ブログ

感染後咳嗽(感冒後咳嗽)はどんな病気?症状・病態・治療について解説!

local_offer疾患

かぜ(感冒)は主にウイルス感染により気管支に感染を起こすことで咳が出ます。ウイルス感染を起こした場合、体としては外敵を排除し痰を排出させるために咳反射を起こします。つまりかぜによる咳は誰でも起こる防御的な生理反応といえます。ウイルス感染などにより気管支の粘膜が傷つくと、気管支は一時的に過敏な状態となり、気管支の粘膜が修復されるまでの間、おおよそ2~3週間は咳が出やすくなります。かぜ(感冒)をひいた後、2~3週間程度は咳が続くことがあり、これを「感染後(感冒後)咳嗽」といいます。

感染後咳嗽の仕組み

 

 

1. 感染後咳嗽(感冒後咳嗽)を引き起こす原因

感染後咳嗽を引き起こす原因の多く(80~90%程度)は「かぜ症候群(ウイルス感染)」であり「ライノウイルス」「コロナウイルス」「RS(respiratory syncytial)ウイルス」「インフルエンザウイルス」「パラインフルエンザウイルス」「アデノウイルス」「ヒトメタニューモウイルス」「エンテロウイルス」などがあります。残る10~20%は「マイコプラズマ」「百日咳菌」「肺炎クラミジア」「肺炎球菌」「A群溶血性レンサ球菌」「インフルエンザ桿菌」「黄色ブドウ球菌」などの細菌が原因となっています(1)

(1)日内会誌109:2109~2115,2020

 

2. 感染後咳嗽(感冒後咳嗽)の特徴(2-5)

・感冒(上気道)症状に引き続き3~8週続く遷延性咳嗽を引き起こす原因の1つです。
・通常、8週間以上続くことはありません。
・上気道感染患者を対象とした研究では11~25%の頻度でした。
・感染による気道上皮の破壊と引き続き起こる気道炎症により生じると考えられています。
・A型インフルエンザ感染後の気道生検では、気管支壁の基底膜まで広範囲に剥離していました。

・ウイルス感染後咳嗽では「気道過敏」「気道分泌過多」「繊毛クリアランス障害」が原因とされます。
・上気道感染後にカプサイシン咳感受性が一時的に亢進し4週間後に正常に戻っていたとする報告があります。
・マイコプラズマによる感冒後咳嗽ではカプサイシン咳感受性亢進は認めなかったとも報告されています。
・ウイルス感染後咳嗽による「胃酸逆流」「後鼻漏」も病状を修飾するため複数の病因を検討すべきです。
・明確な治療方法の規定はなく抗生剤は無効でイプラトロピウム吸入で咳が軽減する可能性があります。

(2) Sidney S. Diagnosis and Management of Cough: ACCP Guidelines
(3) Poe RH et al.  Am Rev Respir Dis 1982; 126:160–162
(4) Irwin RS et al. N Engl J Med 2000; 343:1715–1721
(5) Robertson PW et al. J Aust 1987; 146:522–525

 

3. 感染後咳嗽(感冒後咳嗽)の診断基準

感染後咳嗽の診断基準を下記に引用します(1)。「感冒症状に引き続き起こること」「胸部X線で異常がないこと」「他の咳の原因が除外されること」を満たすことが診断条件となっています。

感冒後咳嗽診断基準

4. 長引く咳の原因となる疾患の除外

感染後咳嗽の診断で求められるのは長引く咳の原因となる他疾患の除外です。以下に長引く咳の原因となる疾患をまとめます。

・咳喘息
・喘息
・アトピー咳嗽
・上気道咳症候群(後鼻漏による咳嗽)
・逆流性食道炎による咳

 

5. 感染後咳嗽(感冒後咳嗽)の治療

感染後咳嗽に有効と考えられている治療薬を下記に引用します。「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」「麦門冬湯」「中枢性鎮咳薬」などが挙げられます。保険適応外ではありますが「吸入抗コリン薬(イプラトロピウム)」「吸入ステロイド」が有効とされる場合もあります。基本的に他疾患が除外されたことが前提となる疾患概念ですので、治療対象となる疾患が他にある場合はそちらの治療が優先となります。

感染後咳嗽の治療薬

6. おわりに

かぜをひいたあとに咳が長く続くと、「何か他の病気ではないか」「このまま治らなかったらどうしよう」と不安に思われる方も多いかもしれません。しかし、感染後咳嗽(感冒後咳嗽)は多くの方にみられる一般的な反応であり、ウイルスによって傷ついた気道の粘膜が修復される過程で一時的に咳が続く状態です。多くの場合は自然に改善していきますが、数週間以上にわたって咳が続く場合や、夜間に悪化する、喘鳴や息苦しさがあるなどの症状を伴う場合は、咳喘息や他の疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。咳が長引くことで生活の質が下がったり、睡眠や仕事に支障をきたすこともあります。「長引く咳=様子を見る」ではなく、「長引く咳=相談する」という選択をぜひ意識してみてください。当院では、呼吸器内科専門医による丁寧な問診・検査を通じて、原因の特定と適切な治療を行っています。咳でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<参考記事>

・咳喘息
・喘息
・アトピー咳嗽
・上気道咳症候群(後鼻漏による咳嗽)
・逆流性食道炎による咳
・長引く咳(慢性咳嗽・遷延性咳嗽)
・長引く咳の専門外来での「咳の診かたと考え方」

 

著者

医療法人社団 ギブネス
葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック院長 横山裕

横山裕

資格
  • 総合内科専門医
  • 呼吸器内科専門医
  • アレルギー専門医

ご予約はこちらContact

ご予約はこちらご予約はこちら

お電話

お問い合わせ
専用ダイヤル
03-3877-1159

24時間
WEB予約

検査・診察のご予約は
こちらから24時間
お取りいただけます。

24時間
WEB問診

事前問診にご協力
いただくことで院内での
待ち時間削減やスムーズな診療につながります。

  • AIチャットに質問 AIチャットに質問
  • 初診・再診 WEB予約初診・再診 WEB予約
  • お問い合わせ専用ダイヤル 03-3877-1159
  • WEB問診WEB問診
  • 求人募集求人募集
TOPへ