程度で、1か月間の喘息状態を“見える化”できるツールです。定期的にACTを実施してスコアの変化に気づくことが、適切な治療や医師との良い連携にもつながります。「最近ちょっと調子が悪いかも?」と思ったときや、「症状は落ち着いているけど、本当に大丈夫かな?」と不安になったとき、ぜひACTを活用してみてください。点数が20点未満であれば、一度医師に相談してみましょう。喘息と上手につきあう第一歩は、「自分の状態を知ること」から始まります。
<引用文献>
(1)Matsunaga K, J Allergy Clin Immunol Pract. 2019;7(8):2634–2641.
(2)ATS:Asthma Control Test
(3)https://www.healthline.com/health/asthma/asthma-control-test
(4)喘息診療実践ガイドライン(喘息学会)
(5)喘息予防・管理ガイドライン(アレルギー学会)
(6)Shackleford A,Lancet Respir Med. 2023;13(1):23–34
<参考記事>